再び君に出会うために

naomikoryo

文字の大きさ
上 下
32 / 69
最終章

バスケットボール部

しおりを挟む
ようやく放課後になったので、太一は机に両手を置き大きく深呼吸をした。
「では、体育館に行きましょうか?」
小笠原先生に声を掛けられ、
「はい。」
と元気良く答えた。
「さすがに、ヤングはイキイキしてるねぇ~。」
という校長の言葉に、みんなつい噴出してしまった。
「死語ですよ、校長!」
ちょっときつめの小南教頭の言葉にしゅんとなった校長を尻目に二人は体育館へ向かった。

途中、夕べの話で盛り上がりながらもさり気無く貴子との関係を聞いてきた。
「まぁ、幼少の頃、まだこの町の開発が始まる前は子供も少なくて・・・・・」
「そうなの。」
小笠原先生は2年ほど前に横浜から転任してきた事は知っていたからそこから話したのだ。
小学生のクラスも全学年が同じ教室で10人にも満たなかった事や、貴子の上の年代はかなりかけ離れていた事。
そんなわけだから先生も少なかったことなども話した。

「それこそ、貴子がガキ大将みたいな感じで、俺と美智子を従えていたって感じですかね。」
「へぇ~。」
体育館の扉に手を掛けながら、
「凄く気が強くて、身体もでかくて、そりゃあもう・・・・・」
「そりゃあ、何よ!?」
「え?!」
扉を開けた瞬間、貴子が太一を睨んで仁王立ちした。

「あら貴子さん、今月もお願いしますね。」
小笠原先生は初めから知っていたように、くすくす笑いながら言った。
「はい、先生。・・・・・ところで、太一!」
太一により凄んで近付いた。
「あんた、相変わらずおしゃべりね。」
と言った。
(貴子の俺のイメージはおしゃべりなのか)
そう思いながらも頭を掻いて、
「ごめん、貴子大将!」
と笑って言った。
「もう!」
と頬が膨れた貴子を置いて太一は体育館の中の様子を見た。
片面で女子、真ん中を天井から引いてあるネットで区切って男子が練習をしていた。
「大会が近くなると貴子さんに女子のコーチをお願いしてるのよ。」
小笠原先生はそう言って、
「で、男子のほうは私が重点的に見るんだけど、さすがに男子のコーチは難しくってね。」
と、もう疲れたような顔をして言った。
「このぐらいの男子達は若さが有り余ってますからね。」
太一は嬉しそうに言った。

部員達の練習メニューの区切りになると、小笠原先生が一旦みんなを集めた。
女子には今月貴子がコーチをすること、男子には居る間だけになるが太一が特別にコーチをすることを報告した。
するとおそらく女子のキャプテンであろう女子が、
「貴子お姉さまに実力は存じてますが、そちらの・・・・・た・い・ち・さんとやらは?」
と少しあごを上げて太一を睨んだ。
(おいおい、どっかのお嬢様か~?)
と思ったら、駅前の立派な不動産タワーの社長令嬢だとあとで分かった。

「そうだな・・・・・じゃあ、キミ。」
割とリングに近くてボールを持っている男の子を指差して、
「アリウープ的なパス上げて。」
そう言ってフロントコートに向かって軽く走り出した。
その子は、
「え?え?」
とドギマギしている様子だったので、
「ほらよ。」
と別のボールを持った男子がボールをリングに向かった形で投げた。
「いいね!」
太一はボールの軌道を見極めリングに向かってジャンプした。
そして、空中で見事にキャッチしたボールをそのままリング内に叩きつけた。

ダーン!!

という音とでボールは床にも叩きつけられ、ボードが激しく揺れた。
太一はそのまま片手でリングにぶら下がっている。
「すご~い!」
やら、
「すげ~!」
の声が体育館にこだました。
肝心のあのお嬢様は口をあんぐりあけたまま黙ってしまった。
貴子は笑顔で小さく拍手していた。

太一は体の揺れが収まると、片手で勢いよくリングを持つ手に力を入れ最高の揺れを作りフリースローラインの辺りまで飛び降りて見せた。
そして、
「どう?」
とお嬢様にウインクして言った。
いや、実際は飛んだ勢いでその辺の小さな虫が左目に当たっただけなのだが、彼女にははっきりとウインクに見えた。

ズッキュ~ン!!

