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本編
神の力
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金曜日の夕方、太一は図書室にいた。
朝のうちに太一の下駄箱に貴子からの手紙が入っていたからだ。
普段ならどこかの部活に声を掛けられて参加していた太一だが、ここニ週間は用事があるからと方々断っていたためかなり自由に動けるのだ。
校庭からはそんな部活動に勤しむ声が聞こえていたが、図書室の中はまばらに数人しかおらずとても静かだった。
太一の前には、適当に入り口あたりに置かれていた本があった。
それをパラパラと適当にめくりながら、出来るだけ小さな声でスサノオと話し合っていた。
周りからすれば、まるっきり独り言を喋っている危ない奴にしか見えないだろうが。
『ガラガラっ』
割と勢い良く入り口のドアが開き、貴子はすっと中に入るとまた急いでドアを閉めた。
そして、中を見ることもなくすぐそばの本棚の裏側に身を隠した。
図書室にいた数人がまるで気付くこともないぐらいの素早さだ。
少し経って、廊下から複数人の声がした。
『ガラッ』
と少しドアが開いて一人の男子が中をキョロキョロ見て、又閉めた。
「どうだった?」
「いないなぁ。」
「用事があるとは言ってたけど・・・・・いいのかなぁ。」
「とりあえず、みんなと集合するか。」
そんなことを言って、廊下の連中はパタパタとどこかへ行った様だ。
「ふぅ~、やっと巻いたわ。」
廊下のほうへ気を取られていた太一の後ろから声がした。
「びっくりした~。」
太一が本当に驚いたような顔をしたので貴子は少し笑って、
「相変わらずそんな顔してるのね。」
と言いながら隣に座った。
「あ~!!」
とちょっと怒ろうとしたが貴子のそんな笑い顔を見て、やめた。
「大丈夫なのか?あの連中・・・・・」
「いいのよ・・・・・・・・何だか勝手にボディガードだ、なんて言って周りにいるんだから。」
「そっか。」
「頼んでもいないのに・・・・・・・・・あっ・・・・・・・・ウチのお父さん絡みかも知れないけど・・・」
「あ~・・・・・貴子んとこの父ちゃんならやりかねないなぁ。」
「でしょう?・・・・・・やんなっちゃう。」
そんなやりとりをして太一もちょっと笑顔になって、
「貴子も本当は変わってないんだな。」
とポツリと言った。
「あら?又、お姉ちゃんに昇格するのかしら?」
と貴子が茶化して言ったので、
「い~や!貴子は・・・・・貴子でいいな!」
とちょっとふてて言った。
貴子が中学生になるまでは『貴子姉』と呼んでいたからだ。
「ところで・・・・・あんたにはいつからスサノオ様がいたの?」
「2週間前くらいかな。」
「そんな最近なの?!」
「じゃあ、そっちは?」
「どうやら1年以上前からみたい。」
「そうなんだ!」
(そうなのか・・・・・)
「夕べ、あれから色々とお話を聞いてみたけど・・・・・とりあえずはあと一人、ハヤタマオ様を探す、ということで合ってるのよね?」
「あぁ。」
「それで、私・・・というかオオワタツミ様を見つけるまではどうしてたの?」
「う~ん・・・・・適当に人の来そうなとこに行ってみて・・・・・こう・・・・・電波発生!みたいな。」
「何それ!?」
貴子は本気で呆れた顔をした。
「なんだよ~!」
太一がちょっと膨れっ面で言うと、
「まぁ、いいわ。・・・・・とにかく、これからは二人でいるんだから早く見つけましょ。」
「そうだな。」
「それで、私も手分けして2方向で探したほうが良いかと思ったんだけど、どうやらオオワタツミ様が言うには・・・」
そこでちょっと止まった。
「ん・・・・・言うには?」
「うん。・・・・・どう言えばあんたに分かりやすいか考えてたんだけど・・・・・」
「ん?」
「スサノオ様はテレパシーを出して仲間の波長を探すことが出来るようだけど、オオワタツミ様はそれ自体は出来ないんだって。」
「そっか。」
(それで、向こうからは僕を探せなかったのか・・・)
「でも、それを増幅することが出来るんだって!・・・・・増幅って分かる?」
「ん~・・・・・何となく・・・・・」
あまり分かっていなさそうに見えたので、
「スサノオ様の力を何倍かにする力があるんだって。」
「あ~!そういうことね。」
「ふ~・・・・・わかったようね・・・・・」
「じゃあ、一緒に探したほうが良いって事だな。」
「うん・・・そうなんだけど・・・・・」
「何やらさっきから、こう・・・こそばったいんだけど・・・・・何?」
「!!」
貴子はちょっと顔を赤らめて、
「触れていなきゃいけないんだって・・・・・あんたと私。」
「あっ、そう・・・・・・・えっ?」
「手を繋ぐなり、腕を組むなり・・・・・」
「ば・・・・・馬鹿だなぁ!!・・・・・・・そんなハレンチな!!!」
「ハレンチってあんた・・・・・」
「まぁ、それで歩くというよりは、どっか人が多いところでベンチにでも座って・・・・・こう・・・こっそり手を繋いで・・・・・ね?」
「あ・・・・あぁ・・・・・貴子が良いなら・・・俺は良いけど!!」
そう言いながらもちょっとそんな状況を想像して、太一も頬を赤らめた。
「大丈夫・・・・・美智子には内緒にして、普段来ないようなとこで探せば・・・・・」
貴子は校庭のどこかを見ながらポツリと言った。
太一もふと校庭を見ると、すぐ窓の向こうを友達数人と喋りながら帰宅していく美智子と目が合った。
