再び君に出会うために

naomikoryo

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本編

病院

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太一  :「ん・・・・・ん~・・・」
太一は起きざまに布団の中で背伸びをした。
何だか体中がひどく痛かった。
ポキポキポキ・・・・・
あちこちの関節包で空気が破裂する音が聞こえた。
健   :「あっ、兄ちゃんが目を覚ました!」
太一のベッドの横で椅子に座って本を読んでいた健は、すぐさま廊下にいる母ちゃんの元へ叫びながら走った。
病室のドアを開けると、母ちゃんと誰かおばさんが話していた声が聞こえた。

??? :「まぁ、太一君も目が覚めたみたいだから、お互い何事もなくて良かったわね。」
母ちゃん:「ほんとねぇ。・・・・・ちょっと太一に事情を聞いてみるから、分かったら電話するわね。」
??? :「えぇ、それじゃあ。」
母ちゃん:「お大事に・・・・・かしらね・・・・・ウフフ。」
??? :「そうね・・・・・フフ。」

それから母ちゃんが病室に戻りながら、
母ちゃん:「ふぅ・・・・・入院せずに済んで良かったわ。」
と、太一を見ながら言った。
太一は体半分だけ起き上がった状態で辺りを見渡していた。
太一  :「あれ、病室?・・・・・何で俺は病院にいるんだ?」
母ちゃん:「何でって・・・・・こっちが聞きたいわ。」
太一  :「へっ?」
母ちゃん:「あんたは何で貴子ちゃんとサチんとこの墓場で倒れてたのよ?」
太一  :「貴子?」
母ちゃん:「小宮神社の貴子ちゃんよ。」
太一  :「神社?・・・・・貴子?・・・・・・」
母ちゃん:「まさか、あんたも覚えがないって言うの?!」
母ちゃんはえらい剣幕で太一に詰め寄った。
太一  :「あっ!」
太一はその剣幕にちょっと身を引いた。
母ちゃん:「あっ・・・・・、どこも痛くはないんだよね?」
母ちゃんは勢いついでに思い出したように太一の頭やら肩を撫でた。
太一  :「う・・うん。大丈夫。」
母ちゃん:「そう・・・良かった。」
母ちゃんは椅子に座った。
母ちゃん:「健、看護婦さん呼んで来て。」
健   :「分かった。」

健が病室を出ると、母ちゃんはいよいよ太一に詰め寄って、
母ちゃん:「あんた・・・・・いつの間に貴子ちゃんと・・・・・その・・・・」
太一  :「・・・・・貴子となんぞ、何もないぞ。」
太一の目は嘘をついていなかった。
というより、太一が嘘をついたのはず~っと子供の頃で、馬鹿正直なこの息子に嘘はつけないと思っている。
でも、年頃で女の子が絡むとそうでもない事は太一の父親で知っていた。
普通はどんなことでも馬鹿正直なくせに、ちょっと色めいたことになるとつまらない、分かりきった嘘をつくのだ。
いや、それでも太一が嘘をついているようには全く思えない。

母ちゃん:「じゃあ、何で一緒にいたの?」
太一  :「どこに?」
母ちゃん:「だから、サチんとこの」
太一  :「墓場?」
母ちゃん:「そうそう。」
太一  :「・・・・・何で?」
母ちゃん:「いや、こっちが聞きたいの!」
太一  :「・・・・・・・・・・」
太一は一生懸命考えたが、全く何の記憶も出て来ない。
そもそも、貴子が小学生の頃までは美智子も含めてみんなで遊んでいたが、それ以降、貴子が中学生になってからは何となく疎遠になっていた。

太一  :「ここ3年くらい口も利いたことない・・・・・」
少し呟き気味に言った。
母ちゃん:「じゃあ、たまたま出会って、二人して倒れたって事?」
太一  :「倒れた?」
母ちゃん:「サチの話では、ユウさんと墓掃除に行ったらあんた方が倒れていたんだって。」
ユウさんというのは美智子のお父さんのことだ。
太一  :「寝てたってこと?」
母ちゃん:「いや、その場で起こそうとしてみたけど起きる気配がないから、とりあえず車までおぶってこの病院に運んだって。」
太一  :「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
相変わらず太一は首をひねっている。

母ちゃん:「30分くらい前まで、貴子ちゃんもそっちのベッドにいたんだけどね。」
太一  :「・・・・・そう・・・・・」
母ちゃん:「やっぱりお前と同じで全く覚えがないって・・・・・」
健   :「宇宙人に誘拐されたんだろう?!」
ちょっと前に戻ってきていた健が、目をキラキラさせて言った。

母ちゃん:「何馬鹿な事言ってんの!・・・・・・で、看護婦さんは?」
健   :「精密検査の準備が出来次第、呼びに来るって。」
太一  :「え~、何だよ、それ。」
母ちゃん:「まさかとは思うけど、脳になんかあったら大変でしょ!」
太一  :「大丈夫だよ!・・・・そ、そうだ、腹減ってんだよ、腹。」
母ちゃん:「そんなのいつもでしょ!」
太一  :「いつも通りなんだから大丈夫って事だよ!」
母ちゃん:「いいから、とりあえず検査しときなさい!・・・・・貴子ちゃんも今してるわよ。」
太一  :「あっ、そう・・・・・」
太一はしぶしぶ布団から出てスリッパを履いた。
そして、看護婦さんが呼びに来るとみんなで放射線科へ向かった。

放射線科の先生にいくつか質問されているうちに目の前のMRI室から貴子が出てきた。
そこに駆け寄ったのは母ちゃんと同級生の清美さんだ。
母ちゃんも二人に近付くと話をしし始めた。
太一は先生の質問に答えながら貴子の様子を気にした。
貴子もチラチラと太一を見たが、その表情からこれといった感情は分からなかった。
そうしているうちに太一も別室に案内された。
まず着替えをしてから、血圧を計ったり採血をされた。

看護婦 :「今日は何だか、こんな患者さんばかりなのよ・・・」
と疲れたように言った。
太一  :「そうなんですか?」
看護婦 :「みんな、ここ数日の記憶がないって言うのよね・・・」
太一  :「・・・・・・・・・・・・・」
そうして、別室から廊下に出るともう貴子たちはいなかった。
結局、検査結果は後日ということで帰宅は許されたので太一たちは病院をあとにした。
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