再び君に出会うために

再最終章

気の緩み

「待ってくれ～！」
一同が驚いて声のする方に振り返ると、校長先生である矢沢聡が必死の形相でこちらに走ってきた。
小南の横に来ると、両手を膝の上に乗せ前屈みで息を
「静香先生を助けてくれ！
 彼女は何も悪いことはしていないんだ！」
太一と貴子は一瞬、彼の声に戸惑い、小南のことを見つめた。
静香先生として知られていた小南は、交通事故で亡くなっていたはずの人物だったのだ。
そして、矢沢校長の片思いの相手だった彼女が、宇宙生命体の力で蘇ったことを聞かされ、太一たちは驚きの表情を隠せなかった。

「去年…
彼女は交通事故で亡くなった。
私がどれだけ彼女を愛していたか、どれだけ無力だったか、思い知ったんだ…。
だが、ある日宇宙生命体に出会い、願いを叶えてもらった。
もう一度彼女に会えるなら、何でもするってね…」
校長先生はそう言って肩を落とし、涙を浮かべた。
「私はただ、静香先生をもう一度生かして、幸せにしてあげたかった。
彼女も病気や事故のない平和な地球にしてあげるって約束してくれたんだ…
それが、こんな大それたことを計画しているとは思わなかったんだよ…」
貴子は少し呆れたように校長先生を見つめた。
「だからって…。」
太一も黙って、静かに小南を見つめた。
小南はすっかり争う気力を無くし、静かに立っていた。
太一たちも、もうこれ以上の争いは無意味だと感じていた。
彼は小南たちを見逃そうと決意し、貴子と共に静かにその場を後にしようとした。

その瞬間、まだ生き残っていた黒服の一人が、銃を取り出し、怒りに満ちた目で貴子に向かって引き金を引いた。
銃声が響き渡り、弾丸はまっすぐ貴子に向かって飛んできた。
「貴子！」
太一は咄嗟に彼女の前に飛び出し、身体を盾にして弾丸を受けた。
彼の胸に銃弾が命中し、衝撃が彼を後ろへと押し倒した。
「太一！」
貴子が叫び、倒れた彼の元に駆け寄った。
彼の体は力なく地面に横たわり、苦しそうに息をしていたが、黄金の光が彼の体からゆっくりと放たれていた。

「どうして…
どうして庇ったの…？」
貴子は涙を浮かべながら、太一の顔を見つめた。
太一はかすかに微笑みながら、弱々しい声で言った。
「お前を…守りたかったんだ。
それに…まだ…」
太一の意識が途絶えた感じだった。
だがその瞬間、彼の体を包む黄金の光がますます強く輝いた。
太一の心臓付近からゆっくりと銃弾が押し出され、その傷口が自然に塞がっていく様子は、皆を驚愕させた。
しかし、黄金色の光は徐々に消え、太一の体は再び静寂に包まれた。
貴子は太一のそばに膝をつき、震える手で彼の顔をそっと撫でた。
「太一…
お願い、目を開けて…」
涙が彼女の頬を伝い、彼女の声は震えていた。
何度も呼びかけるが、太一は応えない。
彼の顔には微かな安らぎの表情が残っているものの、そのまま眠っているかのようだった。
その間に、優也と麻友が静かに現場に到着していた。
優也は状況を見てすぐに事態の深刻さを理解し、麻友も無言で立ち尽くしていた。
二人とも、今何ができるのか分からず、ただ太一と貴子のそばで立ち尽くしていた。

一方、小南静香は、諦めたようにその場に崩れ落ちる。
長い戦いと野望が崩れ去り、彼女の瞳には虚しさが広がっていた。
校長先生である矢沢は、小南の隣に寄り添い、彼女をそっと支えながら太一の無言の姿を見つめていた。
「静香くん…
すまない…
こんなことになるなんて…」
小南は苦笑しながら、校長先生の肩にもたれた。
「私は…
ただ彼らを守りたかった。
でも、結局何も守れなかったのね…」

その一方で、貴子は懸命に太一に話しかけ続けた。
「太一、お願い…
目を開けて、ね？…」
しかし、太一の体は微動だにしない。
優也が一歩前に出て、貴子の肩に手を置いた。
「貴子さん、きっと太一先生は…
まだ戻ってこれるよ。
彼は、何度も奇跡を起こしてきたんだ。
今度もきっと。」
その時、麻友が突然何かを感じ取ったかのように、小さく声を上げた。
「見て、太一先生の手が…」
皆が太一の手に目を向けると、微かに指が動いたように見えた。
貴子は息を呑み、再び太一の顔を見つめた。
「太一…！」
しかし、動きはそれ以上続かず、太一は再び静かに眠っているようだった。
それでも、その一瞬の動きは、彼がまだ完全に失われていない証拠だった。