だが、美智子はすぐに友達のほうへ目をやって、それきり太一を見る事はなかった。
朝のうちに太一の下駄箱に貴子からの手紙が入っていたからだ。
普段ならどこかの部活に声を掛けられて参加していた太一だが、ここニ週間は用事があるからと方々断っていたためかなり自由に動けるのだ。
校庭からはそんな部活動に勤しむ声が聞こえていたが、図書室の中はまばらに数人しかおらずとても静かだった。
太一の前には、適当に入り口あたりに置かれていた本があった。
それをパラパラと適当にめくりながら、出来るだけ小さな声でスサノオと話し合っていた。
周りからすれば、まるっきり独り言を喋っている危ない奴にしか見えないだろうが。
『ガラガラっ』
割と勢い良く入り口のドアが開き、貴子はすっと中に入るとまた急いでドアを閉めた。
そして、中を見ることもなくすぐそばの本棚の裏側に身を隠した。
図書室にいた数人がまるで気付くこともないぐらいの素早さだ。
少し経って、廊下から複数人の声がした。
『ガラッ』
と少しドアが開いて一人の男子が中をキョロキョロ見て、又閉めた。
「どうだった?」
「いないなぁ。」
「用事があるとは言ってたけど・・・・・いいのかなぁ。」
「とりあえず、みんなと集合するか。」
そんなことを言って、廊下の連中はパタパタとどこかへ行った様だ。
「ふぅ~、やっと巻いたわ。」
廊下のほうへ気を取られていた太一の後ろから声がした。
「びっくりした~。」
太一が本当に驚いたような顔をしたので貴子は少し笑って、
「相変わらずそんな顔してるのね。」
と言いながら隣に座った。
「あ~!!」
とちょっと怒ろうとしたが貴子のそんな笑い顔を見て、やめた。
「大丈夫なのか?あの連中・・・・・」
「いいのよ・・・・・・・・何だか勝手にボディガードだ、なんて言って周りにいるんだから。」
「そっか。」
「頼んでもいないのに・・・・・・・・・あっ・・・・・・・・ウチのお父さん絡みかも知れないけど・・・」
「あ~・・・・・貴子んとこの父ちゃんならやりかねないなぁ。」
「でしょう?・・・・・・やんなっちゃう。」
そんなやりとりをして太一もちょっと笑顔になって、
「貴子も本当は変わってないんだな。」
とポツリと言った。
「あら?又、お姉ちゃんに昇格するのかしら?」
と貴子が茶化して言ったので、
「い~や!貴子は・・・・・貴子でいいな!」
とちょっとふてて言った。
貴子が中学生になるまでは『貴子姉』と呼んでいたからだ。
「ところで・・・・・あんたにはいつからスサノオ様がいたの?」
「2週間前くらいかな。」
「そんな最近なの?!」
「じゃあ、そっちは?」
「どうやら1年以上前からみたい。」
「そうなんだ!」
(そうなのか・・・・・)
「夕べ、あれから色々とお話を聞いてみたけど・・・・・とりあえずはあと一人、ハヤタマオ様を探す、ということで合ってるのよね?」
「あぁ。」
「それで、私・・・というかオオワタツミ様を見つけるまではどうしてたの?」
「う~ん・・・・・適当に人の来そうなとこに行ってみて・・・・・こう・・・・・電波発生!みたいな。」
「何それ!?」
貴子は本気で呆れた顔をした。
「なんだよ~!」
太一がちょっと膨れっ面で言うと、
「まぁ、いいわ。・・・・・とにかく、これからは二人でいるんだから早く見つけましょ。」
「そうだな。」
「それで、私も手分けして2方向で探したほうが良いかと思ったんだけど、どうやらオオワタツミ様が言うには・・・」
そこでちょっと止まった。
「ん・・・・・言うには?」
「うん。・・・・・どう言えばあんたに分かりやすいか考えてたんだけど・・・・・」
「ん?」
「スサノオ様はテレパシーを出して仲間の波長を探すことが出来るようだけど、オオワタツミ様はそれ自体は出来ないんだって。」
「そっか。」
(それで、向こうからは僕を探せなかったのか・・・)
「でも、それを増幅することが出来るんだって!・・・・・増幅って分かる?」
「ん~・・・・・何となく・・・・・」
あまり分かっていなさそうに見えたので、
「スサノオ様の力を何倍かにする力があるんだって。」
「あ~!そういうことね。」
「ふ~・・・・・わかったようね・・・・・」
「じゃあ、一緒に探したほうが良いって事だな。」
「うん・・・そうなんだけど・・・・・」
「何やらさっきから、こう・・・こそばったいんだけど・・・・・何?」
「!!」
貴子はちょっと顔を赤らめて、
「触れていなきゃいけないんだって・・・・・あんたと私。」
「あっ、そう・・・・・・・えっ?」
「手を繋ぐなり、腕を組むなり・・・・・」
「ば・・・・・馬鹿だなぁ!!・・・・・・・そんなハレンチな!!!」
「ハレンチってあんた・・・・・」
「まぁ、それで歩くというよりは、どっか人が多いところでベンチにでも座って・・・・・こう・・・こっそり手を繋いで・・・・・ね?」
「あ・・・・あぁ・・・・・貴子が良いなら・・・俺は良いけど!!」
そう言いながらもちょっとそんな状況を想像して、太一も頬を赤らめた。
「大丈夫・・・・・美智子には内緒にして、普段来ないようなとこで探せば・・・・・」
貴子は校庭のどこかを見ながらポツリと言った。
太一もふと校庭を見ると、すぐ窓の向こうを友達数人と喋りながら帰宅していく美智子と目が合った。
だが、美智子はすぐに友達のほうへ目をやって、それきり太一を見る事はなかった。
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