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最終章
天使の声①
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最初は高2の夏だった。
夏休み中の林間施設でのバスケの合宿最終日。
全てのカリキュラムが終わった後、お約束でキャンプファイヤーをして騒いだ後、恒例の[告白大会]なるものが始まった。
同じバスケ部内で好きな人がいる場合はこの場を借りて告白し、もしカップルになったらみんなで祝福し今後も応援していく、というシステムだ。
勿論、好きな人がバスケ部内じゃなかったり、もう付き合ってる人がいる場合はパスとなる。
ただし、不正がないように相手が誰なのかはキャプテンに報告しなければならない。
だが、もしも好きな人がいない場合は、とりあえず付き合ってみる、ということを強制させられるのだ。
太一が高1の時は男子部員から始まったが、この年は女子部員からとなっていた。
1年ごとに先行・後攻が変わるのだ。
太一は1年の時は、
「好きな人はいない。」
と宣言してパスしていた。
(今年も同じようにパスしよう・・・)
そう思っていたのだが。
女子の1年、2年が誰も出て来ず男子部員もある意味での緊張が解け始めた頃、3年生の一人が前に出てきた。
「太一!」
彼女は最初からずっと太一を見つめていて、どうどうと指を差しながら大声で言った。
3年の琴原明美副キャプテンである。
「・・・え、えぇ~!」
そこにいた全員がびっくりした。
その声はまさに悲鳴のように聞こえた。
琴原明美は、身長178cmで足もスラ~と長くスタイル抜群で、校内でも男女隔たりも無く好かれている子だ。
成績も優秀で面倒見もよく、確かにここ最近やたらに太一を指導していた節もある。
自分の名前なんか出るはずも無いと思っていた太一は、揺ら揺らと光る炎の先をボーと眺めていた。
「なんで~?」
そんな琴原ファンの1年女子の声がする中、
「きっと太一って、このままどんどん格好良くなるわね。・・・・・私には既にそう見えるけど。」
そんなノロケを言ってのけた。
「ほら、返事しろ!」
あまりのショックにさっきまで固まっていた横井キャプテンに肘を当てられ太一も我に返った。
「え?」
「おいおい、聞いてなかったのか?」
呆れた顔で横井キャプテンが溜息をついたが、まるでそれを気にしないかのように琴原が太一に近寄った。
この時の太一はまだ子供臭さの抜けないワルガキのような顔つきで、身長も琴原より4cmぐらい小さかった。
琴原は太一のまん前に立ち、ちょっと腰を屈ませながら顔を近づけた。
何が起きてるのか分からない太一はスローモーションでその動きを見ていた。
琴原の目と自分の目の位置がどんどん近付く。
あまりの接近に、
「は?」
と言った太一に、
「逃げないで。」
と琴原は囁いた。
(う、動けない。へ、蛇ににらまれたカエルのようだ。・・・・・・知らないけど・・・)
そう思っていた時に、
(★お前には好きな人がいるだろう)
頭の中で声が聞こえた。
「何?」
それで太一の緊張が解けた。
太一は慌てて後ろに飛びのくと、他に誰もいない自分の周りをキョロキョロと見回した。
「あ~あ・・・・・・逃げられちゃったかな。」
琴原は残念そうに太一を見ている。
横井キャプテンが来て太一の肩を組むとくるりと琴原に背を向けるようにしてこっそり言った。
「そうすんだ、太一?」
太一はそれどころではなったが、
(あぁ、俺が告白されたのか・・・・・)
とようやく理解して改めて考えた。
いや、考えようとしたのだが、
(★好きでもない女をモノにしようとするなよ)
また声が聞こえた。
「え?」
「え?じゃないよ、どうすんだ。・・・・・って聞くまでも無いか。」
横井キャプテンは太一の肩を3回バンバンと叩いた。
「まったく、うらやましい限りだな。」
そう言いながら振り返ろうとする横井に、
「他に好きな人がいるんです。」
と太一は言った。
横井は慌てて、
「ば、ばか!・・・そんなのいたっていいから、とりあえず付き合っちゃえよ。」
小声で太一に言った。
「・・・・・済みません、そういう訳には・・・・・」
「はぁ?」
太一は振り返って琴原に深々とお辞儀をして、
「ありがとうございます。・・・でも、他に好きな人がいるので・・・ごめんなさい。」
と言った。
「・・・そう、わかったわ。・・・・・・ちゃんと言ってくれてありがとう。」
そう言って、琴原は女子部の輪の中に戻って行った。
「えぇ~!」
「なんでぇ~!」
振ったら振ったで、また周りは大騒ぎとなった。
「ほらほら、太一はきちんと返事をしたんだからいいじゃないか。」
横井がそう言って、
「はい、次は誰だ?」
と場を戻した。
