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本編
思わぬ提案
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「どうだろう?・・・・・・貴子は来るかな?」
(大丈夫)
「でも・・・・・きっと本人は分かってないよな?」
太一の脳裏に、あのきょとんとした表情の貴子が浮かんだ。
(仮に本人が寝ていたとしても、どうやら操れるみたいだから大丈夫だよ)
「それも、どうかな・・・・・・」
太一は、貴子が来るか、と言うことよりも本当は貴子自身のことを心配していた。
「あれから大丈夫だったかなぁ?」
(そうだね)
「それに・・・・・来たら来たでどう説明するかな~」
太一は少し頭をかきむしった。
(すぐに太一が取り込んでくれればいいよ)
「取り込む?」
(そう。僕みたいに)
「俺ん中に、更に入るの?」
(もう一人見つかるまではね)
「更に栄養吸われちゃうんか?」
(チカラを使わなければ大丈夫だよ。・・・・・普段、そんなに感じないだろう?)
「まぁ、腹減ってんのは今まで通りだけど・・・」
(大丈夫だって)
「でも、取り入れるって、どうやって・・・・・あぁ・・耳からか!」
(う~ん・・・・・もしかすると自力でこちらに来れないかもしれないなぁ・・・・・)
「そうなの?」
(うん・・・・まぁ、その時は吸い込めばいいから)
「吸い込む?」
(うん、口で)
「口!?」
(???)
「口って・・・・・口移しってこと?」
(うん、そうだよ)
「いや~、それはダメだな。」
(どうして?)
「お前ねぇ・・・・・それはキスって言って・・・・・」
(恋人同士が愛を確かめ合うってやつ!)
「分かってるんじゃん!!」
(でも、母親が赤ちゃんに食べ物をあげる時にもするよね?)
「それは、赤ん坊側にはまだ感情がないから。」
(操ってるうちは感情がないから一緒じゃない?)
「いやいや・・・・・ほら・・・・・こっちに来た瞬間に・・・貴子は戻るんだろ?」
(あ~・・・・・・・・・・・・そうだね)
「ダメじゃん!!・・・・・っていうか、俺だってダメだよ!!」
(どうして?)
「そんな事・・・・・・・・分かってもいない貴子にするのはイヤだ!」
(じゃあ、理解してもらえばいいね?)
「何を?」
(この状況を)
「どうやって?」
(う~ん・・・・・何か・・・うまいこと言って・・・・・)
「理解出来んのかなぁ?」
(例えばさぁ・・・・・君の中に入っている・・・・・妖精・・・そう!妖精を取り出してあげる!・・・みたいな?)
「妖精?!」
(そう。宇宙人って言ったって、無理だろう?)
「そうだな。」
(ん・・・・・・・・多分・・・・・・・近付いてきてる)
「えっ?」
社務所の方から懐中電灯の明かりがチラチラと地面を照らしながら近付いてくるのが分かった。
太一は境内から立ち上がるとそちらの方を確認した。
間もなく懐中電灯を持って部屋着のようなスウェット姿の貴子が現れた。
「お~!わり~ね。」
太一は、そう言った割には別段悪ぶった素振りはしていない。
「・・・・・」
貴子は少し睨んだように太一を見ると、とりあえずそのまま前を通り過ぎて境内に座った。
太一も、
「こんな時間にごめんな。」
と言いながら横に座った。
ハァ~、と大きな溜息をつくと、
「一応、状況は分かった・・・・・」
とまっすぐ前を向いたまま話し始めた。
「そ、そう?」
「うん。」
貴子は頷いた。
「え~と・・・・・どんな風に?」
太一が尋ねると、貴子は勢いよく太一の方へ身体を向けて、
「私の中にいる神様が説明してくれたけど、あんたの中にスサノオ様が待っているって!」
「神様?」
「そう・・・・・私の中の・・・オオワタツミ様が~~~~~~~~~」
「・・・・・」
物凄い剣幕で何やら5分ほど、神様がどうのこうのと話し始めた。
(神様ってことにしたのか・・・なるほど)
