再び君に出会うために

naomikoryo

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本編

蘇りと共に

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土曜日の夕方、二人はこの町で一つしかない墓地に来ていた。
新しくこの土地に来たものは隣町の焼場で火葬して骨壷ごと埋められているが、古くからいる者は土葬を守っていた。
別に、キリスト教やイスラム教のように火葬に対して否定的な宗教の流れではないが、少しは町開発が進んだとはいえこの先も土地に困ることも

無い上にやはり年配者の絶対的な意見がまだあった。
だいたいは『がん箱』と呼ばれる長方形の棺に入れ、頭を下にして埋められている。
又、墓穴周辺には野犬などの野生動物が掘り起こさないよう、竹や樹木の枝が無数に突き立てられている。

貴子:「さすがに、なんか気持ち悪いわね?」
貴子は太一の後ろを、片袖を掴みながら歩いている。
太一:「なんだよ!神社の娘のくせに恐がりだな。」
太一はあざ笑うように言って見せたが、内心は心臓がバクバクしていた。
もう6時近くになるが夏時間の為かまだ夕焼けが始まったぐらいだ。
それでも、自分達より遥かに高い竹があちらこちらに立てられているため、その陰でいつもより暗く感じた。

貴子:「・・・・・ねぇ・・・やっぱり明日にしない?」
貴子がそれを口にするのは3度目だ。
太一:「先週、テニスした後に散々話し合っただろ?」
貴子:「・・・・・うん・・・・・」
「早ければ早いほど蘇りの可能性も上がるっていうんだから・・・・・」
そう、美智子の父を蘇らせるのはどうやら100%ではないようだ。
ワタが言うには、この星ではないどこかで、自分達ではない彼らが行ったのを見たに過ぎないらしい。
それでも、実際にカナキチを蘇らせたのを見ている太一はそれを信じているのだ。
スサ:(もし・・・・・・もしも、ダメだったら・・・・・・その時は・・・・・・・ごめん)
そんなスサに太一は、
太一:「そん時は、そんな事をしようとしていた良い夢を見ていたんだと思うよ、きっと。」
夕べ、寝る間際のやりとりである。
勿論、別れになる事は承知で、少し思い出話をしたりしたが今日の体力温存の為、尽きない話も切り上げて10時には熟睡に入った。
貴子とワタも同じような感じだった。

今週中は、貴子と太一は放課後になると学校の屋上で待ち合わせて、スサとワタに代わり二人の、厳密にはスサと既に合体しているタマオも含め

て、精神波の同調のレベル上げをした。
そして、その帰りは二人仲良く手を繋いで、貴子を送り届けた。
そう・・・紛れも無い恋人同士のように。

そうして、伊藤家の区画の前に着いた。
太一は貴子の手を取り、ぎゅっと握った。
貴子もすっと太一の横に立ち、軽くつばを飲み込んだ。
太一:「どの辺に埋まってるか、分かるか?」
貴子:「・・ううん、分かんない。」
二人は区画の中を見渡した。
あちこちにワンカップのビンが置いてある中で、つい最近枯れたんだろう花がさしてあるものを見つけた。
太一:「きっとあの辺だな・・・」
太一は区画の中には入らずに一番近い所まで貴子の手を握ったまま歩いた。
貴子も黙って歩いた。

ワタ:(夕べも言ったと思うけど・・・)
貴子:「分かってる・・・」
スサ:(今更、説明は要らないよね?)
太一:「あぁ。」

太一と貴子をお互い向き合った。
太一:「それじゃあ・・・」
貴子:「うん・・・・・」
二人の顔が少しずつ近付いていく・・・・・
そして、軽く唇が触れるのを感じて、貴子はブワッと涙が溢れ出すのを感じたがぎゅっと更に目を瞑った。
貴子:「・・・忘れ・・・ないで・・・」
涙交じりの切ない小さな声だけど、この静かすぎる墓地では良く聞こえた気がした。
太一:「・・・あぁ・・・きっと・・・・・」
そう言って、太一もきゅっと唇を一度噛みしめて貴子の唇へ軽く触れた。
瞬間、二人の体が眩しいほどの青い光に包まれ始めた。

太一:「あっ・・・・・」
いつの間にか太一と貴子は隣り合って立ち、手を握っていた。
だが、いくら目を開けようとしても開かず、ほんの少しだけ開いた瞼の隙間からうっすらと目の前が分かるだけだった。
貴子:「え?・・・・・」
二人の前方2m程の所に一人の男性が立っている。
太一:「お・・じ・さん?・・・・・」
貴子:「・・・お・じさん?・・・・」
軽く呟いたつもりだったが、声になっていたかどうかは分からなかった。
昨夜互いに聞いたように、蘇りが成功してその人物に関わる人たちの記憶が断片的に消されていく。
勿論、太一と貴子はその蘇りさえも記憶から消される。
二人の意識は少しずつ、確実に薄れていっているようだ。

??:「・・・・やれやれ、やっと生身の身体を手に入れられたな。」
??:「・・そうね。・・・・・この坊や達のおかげね。」
??:「・・・・・別に口移しなんかしなくても、いつでも外には出られるのにね。」
目の前にいる一人の男が喋っているようだ。
??:「いたいけな若い地球人をからかっちゃって!」
??:「一応、助けてくれたお礼はしとかなきゃな。」
??:「そうね。アハハハハ・・・・」
男の声と女の声で喋っている。
太一と貴子はもう声を出すことも出来ず、ただその様子がぼんやりともうほとんど瞑った瞼越しに感じてるぐらいだった。
それに、それが美智子の父だろう、ということ意外は何も分からなくなっていた。

??:「じゃあ、今後はこの身体で頑張っていこうか?」
??:「そうね。」
??:「えぇ。」
そして、
??:「ありがとう、太一。」
??:「ありがとう、貴子。」
何やら聞き覚えはあるのだが誰の声か全く分からないが、御礼を言われているようだ。

??:「でも、このままじゃ、仲間を増やせないわね・・・・・」
??:「そうだなぁ・・・・・・・そうだ!・・・・折角だから・・・こ・・・・・・ふた・・・・・・」
だんだん声も聞き取れなくなってきた。
??:「そうね・・・・・・・・どうせ・・・・・この・・・・・・いつ・・・・・こど・・・・・」
??:「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

もう何も聞こえなくなり、二人の意識はすーっと遠くなっていった。
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