再び君に出会うために

naomikoryo

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本編

真実

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「おっ、貴子だ!!」
太一は図書館入り口からすぐ左の窓際のカウンターに座っている貴子を発見した。
前面窓ガラスの1階フロアは中が丸見えで、貴子は念のため一番分かりやすい席に座っていたのだ。
当然、足元もかなり透けて見える事は、もう何度も来ているので了解済みである。
それに昨日の事もあり、長めのニットスカートを履いていた。
「へへっ、本に夢中みたいだな。」
太一はゆっくりと外から貴子に近付いていった。
「よっ!!」
突然、窓ガラスにバンっと手を当てて貴子を驚かせた。
つもりだったが、既に貴子は太一に気付いていたらしく、ジロッと睨みつけて入り口のほうを指差した。
「ありゃりゃ・・・」
と頭を掻きながら、太一は中に入り貴子の横に座った。

「ごめん、遅れて・・・」
「本当!!もう三時よ!!」
「ほんと、ごめん・・・実は、訳があってさ。」
「そう?聞いてあげる。」
貴子は太一の方へ椅子ごと向いた。
「おっ・・・そんな・・・・・え、え~とな・・・・・」
「うん。」
太一は深呼吸した。
こんなに素直に聞いてくれるとも思っていなかったので適当に言っとこうとさっきまで思っていたのだが気が変わった。
「・・・実は、昨日あれから家に帰って・・・・・えっと・・スサノオと話したんだけど・・・」
「うん。」
「あの・・・・ほら・・・・・たかだかうさぎの足を治すだけであんなに体力を消耗してしまうんだから、まずいよなって。」
「まずい?」
「そんなんで、人一人生き返らせるとなったら・・・」
「生き返らせる!?」
(ちょっと太一・・・・・・その話しないんじゃなかったのか?)
貴子は物凄く驚いて太一に詰め寄った。
「やっぱ、話す。・・・・・・・あ・・・・・・貴子には話してなかったけど・・・・・実はさぁ。」
「うんうん。・・・・ちょっと待って!!」
貴子は右手を太一の前に出して次の言葉を止めた。
「?・・・・・・どうした?」
「こんな目立つとこでしていい話なの?」
貴子と太一は周りを見渡した。
日曜ということで、おじさんや私服の学生たちがその辺りをうろうろしている。
特に、ここは入り口のすぐ傍なのだ。
「あっ、そうだな。」
二人はこそこそと奥の方の『育児・生活』コーナーのテーブルへ向かった。
日曜日のこんな午後はそのコーナーはがら空きだった。

取り合えず隣同士に座り、椅子を近づけて話し始めた。
かなり顔も近づけているが、今では別に気にする事はなかった。
勿論、体が触れなければ、の話である。

「それで?」
「ごめん、その前に話しておかなければいけないことがあるんだ。」
「何?あらたまって。」
「うん。・・・・・・そもそも俺がスサノオの仲間を探しているってのがさ・・・・・」
太一は、あの蛍だと思った出会いから正直に話した。
「え~!神様じゃないの~?」
ひどく残念な声を出した。
「ちょっと~!オオワタツミ様~。」
(ごめんなさいね~・・・・・・ウフフ)
「し~!声が大きいよ!」
「それで、もう一人・・・・・っていうか、もう一体探して、あなた達が太一の中で一つになれば美智子のお父さんは生き返らせれるって言う事?」
「そう・・・・・みたいだけど、そこで、ほら、昨日のうさぎで・・・」
「本当にそれが出来るのかって?」
(ちゃんと、出来るよ。・・・・・・・出来るんだけど・・・・・・)
「出来るのは確からしいんだけど・・・・・・その・・・・・・俺の体力が不足してるみたいで。」
「それはダメだわね。・・・・・・・頑張りなさい!」
「うん・・・・・・・・だから、朝からトレーニングしてたんだ・・・・・・・・って、それで納得したの?」
「まぁ・・・・・・美智子の為になるんだったら・・・・・・いいんじゃない?」
「そっか。」
「うん。」
「・・・・・あっ、で、昼飯後にも時間あったから腕立てとかして・・・・・」
「うん。」
「汗かいたから、出てくる前に風呂入ったら・・・・・・ちょっと寝ちゃって・・・・・・」
「・・・・・・じゃあ、しょうがないわね。」
貴子がニコッと笑って言った。
「ごめんな。」
「いいわよ!そんな理由なら・・・・・・・・でも、次は気をつけてね。」
「あ、あぁ、勿論。」
太一はとてもすっきりした顔をした。
遅刻したこともそうだが、これまで嘘をついていたことも気が引けていたのだ。
「良かった・・・・・・・貴子も納得してくれて。」
「あのねぇ、納得したわけじゃないわよ!・・・特に、オ・オ・ワ・タ・ツ・ミ・さ・ま」
(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
「まぁ、いいわ!それは帰ってからで。」
「お手柔らかにな。」
太一は笑って言った。
「でも・・・・・・・・生き返らせて・・・・・それで上手くいくの?」
「えっ。」
「だって、そもそも死んじゃった人が生き返ったからって、じゃあまた、これまで通りに、っていく?」
「それは・・・・・・・・・・・・」
「ん?」
貴子は太一を見つめた。
「それは?」
「ん~~~~~。」
「知ってるんでしょ!・・・・・・・・・・それは・・・・・・・何?」
「その人に関わる人の記憶が、その人が死ぬ前に戻るから大丈夫だよ。」
太一の目が釣り上がっている。
「あぁ、あなたね。」
「太一が困っているようだから代わったよ。・・・・・・・・・・そして・・・」
「あなた達に関する記憶も私たちから消えるのね?」
「その通り。」
「じゃあ、私と太一の・・・・・・・・・」
貴子は少し泣きそうな顔になったが、
「ま、まぁ、いいわ・・・・・・別に、もともと何でもなかった訳だし・・・・・」
貴子は少しぶっきらぼうな言い方をした。
「あなたには何の得も無いだろうけど・・・・・」
「ううん、いいのよ。・・・・・・・太一の思う通り・・・・・・・美智子のお父さんを生き返らせれるなら・・・・・・・きっと美智子にも太一にも良いことなんだから。」
「貴子・・・」
太一の顔に戻っていた。
「・・・・・・・・俺はきっと貴子のこと・・・・・・・・・」
太一の小さな呟きは貴子には聞こえなかった。
「まぁ、いつそう出来るか分からないけど、それまでは頑張りましょ。」
貴子は思いっきり笑顔を作って言った。

「ごめんね、ちょっとお手洗いに言ってくる。」
そう言って、貴子は急いで立ち上がると、途中で涙をこぼさないように小走りでトイレに向かった。
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