太一はかなりチンプンカンプンだったが、妖精ではなく神様という表現で説明されたんだな、ということは理解できた。
「それで・・・今回100年ぶりにこの地を巡回されて、何か毒気に当てられて体調を崩されて、そのままだと展開に戻れないから、とりあえず通りかかったこの神社で、たまたま霊感の強い私の中で休養されていたのは有難い事だけど・・・・・何であんたにスサノオ様が?」
(かなりパニックになってるようだね)
「いや~。」
「っていうか、あんたが毒気じゃないの?」
「は?!」
「あんたの中に入って良い訳がない気がする!」
「いや・・・・・神のお告げだろ?」
「お告げと言うか、お願いされたけど・・・・・」
「じゃあ、いいじゃん。」
「でも・・・・・」
急に小さな声になったかと思うと貴子は顔を真っ赤にしながら言った。
「口移しって・・・・・」
(あぁ、やっぱりそうなるか・・・・・)
少し間があったが、
「でも、どうやらもう一人、ハヤタマオ様も迷子になってるって事じゃない?」
貴子がちょっと目を大きくしながら太一に向かって言った。
(あぁ、そんな設定になったんだ)
「そう・・・・・・ね。」
太一はちょっと上半身を後ろに逸らしながら言った。
「なら、とりあえず二手に分かれて探す方が早いんじゃない?」
「二手!?」
「どうやら私の中のオオワタツミ様も多少の神通力は戻ってきたみたいだから、私でも探せるみたいだし。」
「そうなのか?」
太一が尋ねると、
(そうだね・・・・・それも手かもしれない)
「そうなのか?」
今度は少し落ち着いた口調で言った。
(どのみちみんな集まらないと太一の望みを叶える事は出来ないから・・・・・それなら人海戦術で・・・っていっても二人だけどね・・・・・そうやって探した方がいいかも)
「じんかいなんちゃら?」
「??スサノオ様と話してるの?」
貴子が太一の肩をポンと叩きながら言った。
「あ、あぁ。」
「じゃあ・・・・・私もオオワタツミ様に代わるから、あんたもスサノオ様に代わったら?その方が早くない?」
「え~、やだよこいつに・・・・・・・ん・・・・・」
太一は急に自分の意志で体が動かなくなった。
「あ~・・・・・オオワタツミくん?」
静かな口調で言った。
顔つきも、目が少し釣りあがって、知性があるような雰囲気になった。
(こら~!!急に勝手に変わりやがって!!!)
太一は中で激怒して騒いでいた。
貴子もすっと俯いて、次に顔を上げると普段の少しつり目な目元が垂れて穏やかな顔つきになっていた。
「え~と・・・・・スサノオ様・・・・・申し訳ありません。」
「うん、まぁ、いいんじゃないかな、それでも。」
「はい。」
「先に説明しておいてくれて助かったよ。」
「さすがにあぁなっては何も言わないわけにはいかないと思いまして。」
「そうだろうなぁ。」
「ただ、あの時は意識まで奪ってしまったのですが、本来は本人も分かっていますし・・・・・そういう約束をしましたので・・・・・」
「そうだね。今後は納得の上で使わせてもらわなくちゃね。」
「はい。」
「え~と、そしたら・・・・・」
「済みません・・・具体的な計画はまた後ほどにして、早く戻らないと面倒になりますので。」
「そうなのか?」
「えぇ。こっそり家を抜け出してきているものですから・・・」
「そうか・・・・・でも・・・・・」
太一になったスサノオは、
<※面倒なので今後はスサノオ、オオワタツミと呼ぶことにして:作者より>
そっと貴子になったオオワタツミの手を取った。
(おい!!こら!!勝手に何してやがる!!)
(ちょっと~!!あっ・・・・・申し訳ありませんが・・・・・って、私の身体でこんな能天気馬鹿に触られないで下さいっ!!)
「実体で触れ合うのは・・・・・不思議な感じだね。」
「えぇ、私もそう思っていました。」
貴子、いやオオワタツミもそう言って、太一、いやスサノオの手をキュッと握った。
(あ~!!何言ってんだ~!!こら!!用事は終わったんだから、戻れ!!こら!!すぐ戻れ!!)
(も~~~~!!やめてくださいってば~!!!!)