そんな音が聞こえてきそうな感じでお嬢様は両胸を押さえて太一を見つめた。
そんなお嬢様を他の女子達がキャーキャー言いながら取り囲んだ。
(やり過ぎたかな?)
と思ってると、さっきボールを投げた男子が、
「お~いいじゃん!使えそーじゃん。」
とニヒルな笑顔で言った。
「お~、任せてくれ。」
太一は嬉しそうに言った。
「ちなみに俺のコーチングはABCとあるんだけど・・・・・・Aが一番厳しい奴ね。」
それを聞いて、さっきの男子が少し離れたところにみんなを集めて相談を始めた。

終わるまでに10分ほどは太一は女子達に質問責めにされた。
ただ、不思議なことにさっきまでに威勢の良いお嬢様は女子達の一番後ろに居て、黙って太一を見つめていた。
(あ~あ、怒らせちゃったか・・・)
太一は相変わらず勘違いをした。

結局、まずはBでお願いしますと言われ、太一は即興で練習メニューを考えた。
「見ている感じだと君達は既にスタミナはありそうだから、それは各自、自主練で伸ばしてもらって・・・・・」
そこで小笠原先生が、
「じゃあ、太一先生に練習メニュー作ってもらいますから、今日はいつものメニューで進んでください。・・・・・いいかな?両キャプテン。」
「はいはい。」
パスをくれた男子が言った。
「承知しましたわ。」
あのお嬢様が太一を見つめながら言った。

そして練習が再開されると小笠原先生が体育館の隅にあった大きめのホワイトボードを引っ張ってきた。
「これに書いてください。」
「はい、分かりました。」
嬉しそうにホワイトボードに練習内容を書き込む太一。
そのすぐ横で貴子も太一が書いたメニューに、(男女)とか(男)と書き加えた。
それで太一も、
「途中で男女混合ゲームでも入れるか?」
と貴子に聞き、
「そうね。・・・・・特に女子には良い実戦練習になるわね。」
と言いながら、
「この辺の時間にする?」
「そうだな。」
とか、
「ゲームメンバー以外は片面で筋トレしながら見学とか?勿論、応援しながら。」
「出た、鬼貴子!」
というやりとりをした。
小笠原先生は、最初はそんな様子をくすくす笑いながら見ていたが、やがて生徒達への指導に離れて行った。
みんなも冷やかし気味に二人をちらちら見ていたが、ただ一人、あのお嬢様はじっと貴子を睨んでいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

「メジャー・インフラトン」序章1/ 7(太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!)

あおっち
SF
  脈々と続く宇宙の無数の文明。その中でより高度に発展した高高度文明があった。その文明の流通、移動を支え光速を超えて遥か彼方の銀河や銀河内を瞬時に移動できるジャンプ技術。それを可能にしたジャンプ血清。  その血清は生体(人間)へのダメージをコントロールする血清、ワクチンなのだ。そのジャンプ血清をめぐり遥か大昔、大銀河戦争が起こり多くの高高度文明が滅びた。  その生き残りの文明が新たに見つけた地、ネイジェア星域。私達、天の川銀河の反対の宙域だった。そこで再び高高度文明が栄えたが、再びジャンプ血清供給に陰りが。天の川銀河レベルで再び紛争が勃発しかけていた。  そして紛争の火種は地球へ。  その地球では強大な軍事組織、中華帝国連邦、通称「AXIS」とそれに対抗する為、日本を中心とした加盟国軍組織「シーラス」が対峙していたのだ。  近未来の地球と太古から続くネイジェア星域皇国との交流、天然ジャンプ血清保持者の椎葉清らが居る日本と、高高度文明異星人(シーラス皇国)の末裔、マズル家のポーランド家族を描いたSF大河小説「メジャー・インフラトン」の前章譚、7部作。  第1部「太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!」。  ジャンプ血清は保持者の傷ついた体を異例のスピードで回復させた。また血清のオリジナル保持者(ゼロ・スターター)は、独自の能力を飛躍的に引き上げる事が出来たのだ。  第2次大戦時、無敵兵士と言われた舩坂弘氏をモデルに御舩大(ミフネヒロシ)の無敵ふりと、近代世界のジャンプ血清保持者、椎葉きよし(通称:お子ちゃまきよし)の現在と過去。  ジャンプ血清の力、そして人類の未来をかけた壮大な戦いが、いま、始まる――。  彼らに関連する人々の生き様を、笑いと涙で送る物語。疲れたあなたに贈る微妙なSF物語です。  本格的な戦闘シーンもあり、面白い場面も増えます。  是非、ご覧あれ。 ※加筆や修正が予告なしにあります。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》

小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です ◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ ◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます! ◆クレジット表記は任意です ※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください 【ご利用にあたっての注意事項】  ⭕️OK ・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用 ※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可 ✖️禁止事項 ・二次配布 ・自作発言 ・大幅なセリフ改変 ・こちらの台本を使用したボイスデータの販売

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...