48 / 69
再最終章
見えざる者
しおりを挟む
(オレはトモ・・・)
(入学した後、バスケ部に入部する優也に付いていった体育館で神宮司麻友を見つけ・・・)
「ひゃあ!」
智は飛んでいるこんにゃくが頬に触った瞬間に首をすくめた。
(ひ、ひ、一目惚れをしてしまった・・・)
(本当はサッカー部に入るつもりだったのに、それでバスケ部に入ってしまったが・・・)
「お~~~っと!」
何か石碑の上に乗っている首の目が開いてこちらを見たのに気付き、すぐに目を逸らしながら叫んだ。
(そ、それで背も伸びて、今やキャプテンで、割とモテてる・・・はずだ・・・)
(そろそろ神宮司も優也にかこつけてオレに近寄らなくてもいいのに・・・)
「どわ~!」
薄暗い井戸のそばに立っている人がこちらに向かってくる。
(ま、まぁ、プライドが高そうだから、こちらから告ってやらないとダメなのかな・・・)
ズダン!
(こ、腰が抜けた)
「ちょっと~!どこにいるのよ?」
春美が暗闇の中、手探りをするようにして智を探している。
「な、何かに滑って転んだんだよ。」
智はそう言って、目の前に差し出された白い手を掴んだ。
「こりゃどうも。」
智はゆっくり立ち上がってその手の主を見て、
「ぎゃ~~~!」
と叫んで走り出してしまった。
「ちょ、ちょっと~。」
そう叫ぶ春美の肩をポンと陽子が叩いて、
「だから、あれと二人きりは無理だって言ったのよ。」
と言った。
ドタン、バタン、ギャー
という慌ただしい音と声が遠ざかっていくのが聞こえていた。
白い手の主が、
「ああいうお客さんが、最高だわ。」
と楽しそうに笑っていた。
「うるさくして済みません。」
と春美、正樹、陽子はお辞儀をしたが、
「いいの、いいの。」
とお菊さん風のその人は井戸の方へ戻っていった。
その数分前、優也と手を繋いだ麻友が歩いていた。
麻友はやはりどこか納得のいかない気持ちでいた。
だが、積極的な優也の行動にトキメキまくっている自分に気付いていた。
そうなると、普段からこういう態度ならあっという間に付き合っていてもおかしくない、という疑問が浮かんでしまう。
「怖くない?」
「・・・少し怖いわ。」
「じゃあ、手を繋いでいよう。」
そう言って入り口からそのまま歩いていたが、何かに怯えるような様子は麻友には全く無かった。
なにせ見えざる者は全く恐怖の対象ではないのだから、というのが麻友の信条だ。
ましてや、ここは作り物の世界。
そうして途中ぐらいまで優也の話に適当に相槌を打っていたが、
「私が怖いのは、見えないものではなくて、見えているイレギュラーよ。」
ふと麻友が言った。
優也は立ち止まり、
「・・・それって・・・どういう意味?」
「そうね・・・」
麻友は少し考えて、
「私に見えているあなたが、本当のあなたじゃないことかしら。」
薄暗い井戸の近くにいた二人に、井戸の中からおどろおどろしい効果音と共にお菊さん風に化粧をした女性が現れた。
「いちま~い・・・・・にま~い・・・・・」
そう言いながら少し近づくお菊さんに、
「ごめんなさい、少し静かにしてくださる。」
と麻友は振り向きもせずに言った。
「さん・・・・えっ?」
「すみません、とりあえず大丈夫です。」
優也も手振りで井戸の方へお帰りくださいと合図した。
「いや・・・でも・・・」
お菊さんがそう言いかけたが、
「私を騙せると思って!」
麻友が少し大きな声で言った。
効果音がうるさいのだろう。
「な、何をいってるんだか!」
優也も少し大きな声になった。
「何年、あなたを見ていると思ってるのよ!」
「いつもの俺だよ・・・何が違うのさ。」
「全部よ!」
「はいはい・・・」
と小さな声でお菊さんは井戸の方へ戻っていき、効果音の流れているスピーカーを止めた。
(入学した後、バスケ部に入部する優也に付いていった体育館で神宮司麻友を見つけ・・・)
「ひゃあ!」
智は飛んでいるこんにゃくが頬に触った瞬間に首をすくめた。
(ひ、ひ、一目惚れをしてしまった・・・)
(本当はサッカー部に入るつもりだったのに、それでバスケ部に入ってしまったが・・・)
「お~~~っと!」
何か石碑の上に乗っている首の目が開いてこちらを見たのに気付き、すぐに目を逸らしながら叫んだ。
(そ、それで背も伸びて、今やキャプテンで、割とモテてる・・・はずだ・・・)
(そろそろ神宮司も優也にかこつけてオレに近寄らなくてもいいのに・・・)
「どわ~!」
薄暗い井戸のそばに立っている人がこちらに向かってくる。
(ま、まぁ、プライドが高そうだから、こちらから告ってやらないとダメなのかな・・・)
ズダン!