そして、そっとオオワタツミがスサノオの肩に寄りかかったところで、
「あ~!!!」
「きゃあ~!!!」
と二人は自分に戻り、境内から飛び跳ねるように立ち上がり、離れた。
(じゃあ、後はよろしく~)
「何がよろしくだ!!」
(それでは、おやすみなさい)
「おやすみなさい、って!!」
太一と貴子は互いを見て、ハァ~と溜息をついた。
「じゃあ、明日な。」
「そうね・・・・・それじゃあ。」
二人はそれぞれ境内を後にした。
(大丈夫)
「でも・・・・・きっと本人は分かってないよな?」
太一の脳裏に、あのきょとんとした表情の貴子が浮かんだ。
(仮に本人が寝ていたとしても、どうやら操れるみたいだから大丈夫だよ)
「それも、どうかな・・・・・・」
太一は、貴子が来るか、と言うことよりも本当は貴子自身のことを心配していた。
「あれから大丈夫だったかなぁ?」
(そうだね)
「それに・・・・・来たら来たでどう説明するかな~」
太一は少し頭をかきむしった。
(すぐに太一が取り込んでくれればいいよ)
「取り込む?」
(そう。僕みたいに)
「俺ん中に、更に入るの?」
(もう一人見つかるまではね)
「更に栄養吸われちゃうんか?」
(チカラを使わなければ大丈夫だよ。・・・・・普段、そんなに感じないだろう?)
「まぁ、腹減ってんのは今まで通りだけど・・・」
(大丈夫だって)
「でも、取り入れるって、どうやって・・・・・あぁ・・耳からか!」
(う~ん・・・・・もしかすると自力でこちらに来れないかもしれないなぁ・・・・・)
「そうなの?」
(うん・・・・まぁ、その時は吸い込めばいいから)
「吸い込む?」
(うん、口で)
「口!?」
(???)
「口って・・・・・口移しってこと?」
(うん、そうだよ)
「いや~、それはダメだな。」
(どうして?)
「お前ねぇ・・・・・それはキスって言って・・・・・」
(恋人同士が愛を確かめ合うってやつ!)
「分かってるんじゃん!!」
(でも、母親が赤ちゃんに食べ物をあげる時にもするよね?)
「それは、赤ん坊側にはまだ感情がないから。」
(操ってるうちは感情がないから一緒じゃない?)
「いやいや・・・・・ほら・・・・・こっちに来た瞬間に・・・貴子は戻るんだろ?」
(あ~・・・・・・・・・・・・そうだね)
「ダメじゃん!!・・・・・っていうか、俺だってダメだよ!!」
(どうして?)
「そんな事・・・・・・・・分かってもいない貴子にするのはイヤだ!」
(じゃあ、理解してもらえばいいね?)
「何を?」
(この状況を)
「どうやって?」
(う~ん・・・・・何か・・・うまいこと言って・・・・・)
「理解出来んのかなぁ?」
(例えばさぁ・・・・・君の中に入っている・・・・・妖精・・・そう!妖精を取り出してあげる!・・・みたいな?)
「妖精?!」
(そう。宇宙人って言ったって、無理だろう?)
「そうだな。」
(ん・・・・・・・・多分・・・・・・・近付いてきてる)
「えっ?」
社務所の方から懐中電灯の明かりがチラチラと地面を照らしながら近付いてくるのが分かった。
太一は境内から立ち上がるとそちらの方を確認した。
間もなく懐中電灯を持って部屋着のようなスウェット姿の貴子が現れた。
「お~!わり~ね。」
太一は、そう言った割には別段悪ぶった素振りはしていない。
「・・・・・」
貴子は少し睨んだように太一を見ると、とりあえずそのまま前を通り過ぎて境内に座った。
太一も、
「こんな時間にごめんな。」
と言いながら横に座った。
ハァ~、と大きな溜息をつくと、
「一応、状況は分かった・・・・・」
とまっすぐ前を向いたまま話し始めた。
「そ、そう?」
「うん。」
貴子は頷いた。
「え~と・・・・・どんな風に?」
太一が尋ねると、貴子は勢いよく太一の方へ身体を向けて、
「私の中にいる神様が説明してくれたけど、あんたの中にスサノオ様が待っているって!」
「神様?」
「そう・・・・・私の中の・・・オオワタツミ様が~~~~~~~~~」
「・・・・・」
物凄い剣幕で何やら5分ほど、神様がどうのこうのと話し始めた。
(神様ってことにしたのか・・・なるほど)
太一はかなりチンプンカンプンだったが、妖精ではなく神様という表現で説明されたんだな、ということは理解できた。
「それで・・・今回100年ぶりにこの地を巡回されて、何か毒気に当てられて体調を崩されて、そのままだと展開に戻れないから、とりあえず通りかかったこの神社で、たまたま霊感の強い私の中で休養されていたのは有難い事だけど・・・・・何であんたにスサノオ様が?」
