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木下このみ③
15:直感
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1月7日土曜日午前8時
「では、行ってきます。」
「いってらっしゃいませ。」
どこまで感づいているのか、玄の小さなガッツポーズに見送られ、このみは書店の方へ歩き出した。
昨夜は結局、あの後すぐに眠ってしまい、まだ朝の5時だというのに8時間しっかり熟睡してしまった。
そして、くよくよしてても仕方がないと思い、
「お弁当を作ってあげられる会話に持って行けるよう、頑張ってみます!」
と、送り出してくれた麗香に宣言をして出てきたのである。
確かに、メガマートの駐車場内も店舗の玄関周りもすっかり雪は無くなっている。
だが、裏手の倉庫を見た瞬間、
(あぁ、こんなに雪があるなら何とかしなくちゃいけないわね)
と納得してしまった。
ガレージ前は除雪されているが屋根の上にはまだ8割以上、雪が残っている感じだ。
軽く見ても30cm以上も・・・・・
いつものように従業員出入り口から入ると、早速パートのおばさま方の話し声が聞こえてくる。
「ニュースで見たけど、都心の方もかなり積もってて電車もあちこち止まっているみたいね。」
「ほんと、23年振りだかぐらいの大雪だったらしいわね。」
「こんなのでお客さん来れるのかしらね?」
「本当ね。」
そんな会話の聞こえるロッカー室にこのみも入って行った。
「おはようございます!」
「あら。おはようこのみちゃん。今年もよろしくね。」
「あ、菅原さん。今年もよろしくお願いします。」
「私とはもう会ってるけどね。おはよう。」
「おはようございます。幸恵さん、こんな早くから大丈夫なんですか?」
「えぇ、昨日からうちの旦那が会社休みになったから子供の面倒は頼んできたのよ。・・・・・・こんな時ぐらいしかいないからね。」
幸恵さんの旦那さんは車のディーラーで働いているそうなので普段なら平日しか休みがないのだが、さすがにこの積雪で休みを取ったようだ。
このみが着替えていると、
「朝早くから駆り出されたから雪掻きかと思って着替えとか持ってきたんだけど、どうやらその辺は昨日で大分終わってるようね。」
「そうなのよね。・・・・・メガマートの人手がいっぱいあったのかしらねぇ。」
おばさま方がそう話していると奥の男性用ロッカーの方から、
「昨日は矢崎さんだけ来てたらしいですよ。」
と、横山の声がした。
着替えと言っても、基本は上着を脱いでエプロンをするぐらいなので、男女きちんと分けたロッカー室ではないため会話もダダ漏れのようだ。
「そうなの、良かったわ~。」
「若い男の子が頑張ってくれて・・・・・私ら腰痛くしないですんだわね。」
「あっ、でも横山君は呼ばれなかったの?」
幸恵さんが大きな声で質問した。
「僕は、陽子さんから連絡もらったのは夕方でしたから・・・・・」
「そう。良かったわね~。」
(あなたも一緒に出勤しとけば良かったのよ!!)
このみの心の中の悪魔が呟いた。
(はっ!いけない・・・・・こんなんじゃ・・・・・)
このみは数回首を横に振ると、みんなと同じように店内へと向かった。
「おはようございます。」
前を歩いていたおばさま方がそう言いながら店内へ入ると、レジの所で楽しそうに会話していた陽子と矢崎が同時に、
「おはようございます。」
と言い、それを聞いてさらにおばさま方が、
「あら、気が合うのね~。」
と軽くちゃかしたように言った。
二人が軽く照れている様子を見ながら、このみは矢崎の隣に立った。
「おはようございます。」
そう言った後は、もうよく覚えていなかった。
何か、昨日感じていた胸の痛みではなく、消化不良の胃痛のようなモヤモヤした気持ちがいつまでも消えなかった。
お弁当の話をすることなどすっかり忘れたまま、午前中のバイト時間は終わってしまった・・・
「では、行ってきます。」
「いってらっしゃいませ。」
どこまで感づいているのか、玄の小さなガッツポーズに見送られ、このみは書店の方へ歩き出した。
昨夜は結局、あの後すぐに眠ってしまい、まだ朝の5時だというのに8時間しっかり熟睡してしまった。
そして、くよくよしてても仕方がないと思い、
「お弁当を作ってあげられる会話に持って行けるよう、頑張ってみます!」
と、送り出してくれた麗香に宣言をして出てきたのである。
確かに、メガマートの駐車場内も店舗の玄関周りもすっかり雪は無くなっている。
だが、裏手の倉庫を見た瞬間、
(あぁ、こんなに雪があるなら何とかしなくちゃいけないわね)
と納得してしまった。
ガレージ前は除雪されているが屋根の上にはまだ8割以上、雪が残っている感じだ。
軽く見ても30cm以上も・・・・・
いつものように従業員出入り口から入ると、早速パートのおばさま方の話し声が聞こえてくる。
「ニュースで見たけど、都心の方もかなり積もってて電車もあちこち止まっているみたいね。」
「ほんと、23年振りだかぐらいの大雪だったらしいわね。」
「こんなのでお客さん来れるのかしらね?」
「本当ね。」
そんな会話の聞こえるロッカー室にこのみも入って行った。
「おはようございます!」
「あら。おはようこのみちゃん。今年もよろしくね。」
「あ、菅原さん。今年もよろしくお願いします。」
「私とはもう会ってるけどね。おはよう。」
「おはようございます。幸恵さん、こんな早くから大丈夫なんですか?」
「えぇ、昨日からうちの旦那が会社休みになったから子供の面倒は頼んできたのよ。・・・・・・こんな時ぐらいしかいないからね。」
幸恵さんの旦那さんは車のディーラーで働いているそうなので普段なら平日しか休みがないのだが、さすがにこの積雪で休みを取ったようだ。
このみが着替えていると、
「朝早くから駆り出されたから雪掻きかと思って着替えとか持ってきたんだけど、どうやらその辺は昨日で大分終わってるようね。」
「そうなのよね。・・・・・メガマートの人手がいっぱいあったのかしらねぇ。」
おばさま方がそう話していると奥の男性用ロッカーの方から、
「昨日は矢崎さんだけ来てたらしいですよ。」
と、横山の声がした。
着替えと言っても、基本は上着を脱いでエプロンをするぐらいなので、男女きちんと分けたロッカー室ではないため会話もダダ漏れのようだ。
「そうなの、良かったわ~。」
「若い男の子が頑張ってくれて・・・・・私ら腰痛くしないですんだわね。」
「あっ、でも横山君は呼ばれなかったの?」
幸恵さんが大きな声で質問した。
「僕は、陽子さんから連絡もらったのは夕方でしたから・・・・・」
「そう。良かったわね~。」
(あなたも一緒に出勤しとけば良かったのよ!!)
このみの心の中の悪魔が呟いた。
(はっ!いけない・・・・・こんなんじゃ・・・・・)
このみは数回首を横に振ると、みんなと同じように店内へと向かった。
「おはようございます。」
前を歩いていたおばさま方がそう言いながら店内へ入ると、レジの所で楽しそうに会話していた陽子と矢崎が同時に、
「おはようございます。」
と言い、それを聞いてさらにおばさま方が、
「あら、気が合うのね~。」
と軽くちゃかしたように言った。
二人が軽く照れている様子を見ながら、このみは矢崎の隣に立った。
「おはようございます。」
そう言った後は、もうよく覚えていなかった。
何か、昨日感じていた胸の痛みではなく、消化不良の胃痛のようなモヤモヤした気持ちがいつまでも消えなかった。
お弁当の話をすることなどすっかり忘れたまま、午前中のバイト時間は終わってしまった・・・
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