年上の許嫁女教師は大胆な帰国子女

真赤なポルシェ

亨は朝ご飯を食べ始めた。
トーストを頬張りながら、昨日の出来事を思い出し、心がドキドキしていた。
美咲が隣のテーブルでしばらく満足げに彼を見つめていた。
その視線に気づくと、ドキッとしながらも自然に笑顔を返す。

しかし、何かを考えているのか、美咲は少し拗ねた表情を浮かべながら、
「仕方ない、今日は一人で行くわ。」
と呟いた。
彼女の声には、ほんの少しの寂しさが滲んでいた。
僕は思わず申し訳なさそうに見つめ返す。

「ごめん、でも先生と生徒じゃ、兄弟でもなけりゃ何言われるか…」
と言い訳をする。
「私は別にいいけどね。」
何が、と聞きたくなるような返しをしてくる。
クラスの男連中にばれたらどうなるのか考えると、冷や汗がにじんできた。
美咲も確かにそうね、としぶしぶ納得したように頷いた。

「じゃあ、学校でね。」
彼女は少し残念そうに言い、食器を下げる。
その背中を見ると、心の中に少しの寂しさが広がった。
美咲が家を出て行くと、彼女の香りが部屋に残り、心の中が温かくなる。

ドアが閉まる音がして、静かな朝の空気が戻った。
しかし、僕は美咲との距離が少し遠くなったような気がしてならなかった。
彼女との特別な瞬間が消えてしまったようで、心にぽっかりと穴が空いたような感覚を覚える。

ブロロロロ～
美咲が出て行ってすぐのことだった。
突然、爆音ともいえる音が聞こえてきた。
「何の音だ？」
と慌てて玄関を出てみる。
目の前には、家の駐車場に停めてあった真っ赤なオープンカータイプのポルシェが目に飛び込んできた。

美咲がその車に乗り込み、少し大きめのサングラスをかけ、髪を後ろ手に結んでいた。
彼女の姿はまるで映画のワンシーンのようで、思わず息を呑む。
「チャオ！」と僕に声をかけながら、彼女はそのまま車を走り出した。

僕はその光景に驚き、心がざわついた。
「あんなのに乗って一緒には絶対に行けない…」
と、思わず呟く。
ポルシェの鮮やかな赤色はまるで美咲の個性そのもので、まるで彼女の魅力を際立たせているようだった。

ドキドキしながらも、彼女の姿が遠くなっていくのを見送り、心の中に不安が広がる。
美咲との関係がどんどん特別になっていく一方で、彼女のスタイルには自分が合わないのではないかという恐れが生まれていた。
普段の自分とのギャップが大きすぎて、どう接したらいいのか分からない。

そのままポルシェが姿を消すと、静けさが戻り、大輔は玄関の前で立ち尽くしていた。
彼女の明るい笑顔や、あの楽しそうな声が頭の中で回り続ける。
もう一度彼女に会える日を楽しみにしながら、自分を奮い立たせる必要があると感じていた。