(かなりパニックになってるようだね)
「いや~。」
「っていうか、あんたが毒気じゃないの?」
「は?!」
「あんたの中に入って良い訳がない気がする!」
「いや・・・・・神のお告げだろ?」
「お告げと言うか、お願いされたけど・・・・・」
「じゃあ、いいじゃん。」
「でも・・・・・」
急に小さな声になったかと思うと貴子は顔を真っ赤にしながら言った。
「口移しって・・・・・」
(あぁ、やっぱりそうなるか・・・・・)
少し間があったが、
「でも、どうやらもう一人、ハヤタマオ様も迷子になってるって事じゃない?」
貴子がちょっと目を大きくしながら太一に向かって言った。
(あぁ、そんな設定になったんだ)
「そう・・・・・・ね。」
太一はちょっと上半身を後ろに逸らしながら言った。
「なら、とりあえず二手に分かれて探す方が早いんじゃない?」
「二手!?」
「どうやら私の中のオオワタツミ様も多少の神通力は戻ってきたみたいだから、私でも探せるみたいだし。」
「そうなのか?」
太一が尋ねると、
(そうだね・・・・・それも手かもしれない)
「そうなのか?」
今度は少し落ち着いた口調で言った。
(どのみちみんな集まらないと太一の望みを叶える事は出来ないから・・・・・それなら人海戦術で・・・っていっても二人だけどね・・・・・そうやって探した方がいいかも)
「じんかいなんちゃら?」
「??スサノオ様と話してるの?」
貴子が太一の肩をポンと叩きながら言った。
「あ、あぁ。」
「じゃあ・・・・・私もオオワタツミ様に代わるから、あんたもスサノオ様に代わったら?その方が早くない?」
「え~、やだよこいつに・・・・・・・ん・・・・・」
太一は急に自分の意志で体が動かなくなった。
「あ~・・・・・オオワタツミくん?」
静かな口調で言った。
顔つきも、目が少し釣りあがって、知性があるような雰囲気になった。
(こら~!!急に勝手に変わりやがって!!!)
太一は中で激怒して騒いでいた。
貴子もすっと俯いて、次に顔を上げると普段の少しつり目な目元が垂れて穏やかな顔つきになっていた。
「え~と・・・・・スサノオ様・・・・・申し訳ありません。」
「うん、まぁ、いいんじゃないかな、それでも。」
「はい。」
「先に説明しておいてくれて助かったよ。」
「さすがにあぁなっては何も言わないわけにはいかないと思いまして。」
「そうだろうなぁ。」
「ただ、あの時は意識まで奪ってしまったのですが、本来は本人も分かっていますし・・・・・そういう約束をしましたので・・・・・」
「そうだね。今後は納得の上で使わせてもらわなくちゃね。」
「はい。」
「え~と、そしたら・・・・・」
「済みません・・・具体的な計画はまた後ほどにして、早く戻らないと面倒になりますので。」
「そうなのか?」
「えぇ。こっそり家を抜け出してきているものですから・・・」
「そうか・・・・・でも・・・・・」
太一になったスサノオは、
<※面倒なので今後はスサノオ、オオワタツミと呼ぶことにして:作者より>
そっと貴子になったオオワタツミの手を取った。
(おい!!こら!!勝手に何してやがる!!)
(ちょっと~!!あっ・・・・・申し訳ありませんが・・・・・って、私の身体でこんな能天気馬鹿に触られないで下さいっ!!)
「実体で触れ合うのは・・・・・不思議な感じだね。」
「えぇ、私もそう思っていました。」
貴子、いやオオワタツミもそう言って、太一、いやスサノオの手をキュッと握った。
(あ~!!何言ってんだ~!!こら!!用事は終わったんだから、戻れ!!こら!!すぐ戻れ!!)
(も~~~~!!やめてくださいってば~!!!!)
そして、そっとオオワタツミがスサノオの肩に寄りかかったところで、
「あ~!!!」
「きゃあ~!!!」
と二人は自分に戻り、境内から飛び跳ねるように立ち上がり、離れた。
(じゃあ、後はよろしく~)
「何がよろしくだ!!」
(それでは、おやすみなさい)
「おやすみなさい、って!!」
太一と貴子は互いを見て、ハァ~と溜息をついた。
「じゃあ、明日な。」
「そうね・・・・・それじゃあ。」
二人はそれぞれ境内を後にした。
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