瑞樹と桜子:新婚隣人の恋バナ対決

naomikoryo

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第2章:戦いの再燃

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 「それじゃあ、どっちがいい恋してたか、勝負ね!」

 瑞希はテーブルに肘をつきながら、楽しそうに桜子を見つめた。
その目は、高校時代の試験前に「今回は負けないから!」と宣戦布告していた頃とまったく変わらない。

 桜子は、ふっと息を吐きながら湯気の立つカップを持ち上げた。
「恋愛を勝ち負けで語るのもどうかと思うけど……
 まあ、瑞希がそう言うなら付き合ってあげる」

「いいねぇ、余裕のあるふりして。
 でも、どうせ負けず嫌いなんでしょ?」

「それはそっちでしょ」

 二人はくすくすと笑い合う。
 昔からこうだった。
 お互いに「私は負けず嫌いじゃない」と言いながら、いつの間にか勝負の流れになってしまう。
 そして今回のテーマは「恋愛」。

「じゃあ、ルール決めよっか」

「ルール?」

「そう! 
 ただ恋愛話をするだけじゃつまらないし、ちゃんと条件をそろえないとフェアじゃないでしょ?」

 瑞希は指を立てながら、いかにも「私にいいアイデアがあるのよ」と言わんばかりに続けた。

「まず、話すのは過去の恋愛限定! 
 旦那の話は最後にとっておくこと」

「まぁ、それは当然だよね」

「それと、順番を交互にする! 
 例えば、私が『初恋』の話をしたら、次は桜子が『初恋』の話をする。
 共通点があるかどうか、比べられる方が面白いから」

「なるほど。
 まぁ、それならフェアかもね」

「でしょ?」

 瑞希は満足げに頷きながら、さらにもう一つ指を立てた。

「最後に、それぞれの話を聞いた後、お互いに評価するっていうのはどう?」

「評価?」

「どっちが『よりドラマチックだったか』『よりキュンとしたか』『より笑えたか』を総合的に評価するの!」

「……ちょっと待って、それ完全に主観じゃない?」

「いいのいいの! 
 楽しければそれでよし!」

「……まったく」

 桜子は呆れながらも、瑞希の楽しそうな様子につられて口元がほころぶ。
これだから彼女とは長年張り合ってしまうのだ。
理屈では「くだらない」と思っても、結局は面白そうだから乗ってしまう。

「じゃあ、まずはどのテーマから話す?」

「うーん、やっぱり恋愛話の基本は『初恋』じゃない?」

「……あー、初恋ねぇ」

 桜子はカップを持ち上げながら、遠い記憶を辿るように目を細めた。

「そういう瑞希は、初恋っていつだったの?」

「それはね……
 ふふ、次の章のお楽しみ!」

「ええっ、そこまで煽る?」

「もちろん! 
 だって、この勝負、負ける気しないもん」

 瑞希の自信満々な笑顔を見て、桜子は少しだけ対抗心を燃やす。

「……じゃあ、私も本気出さないとね」

 こうして、新婚隣人同士の恋バナ対決は、正式に幕を開けた。

 次のテーマは「初恋」。

 二人の思い出が、今、再び語られようとしている——。
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