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本編
貴子の想い
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「えっ、何で?」
太一はあえてもう一度尋ねた。
「何でって・・・・・・・・・・」
「?」
太一はあからさまに首をかしげた。
「・・・・・・じゃあ、逆に・・・・・どうして一緒に帰るの?」
「それは・・・・・・・・ほら!これからの事、考えないと。」
「・・・太一が決めればいいよ。」
「そんな・・・・・」
「太一がこの日のこの時間って決めればいいよ。本当に。」
「そう・・・か?」
「うん。」
貴子は笑顔で答えているが、どこか寂しげだ。
あの保健室の一件以来、3日間ろくに会わなかった。
というよりは、貴子は避けるように放課後になるとそそくさと帰ってしまっていた。
結局、あのセンセイは、昨日付けで学校を辞めてしまった。
あの後、職員室すらも忘れて保健室のベッドに下着姿のままぼーっとしていた所を、翌朝に来た用務員さんに発見されすぐに病院に連れて行かれたそうだ
幸い、警察沙汰な案件ではないと言うことで大事にはならなかったが、どうも記憶が無さ過ぎて手に負えなかったようだ。
まぁ、保健師の資格を取ったのも本人ではないため、保健の先生でいる必要な知識が全くなかったようだから仕方がない。
タマオが言うには、それこそスタイルが良いだけで。センスも頭も悪いようだ。
ちなみに『ハヤタマオを探せ』から始まっていたので、今太一の体に入っている新しい個体はタマオと呼ぶことに決まっていた。
あの日の夜は太一の中でスサとタマオがペチャクチャとうるさかったが、翌朝になるとどうやら合体したらしく、どちらかしか出て来れなくなっていた。
主導権はスサが持っているらしいので基本はスサらしいが。
「・・・もう・・・いつだって・・・実行出来るんでしょ?」
「いや・・・・・あと数日は回復が必要らしい。」
(うそつき・・・)
センセイの記憶を飛ばすためにかなりのエネルギーを消耗した、ことに太一はしたいようだ。
「そう・・・・・」
少し生暖かい風が貴子の髪を揺らした。
校庭で陸上部と野球部とサッカー部が、新入部員の大きな声援と共に掛け声を掛け合いながら練習に励んでいる。
貴子は金網越しにその様子を眺めながら、
「・・・じゃあ・・・・・明後日の日曜日に、あの運動公園へ行って久しぶりにテニスしない?」
「は?・・・・・あ、あぁ・・・・・いいよ。」
「彼等には休んでもらって、二人で・・・・・」
「・・・分かった。」
「その時に・・・・・いつって言ってくれれば・・・・・いい。」
「あぁ。」
実は太一は、貴子が変に避けているので、協力してくれる気が無くなったのかと心配していた。
なのでかなりホッとした声で、
「じゃあ、今日は一緒に帰ろう?・・・・・送って行くよ。」
と言った。
「・・・うん・・・・・」
貴子はそんな太一の気持ちが分かってしまう自分が嫌だったが、とりあえず日曜日は楽しい一日にしよう、と言い聞かせた。
そして屋上を降りた二人は一度も手を繋ぐこともなく、貴子の家の神社下の階段に着いた。
学校を出てしばらくは、貴子も太一の話に楽し気に返答していたがもう10分前ぐらいからは頷くだけで無言だった。
「じゃあ、明後日な。」
太一は気にすることなく去ろうとしたが、貴子が俯いたまま何も反応しない。
「じゃあな?」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・どうした?」
少し歩き始めていた太一は戻って貴子の顔を覗こうとした。
が、貴子は顔をそむけた。
「何でもない!」
そう叫ぶと慌てて階段を駆け上がって行った。
「どうしたんだよ?」
太一は貴子の後を追った。
中腹ぐらいですぐに追いついたものの、何か懸命に走っている貴子のすぐ後ろを軽く一段飛ばしで上までついて行った。
「もう、アホ太一!」