そんな騒ぎでうやむやとなって誰も太一の好きな人を確認することに気付かなかった。
夏休み中の林間施設でのバスケの合宿最終日。
全てのカリキュラムが終わった後、お約束でキャンプファイヤーをして騒いだ後、恒例の[告白大会]なるものが始まった。
同じバスケ部内で好きな人がいる場合はこの場を借りて告白し、もしカップルになったらみんなで祝福し今後も応援していく、というシステムだ。
勿論、好きな人がバスケ部内じゃなかったり、もう付き合ってる人がいる場合はパスとなる。
ただし、不正がないように相手が誰なのかはキャプテンに報告しなければならない。
だが、もしも好きな人がいない場合は、とりあえず付き合ってみる、ということを強制させられるのだ。
太一が高1の時は男子部員から始まったが、この年は女子部員からとなっていた。
1年ごとに先行・後攻が変わるのだ。
太一は1年の時は、
「好きな人はいない。」
と宣言してパスしていた。
(今年も同じようにパスしよう・・・)
そう思っていたのだが。
女子の1年、2年が誰も出て来ず男子部員もある意味での緊張が解け始めた頃、3年生の一人が前に出てきた。
「太一!」
彼女は最初からずっと太一を見つめていて、どうどうと指を差しながら大声で言った。
3年の琴原明美副キャプテンである。
「・・・え、えぇ~!」
そこにいた全員がびっくりした。
その声はまさに悲鳴のように聞こえた。
琴原明美は、身長178cmで足もスラ~と長くスタイル抜群で、校内でも男女隔たりも無く好かれている子だ。
成績も優秀で面倒見もよく、確かにここ最近やたらに太一を指導していた節もある。
自分の名前なんか出るはずも無いと思っていた太一は、揺ら揺らと光る炎の先をボーと眺めていた。
「なんで~?」
そんな琴原ファンの1年女子の声がする中、
「きっと太一って、このままどんどん格好良くなるわね。・・・・・私には既にそう見えるけど。」
そんなノロケを言ってのけた。
「ほら、返事しろ!」
あまりのショックにさっきまで固まっていた横井キャプテンに肘を当てられ太一も我に返った。
「え?」
「おいおい、聞いてなかったのか?」
呆れた顔で横井キャプテンが溜息をついたが、まるでそれを気にしないかのように琴原が太一に近寄った。
この時の太一はまだ子供臭さの抜けないワルガキのような顔つきで、身長も琴原より4cmぐらい小さかった。
琴原は太一のまん前に立ち、ちょっと腰を屈ませながら顔を近づけた。
何が起きてるのか分からない太一はスローモーションでその動きを見ていた。
琴原の目と自分の目の位置がどんどん近付く。
あまりの接近に、
「は?」
と言った太一に、
「逃げないで。」
と琴原は囁いた。
(う、動けない。へ、蛇ににらまれたカエルのようだ。・・・・・・知らないけど・・・)
そう思っていた時に、
(★お前には好きな人がいるだろう)
頭の中で声が聞こえた。
「何?」
それで太一の緊張が解けた。
太一は慌てて後ろに飛びのくと、他に誰もいない自分の周りをキョロキョロと見回した。
「あ~あ・・・・・・逃げられちゃったかな。」
琴原は残念そうに太一を見ている。
横井キャプテンが来て太一の肩を組むとくるりと琴原に背を向けるようにしてこっそり言った。
「そうすんだ、太一?」
太一はそれどころではなったが、
(あぁ、俺が告白されたのか・・・・・)
とようやく理解して改めて考えた。
いや、考えようとしたのだが、
(★好きでもない女をモノにしようとするなよ)
また声が聞こえた。
「え?」
「え?じゃないよ、どうすんだ。・・・・・って聞くまでも無いか。」
横井キャプテンは太一の肩を3回バンバンと叩いた。
「まったく、うらやましい限りだな。」
そう言いながら振り返ろうとする横井に、
「他に好きな人がいるんです。」
と太一は言った。
横井は慌てて、
「ば、ばか!・・・そんなのいたっていいから、とりあえず付き合っちゃえよ。」
小声で太一に言った。
「・・・・・済みません、そういう訳には・・・・・」
「はぁ?」
太一は振り返って琴原に深々とお辞儀をして、
「ありがとうございます。・・・でも、他に好きな人がいるので・・・ごめんなさい。」
と言った。
「・・・そう、わかったわ。・・・・・・ちゃんと言ってくれてありがとう。」
そう言って、琴原は女子部の輪の中に戻って行った。
「えぇ~!」
「なんでぇ~!」
振ったら振ったで、また周りは大騒ぎとなった。
「ほらほら、太一はきちんと返事をしたんだからいいじゃないか。」
横井がそう言って、
「はい、次は誰だ?」
と場を戻した。
そんな騒ぎでうやむやとなって誰も太一の好きな人を確認することに気付かなかった。
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