静寂の星

naomikoryo

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第6章:最後の選択

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船の中には、もはや三人しか残っていなかった。

グラント、リサ、ノア。

サミュエルが消え、イーサンも姿を消した。

争った痕跡はない。
悲鳴すら聞こえなかった。
彼らはただ、存在そのものを消された のだ。

そして、クルーたちは気づいた。

「この星は“沈黙を守る”ために、我々を消している。」

この惑星は、生き物の存在すら許さない。
ただ静寂だけが支配する。
何者も声を発さず、何者も音を立てない世界──。

「……ここにいたら、次は俺たちの番だ。」

グラントはそう言い、二人を見つめた。

「沈黙の中心を探るぞ。」

静寂の中心へ
ノアのスキャナーは、惑星の中心部に奇妙なエネルギー反応を検出していた。

「この方向に向かえば、何かわかるかもしれない。」

リサは眉をひそめる。

「でも、危険じゃない? もし、そこがこの星の“静寂を作り出している源”だったら……」

「それを確認しなければ、俺たちはここから出られない。」

グラントの言葉に、リサは黙ったまま頷いた。

三人は慎重に進んだ。

青白い植物が広がる静寂の大地。
空はどこまでも暗く、雲ひとつない。
風は吹かず、足音すらほとんど聞こえない。

まるで、時間が止まってしまったかのような世界。

やがて、彼らは奇妙な場所へと辿り着いた。

それは、まるで巨大なクレーターのようだった。
直径100メートルほどの円形の窪地。
その中心には、不気味な黒い穴がぽっかりと口を開けていた。

「……何だ、ここは?」

ノアがスキャナーを確認する。

「ここが……沈黙の中心だ。」

彼の声は震えていた。

「エネルギー反応が異常な数値を示している。まるで、ここだけ“世界が違う”みたいだ。」

グラントは慎重に黒い穴へと歩み寄った。

近づくにつれ、奇妙な感覚が襲ってくる。

耳鳴りのようなものが聞こえる。

──ザーッ……

「……!」

グラントは思わず後ずさった。

「今、何か聞こえたか?」

「……ああ。」

リサも青ざめている。

ノアは録音機を確認し、震える指で再生ボタンを押した。

──ザー……イーサ……ン……

「……!!!」

彼らは息を呑んだ。

それは、確かにイーサンの声だった。

「たすけ……て……」

「イーサン!!」

リサが叫んだ。

彼女は反射的に穴の縁まで駆け寄る。

「イーサン! そこにいるの!?」

しかし──

音はそこで、完全に途絶えた。

まるで、彼らの叫びが穴の中に吸い込まれるかのように。

沈黙だけが、広がっていた。

静寂の正体
「……ここは何なんだ?」

ノアが震える声で呟いた。

グラントは深く息を吸い込み、考えを巡らせた。

「この星の沈黙の源が、ここにある。」

「それだけじゃない。」

ノアが唇を噛みしめた。

「イーサンの声が聞こえた。つまり、彼は“ここにいる”んだ。」

リサが絶望的な表情を浮かべる。

「そんな……まさか……」

「この星は、音を消すだけじゃない。」

ノアが真実に気づいた顔をする。

「この星は“音を吸収する”んじゃない。“存在そのものを音とともに取り込む”んだ。」

「……!」

「イーサンやサミュエルは、この星に取り込まれたんだ。」

静寂が落ちる。

彼らは気づいてしまった。

この星は、
「静寂を守るために存在を奪う」。

存在することとは、つまり「音を発すること」。
その音が完全に消えた時、人はこの星に吸収され、二度と戻ることはできない。

“沈黙に取り込まれた”のだ。

最後の選択
「……この穴の中に、イーサンたちはいるのか?」

グラントが低く呟く。

「理論的には、そうだ。でも、取り戻せる保証はない。」

ノアは顔を曇らせた。

「もしかすると、もう彼らの“存在”すら消えているかもしれない。」

「だったら、どうすればいい?」

「わからない……だが、一つだけ確かなことがある。」

ノアはゆっくりと、静寂の穴を見つめた。

「この星は、音を発する者を許さない。でも、逆に言えば──」

彼は震えながら言った。

「星よりも強い音を作り出せば、この星を“上書き”できるかもしれない。」

リサは息を呑んだ。

「そんなこと……可能なの?」

「俺たちの船のエンジンには、まだ僅かにエネルギーが残っている。仮にそれを使って“爆音”を作り出せば──この星の静寂を破れるかもしれない。」

「……!」

グラントは険しい表情をした。

「だが、それは危険すぎる。もし、星の“意思”が反応したら……俺たちも消される。」

「……そうだな。」

ノアは覚悟を決めた顔で言った。

「でも、何もしなければ俺たちも消える。」

「選択肢は二つしかない。」

「静かにして、この星に飲み込まれるか。」
「音を作り、最後まで抗うか。」

「俺は、戦う。」

グラントは拳を握りしめた。

「この星の静寂に負けるつもりはない。」

リサとノアは、静かに頷いた。

「……やるしかないわね。」

三人は決断した。

沈黙に抗い、最後の音を響かせる。

次の瞬間、星の大気が微かに震えた。

──まるで、惑星そのものが彼らの決断を察知したかのように。

「……私たちを飲み込ませはしない。」

彼らは静寂の中心へと戻り、
最後の戦いに挑む。

すべてを破壊し、沈黙を打ち砕くために。
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