年上の許嫁女教師は大胆な帰国子女

電車からの解放

駅を三つ通り過ぎると、ようやく高校の駅が見えてきた。
アナウンスが流れ、
「次は明進高校前～、明進高校前で～す。
お降りの方は～、左側ドアになりま～す。」
と告げられた瞬間、僕の心はざわつき始めた。
もうすぐ彼女と別れてしまうのかと思うと、名残惜しさが胸を締め付ける。
今まで見ていた彼女の笑顔が、まるで夢のように思えてきた。

「出口へ向かいます！」
と力を振り絞って振り返り気持ち大声を出しながら、必死に進もうとするが、満員の車両の中で身動きが取れない。
体が押し込まれ、周囲の人々に埋もれていく。
「で、で、出口へ…」
心臓が高鳴り、周りの雑音がぼやける中で、彼女の笑顔が脳裏に焼き付いて離れない。

駅に着くと、たくさんの乗客が降り始め、僕もその流れに乗って一緒に降りることができた。
息を整えながら改札を出ると、冷たい空気が心地よく感じた。
改札を出た瞬間、周囲の騒がしさが薄れ、僕の心は少しだけ落ち着きを取り戻す。

自転車置き場へ向かう道すがら、心の中で彼女のことを思い描いていた。
「彼女はどこに向かうのだろう？
明日もこの電車に乗っているのだろうか。」
そんなことを考えながら、ふと周囲に視線を配ると、タクシー乗り場で目を引く光景が目に飛び込んできた。

あの美しいお姉さんが、タクシーに乗り込もうとしている。
思わず足が止まり、心臓が再び高鳴る。
彼女の姿が、周囲の喧騒の中でまるで光り輝く星のように見えた。
さらに、彼女は振り返り、僕に向かって再びウインクをしてきた。
その瞬間、驚きと興奮で体が硬直する。

「えっ、またウインクしてる？」
心の中で叫びそうになるが、身体はまるで動かない。
目の前を歩く人にぶつかりそうになり、慌てて顔を背ける。
彼女の視線が胸を掴むように、僕は彼女を見つめ続けた。
彼女は何を考えているのだろう。
なぜ、こんなに僕に意識を向けてくれるのか。

タクシーのドアが閉まる瞬間、僕の頭の中は混乱していた。
彼女と僕の距離がどれだけ近いか、それを感じることができた。
まるで、何か特別な運命のようなものを感じた。
彼女がタクシーに乗り込んでしまった後も、その姿が頭から離れない。

心臓が高鳴り、彼女のウインクが頭の中で何度も繰り返される。
もしかしたら、また会えるのかもしれないという期待が胸に広がる。
自転車に乗り込み、学校へ向かう道すがら、彼女のことが頭から離れなかった。

学校に着くと、クラスメートたちが集まり、いつもの賑やかな雰囲気が広がっていた。
しかし、僕の心は彼女のことでいっぱいで、周りの声が耳に入ってこない。
授業が始まると、机に向かうも、思考はどこか彼女の姿に飛んでいってしまう。
特に、彼女の優雅な仕草や、無邪気な笑顔が脳裏に焼き付いていた。

「おい、どうした？
なんかボーっとしてるぞ。」
その言葉に、我に返る。
周囲のクラスメートたちが楽しそうに話す中、僕だけが彼女のことで頭がいっぱいで、現実を忘れていた。

「いや、ちょっとね…」
と答えるが、言葉が上手く出てこない。
心の中では
「彼女のことを考えているなんて言えない」
と思いつつも、友達の視線が気になる。
さらに、彼女が一瞬でも目の前に現れることを期待していた。

昼休みになっていつものように学食に行くと、友達は楽しそうに盛り上がっていた。
「うぃ～す！」
と言いながら、僕もいつもの席に座る。
だが、僕は一人、視線を窓の外に向ける。
たまたま目が合う人々の中に、彼女の姿があるかもしれないと願っていた。
何度も何度もその思いを繰り返すが、現実は甘くない。

昼休みも終わり、一番けだるい時間が訪れた。
眠気が究極に襲ってくる。
「朝までスマホゲームやってたんだろう？」
そう言われた隣りの友達はすでに居眠りを決め込んでいる。