(こ、腰が抜けた)
「ちょっと~!どこにいるのよ?」
春美が暗闇の中、手探りをするようにして智を探している。
「な、何かに滑って転んだんだよ。」
智はそう言って、目の前に差し出された白い手を掴んだ。
「こりゃどうも。」
智はゆっくり立ち上がってその手の主を見て、
「ぎゃ~~~!」
と叫んで走り出してしまった。
「ちょ、ちょっと~。」
そう叫ぶ春美の肩をポンと陽子が叩いて、
「だから、あれと二人きりは無理だって言ったのよ。」
と言った。
ドタン、バタン、ギャー
という慌ただしい音と声が遠ざかっていくのが聞こえていた。
白い手の主が、
「ああいうお客さんが、最高だわ。」
と楽しそうに笑っていた。
「うるさくして済みません。」
と春美、正樹、陽子はお辞儀をしたが、
「いいの、いいの。」
とお菊さん風のその人は井戸の方へ戻っていった。
その数分前、優也と手を繋いだ麻友が歩いていた。
麻友はやはりどこか納得のいかない気持ちでいた。
だが、積極的な優也の行動にトキメキまくっている自分に気付いていた。
そうなると、普段からこういう態度ならあっという間に付き合っていてもおかしくない、という疑問が浮かんでしまう。
「怖くない?」
「・・・少し怖いわ。」
「じゃあ、手を繋いでいよう。」
そう言って入り口からそのまま歩いていたが、何かに怯えるような様子は麻友には全く無かった。
なにせ見えざる者は全く恐怖の対象ではないのだから、というのが麻友の信条だ。
ましてや、ここは作り物の世界。
そうして途中ぐらいまで優也の話に適当に相槌を打っていたが、
「私が怖いのは、見えないものではなくて、見えているイレギュラーよ。」
ふと麻友が言った。
優也は立ち止まり、
「・・・それって・・・どういう意味?」
「そうね・・・」
麻友は少し考えて、
「私に見えているあなたが、本当のあなたじゃないことかしら。」
薄暗い井戸の近くにいた二人に、井戸の中からおどろおどろしい効果音と共にお菊さん風に化粧をした女性が現れた。
「いちま~い・・・・・にま~い・・・・・」
そう言いながら少し近づくお菊さんに、
「ごめんなさい、少し静かにしてくださる。」
と麻友は振り向きもせずに言った。
「さん・・・・えっ?」
「すみません、とりあえず大丈夫です。」
優也も手振りで井戸の方へお帰りくださいと合図した。
「いや・・・でも・・・」
お菊さんがそう言いかけたが、
「私を騙せると思って!」
麻友が少し大きな声で言った。
効果音がうるさいのだろう。
「な、何をいってるんだか!」
優也も少し大きな声になった。
「何年、あなたを見ていると思ってるのよ!」
「いつもの俺だよ・・・何が違うのさ。」
「全部よ!」
「はいはい・・・」
と小さな声でお菊さんは井戸の方へ戻っていき、効果音の流れているスピーカーを止めた。
4
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
「メジャー・インフラトン」序章1/ 7(太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!)
あおっち
SF
脈々と続く宇宙の無数の文明。その中でより高度に発展した高高度文明があった。その文明の流通、移動を支え光速を超えて遥か彼方の銀河や銀河内を瞬時に移動できるジャンプ技術。それを可能にしたジャンプ血清。
その血清は生体(人間)へのダメージをコントロールする血清、ワクチンなのだ。そのジャンプ血清をめぐり遥か大昔、大銀河戦争が起こり多くの高高度文明が滅びた。
その生き残りの文明が新たに見つけた地、ネイジェア星域。私達、天の川銀河の反対の宙域だった。そこで再び高高度文明が栄えたが、再びジャンプ血清供給に陰りが。天の川銀河レベルで再び紛争が勃発しかけていた。
そして紛争の火種は地球へ。
その地球では強大な軍事組織、中華帝国連邦、通称「AXIS」とそれに対抗する為、日本を中心とした加盟国軍組織「シーラス」が対峙していたのだ。
近未来の地球と太古から続くネイジェア星域皇国との交流、天然ジャンプ血清保持者の椎葉清らが居る日本と、高高度文明異星人(シーラス皇国)の末裔、マズル家のポーランド家族を描いたSF大河小説「メジャー・インフラトン」の前章譚、7部作。
第1部「太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!」。
ジャンプ血清は保持者の傷ついた体を異例のスピードで回復させた。また血清のオリジナル保持者(ゼロ・スターター)は、独自の能力を飛躍的に引き上げる事が出来たのだ。
第2次大戦時、無敵兵士と言われた舩坂弘氏をモデルに御舩大(ミフネヒロシ)の無敵ふりと、近代世界のジャンプ血清保持者、椎葉きよし(通称:お子ちゃまきよし)の現在と過去。
ジャンプ血清の力、そして人類の未来をかけた壮大な戦いが、いま、始まる――。
彼らに関連する人々の生き様を、笑いと涙で送る物語。疲れたあなたに贈る微妙なSF物語です。
本格的な戦闘シーンもあり、面白い場面も増えます。
是非、ご覧あれ。
※加筆や修正が予告なしにあります。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》
小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です
◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ
◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます!
◆クレジット表記は任意です
※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください
【ご利用にあたっての注意事項】
⭕️OK
・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用
※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可
✖️禁止事項
・二次配布
・自作発言
・大幅なセリフ改変
・こちらの台本を使用したボイスデータの販売
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる