雨の向こう

naomikoryo

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3.祠

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鳥居は、地面から貫までが五mほどで両柱の間隔は七mほどの大きさだ。
鳥居を背にすると丁度木々が開けている所から海が見える為、
「確かに晴れていれば部屋からでも見えるな。」
と感心した。
よく見るとやはり雨のせいで所々腐食はあるようだ。
だが、柱も笠木・島木も綺麗な朱に染められている。
まるで、つい数日前に塗り直されたかのようだ。

しばらく鳥居の周りをうろうろと何かを探すように歩き回ってみたが、これと言ったものは見つからなかった。
(これは神社跡に残ったものなんかなぁ)
もう戻ろうと自転車まで戻ると、坂の下から役場長さんがスーパーのかごを片手に持って登って来た。
(・・・隠れなくちゃ)
という気持ちが急に芽生え、横の茂みにそっと身を寄せた。
別にやましい気持ちがあったわけではないが、何か秘密ごとのように思えたのだ。
役場長はゆっくりとハァハァ言いながら登ってくる。
そして悠太が寝転がせた自転車の横まで来てようやく自転車の存在に気付くほどずっと下だけを向いて歩いていた。
「あれ~、何でこんなとこに自転車が・・・」
と自転車に気付いた役場長さんが不思議そうに首を傾げた。
足元にかごを置いて首に巻いた手拭いでU字ハゲの額をせっせと拭いながら、
「はよー行かな、腹減らされとるやろーな。」
と言った。
悠太の耳にもはっきり聞こえるほど大きな声だ。
そうして役場長は、よっこいせ、と再びスーパーのかごを持った。
かごの中身はよく見えなかったが、大きな水筒と風呂敷包みの何かが二つほど入ってる感じだった。
又、下を向いたままゆっくりと歩き始めた姿を見て、悠太は役場長の後をついて行こうと思った。

役場長は鳥居に向かって歩き、その五mほど手前で右側の細い獣道のような所へ入った。
悠太も役場長の姿が見えないくらいまでしてから入り込むと、そこは周りの木々によって薄暗い道になっていた。
それから五分程歩くと大きな岩が現れ、役場長はその右奥の空間へと入っていった。
悠太はその岩を観察した。
岩には赤い縄のようなものが幾重にも巻かれていた。
そこから白い紙垂が均等に並んでぶら下がっていた。
悠太は役場長が入って行くのを見届けて少し待ってから、その入り口付近へとこっそり忍び寄った。

空間に向かって耳を澄ますと役場長と誰か女性の声が反響して聞こえた。
役場長の声は大きいので聞き取りやすいが、女性の方は小さくゆっくりなので聞こえずらかった。
それでも悠太はそこにしゃがみ込み、集中して聞き取ろうとした。


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