年上の許嫁女教師は大胆な帰国子女

naomikoryo

文字の大きさ
上 下
14 / 52

カラオケボックスにて②

しおりを挟む
カラオケボックスに着くと、早速歌う順番をじゃんけんで決めることになった。
賑やかな雰囲気の中で、みんなが盛り上がっている。
勝った者たちが嬉しそうに次々に歌い始める中、優愛が言った。
「私と亨は最後でいいから、ドリンク取って来るね。」
そう言いながら、優愛に腕を絡まれ部屋を出た。
「OK!」
と周りから承諾の声が上がり、少し冷やかしの声も聞こえた。
だが、いつものことなので気にせずに、店内の入り口近くにあるドリンクコーナーへと向かう。

優愛はお決まりのジャスミンティーをグラスに並々と入れ、
「亨はペプシ?」
と尋ねてきた。
「あ~、う、うん…」
僕はグラスを持ちながら何にしようか迷っていた。
優愛は素早く僕のグラスを取り上げ、ペプシをこれまた並々に注いでくれた。

「こぼさないようにゆっくり行きましょう。」
優愛が笑顔で微笑むので、
「ありがとう。」
と返した。
誰かが後ろで僕たちのやりとりを見ながら、
「尊い…」
と囁き合っていた。
しかし、僕はその言葉に気づかず、戻る準備をしていた。

優愛がゆっくりと先に部屋に入り、僕は後ろからその姿を追おうとした。
その時、隣の部屋から大絶叫の若い女性の歌声が聞こえてきた。
「なんだ!
…物凄く上手いな…」
ちょっと気になって隣の部屋を廊下の窓越しにこっそりと覗き込んだ。

その瞬間、
「!!」
と驚くべき光景が目に飛び込んできた。
複数の人が手拍子をする中、真ん中でマイク片手に熱唱モードで歌っているのは…
美咲だった。
彼女の歌声は力強く、まるでプロの歌手のように響き渡っていた。

僕はその様子に見入ってしまった。
美咲の自信に満ちた姿、そして彼女の表情は楽しそうで、周囲の人たちを惹きつけている。
思わず
「すごい…」
と呟いてしまう。
彼女の歌に心を奪われている自分に気づく。

美咲が歌い終えると、隣の部屋から拍手が起こり、僕たちはその拍手の音に釘付けになった。
彼女の姿は、僕の心の中にまた新たな感情を芽生えさせていた。
美咲が自分に何を思っているのか、優愛の存在がどう影響するのか、思いを巡らせながら部屋に戻った。

部屋では、仲間たちが隣の部屋に負けないように盛り上がろうと、次々に歌を選んでいく。
みんなの元気な声と笑い声が響き渡り、僕もその雰囲気に巻き込まれていた。
いよいよ僕の番になったので、何か盛り上がるような曲を、と思ったが出て来ない。
すると、優愛が
「あれ、歌ってよ。」
とちょっと古めだけど、僕が一番気に入っている静かなバラード曲をリクエストしてきた。
周りの盛り上がりに対して少しどうかな、と思ったが他に思い当たらないのでそれにした。

僕がマイクを持って歌い始めると、優愛は仲間たちを静かにさせ、僕の横に寄り添った。
あまり人前で歌うのに慣れていない僕だけど、彼女の存在がとっても心強い支えとなる。
僕の声が部屋に響き渡ると、仲間たちは静かに耳を傾けてくれている。
「尊い…」
小さくそんな声が聞こえてきた。



歌い終わる頃、僕は少し疲れを感じながらも達成感を味わっていた。
その瞬間、友達の一人が入口で何かに気づいた。
「ちょっと待って、あの女性、すごい形相でこっちを見てる!」
と、誰かが指差す。

僕もその方向を見たが、すぐに視界から消えた女性に気づく。
「何だろうね?」
と不思議がる優愛を横目に、
「美咲ではないか」
と直感する。

「ドリンク取ってくる。」
と部屋を出ると、心の中で美咲のことを考えながらドリンクコーナーへ向かう。
しかし、ドリンクを取る前に、トイレから慌てた様子の美咲が出てきた。
彼女は目元が少し腫れており、まるで涙を流した後のようだった。

「あら、こんなところで会うなんて!」
と美咲は何でもないかのように言ったが、その笑顔の裏に隠された感情を感じ取った。
美咲は顔を洗ってきたのか、ハンカチで目元を拭きながら微笑んでいた。

「美咲先生も来てたんだね?」
と僕も、今知った振りをして会話をつなげた。
「ええ、私の歓迎会だからね。
先生たちで集まっているの。」
と美咲は答えた。
その瞬間、彼女の目が少し悲しそうに見えるのを感じたが、それを口にすることはできなかった。

「そう、楽しんでるの?」
と尋ねると、美咲は少し困ったように笑った。
「まぁまぁね。
でも、みんなが楽しそうなのは聞こえてくるわ。」
「そうだね、みんな盛り上がってたよね。」
笑顔で返したが、心の中には少しの不安があった。
美咲の気持ちを知りたいと思いつつも、何を言えばいいのか分からない。
すると、美咲は突然、僕の首元に軽くキスをした。
驚いた僕は、一瞬言葉を失った。

「浮気はダメだからね!」
と、美咲は笑顔で言い残し、すぐにその場を離れた。
その一瞬に、心臓が大きく跳ねるのを感じ、何が起こったのか整理できなかった。

そのまま部屋に戻ると、優愛たちが待っていた。
「亨、遅いよ!何してたの?」
と優愛が言う。
一瞬固まったが、
「あ…
ちょっとドリンクを取ってた。」
「また、悩んでたんでしょ!」
と優愛は笑いながら言った。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

元生徒会長は突然生徒会室に現れ明日転校すると告げる

陸沢宝史
恋愛
生徒会副会長の俊彰は昼休み生徒会室に一人で作業をしていた。そこに元生徒会長の司之が現れる。俊彰は司之には色々と世話になっていた。その司之から唐突に明日転校すると言われ俊彰は動揺してしまう。

男性向け(女声)シチュエーションボイス台本

しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。 関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください ご自由にお使いください。 イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

処理中です...