上りきって3歩ほど歩いたところで貴子が振り返った。
その目には大粒の涙が溢れていた。
太一はあえてもう一度尋ねた。
「何でって・・・・・・・・・・」
「?」
太一はあからさまに首をかしげた。
「・・・・・・じゃあ、逆に・・・・・どうして一緒に帰るの?」
「それは・・・・・・・・ほら!これからの事、考えないと。」
「・・・太一が決めればいいよ。」
「そんな・・・・・」
「太一がこの日のこの時間って決めればいいよ。本当に。」
「そう・・・か?」
「うん。」
貴子は笑顔で答えているが、どこか寂しげだ。
あの保健室の一件以来、3日間ろくに会わなかった。
というよりは、貴子は避けるように放課後になるとそそくさと帰ってしまっていた。
結局、あのセンセイは、昨日付けで学校を辞めてしまった。
あの後、職員室すらも忘れて保健室のベッドに下着姿のままぼーっとしていた所を、翌朝に来た用務員さんに発見されすぐに病院に連れて行かれたそうだ
幸い、警察沙汰な案件ではないと言うことで大事にはならなかったが、どうも記憶が無さ過ぎて手に負えなかったようだ。
まぁ、保健師の資格を取ったのも本人ではないため、保健の先生でいる必要な知識が全くなかったようだから仕方がない。
タマオが言うには、それこそスタイルが良いだけで。センスも頭も悪いようだ。
ちなみに『ハヤタマオを探せ』から始まっていたので、今太一の体に入っている新しい個体はタマオと呼ぶことに決まっていた。
あの日の夜は太一の中でスサとタマオがペチャクチャとうるさかったが、翌朝になるとどうやら合体したらしく、どちらかしか出て来れなくなっていた。
主導権はスサが持っているらしいので基本はスサらしいが。
「・・・もう・・・いつだって・・・実行出来るんでしょ?」
「いや・・・・・あと数日は回復が必要らしい。」
(うそつき・・・)
センセイの記憶を飛ばすためにかなりのエネルギーを消耗した、ことに太一はしたいようだ。
「そう・・・・・」
少し生暖かい風が貴子の髪を揺らした。
校庭で陸上部と野球部とサッカー部が、新入部員の大きな声援と共に掛け声を掛け合いながら練習に励んでいる。
貴子は金網越しにその様子を眺めながら、
「・・・じゃあ・・・・・明後日の日曜日に、あの運動公園へ行って久しぶりにテニスしない?」
「は?・・・・・あ、あぁ・・・・・いいよ。」
「彼等には休んでもらって、二人で・・・・・」
「・・・分かった。」
「その時に・・・・・いつって言ってくれれば・・・・・いい。」
「あぁ。」
実は太一は、貴子が変に避けているので、協力してくれる気が無くなったのかと心配していた。
なのでかなりホッとした声で、
「じゃあ、今日は一緒に帰ろう?・・・・・送って行くよ。」
と言った。
「・・・うん・・・・・」
貴子はそんな太一の気持ちが分かってしまう自分が嫌だったが、とりあえず日曜日は楽しい一日にしよう、と言い聞かせた。
そして屋上を降りた二人は一度も手を繋ぐこともなく、貴子の家の神社下の階段に着いた。
学校を出てしばらくは、貴子も太一の話に楽し気に返答していたがもう10分前ぐらいからは頷くだけで無言だった。
「じゃあ、明後日な。」
太一は気にすることなく去ろうとしたが、貴子が俯いたまま何も反応しない。
「じゃあな?」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・どうした?」
少し歩き始めていた太一は戻って貴子の顔を覗こうとした。
が、貴子は顔をそむけた。
「何でもない!」
そう叫ぶと慌てて階段を駆け上がって行った。
「どうしたんだよ?」
太一は貴子の後を追った。
中腹ぐらいですぐに追いついたものの、何か懸命に走っている貴子のすぐ後ろを軽く一段飛ばしで上までついて行った。
「もう、アホ太一!」
上りきって3歩ほど歩いたところで貴子が振り返った。
その目には大粒の涙が溢れていた。
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