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昔の約束
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美咲との再会は、まるで運命の巡り合わせのようだ、と思っていたがどうやら違ったようだ。
実は彼女は幼馴染で、隣に住んでいたこともあったが、小学校を卒業と同時にアメリカに引っ越してしまった。
家族で渡ったアメリカでは、彼女は優秀で、飛び級で大学も卒業してしまったという。
ついでに英語だけでなく、数学と体育の教育免許も取得したと聞き、驚きを隠せない。
母親から言うには、先日彼女が
「またあの街へ帰る」
と言って日本に戻ってきたらしい。
僕、里崎亨(さとざきとおる)の母親は、美咲の両親と連絡を取り続けていたようで、亨の祖母が管理人をしているアパートの部屋を借りたとのことだった。
アパートは古ぼけているが、美咲はその雰囲気に全く気にしない様子で、むしろその男勝りでサバサバとした性格が、そんな場所にぴったりと合っているように感じた。
今日は僕の家で夕食を共にしている。
父親は弁護士で帰りが遅いため、普段は母親と二人の静かな食事だが、今日は美咲がいることで賑やかだった。
美咲がアメリカでの経験や、楽しかった出来事を次々と語る。
その様子を見ていると、自然と僕の緊張もほぐれていく。
彼女の話にはユーモアがあり、時折見せるあどけない笑顔がどれだけ僕の心を癒してくれるのか、言葉にできないほどだった。
「アメリカでは、毎日新しいことに挑戦してたのよ!」
と、美咲が目を輝かせながら話す。
彼女の表情は、まるで過去の思い出を辿るかのようで、胸が温かくなる。
「最初はすごく緊張したけど、今は楽しくて仕方ないの!」
そんな彼女の話を聞きながら、僕は思わず微笑む。
時折、目が合うたびに、ドキドキと心が高鳴る。
彼女が戻ってきたことに感謝し、また一緒に過ごす時間が持てることに心が躍った。
夕食が終わり、彼女が帰る時間になった。
美咲と一緒にアパートの前まで送ることにした。
と言っても、うちからほんの3分ほどのところだけどね。
家を出るとすぐに美咲は僕の腕に絡みついてきた。
(あ、当ってる…)
柔らかい部屋着のすぐ下には、魅惑の膨らみがあるようだ。
僕は気にしないように平然を装い、更に子供の頃の話をした。
懐かしい思い出に話題は尽きない。
それほど、美咲との思い出は鮮明に覚えていた。
祖母のアパートの前は、まるで昼間のように明るかった。
この辺りで犯罪を無くしたいという父の提案から、ソーラーパネルをアパートの屋根に敷き詰め、そこから供給される電気の一部をアパートの周りを一周囲むほどのセンサーライトと各角に設置された防犯カメラに使われている。
「じゃあ、また明日。」
アパートの前に着いたので亨は言った。
名残惜しそうに体を離して、美咲はにっこり微笑んだ。
「約束を果たしてもらいに来たんだからね。」
と言った。
「約束?」
僕が聞き返すと、
「亨は小さかったからもしかすると覚えてないかもしれないけど…」
「?」
僕は首をかしげながら考えてみた。
「まぁ、それは、また、追々とね。」
と言いながら、じっと見つめてきた。
「ずいぶん、カッコ良くなったね。」
「えっ!」
ドギマギしながら眼鏡に触ると、
「まつ毛も長いのね。」
と美咲は言った。
「ちょっと目を瞑ってみて。」
そう言われ、僕は馬鹿正直に、
「こう?」
と目を閉じて見せた。
「うんうん、いいね~。」
と言いながら、何やら頬に感触があった。
美咲の優しい唇が僕の頬に触れたのだ。
「!!!」
その瞬間、心臓が大きく跳ね上がり、言葉を失った。
「じゃあね。
ふふふ。」
と、彼女が手を振りながら階段を昇って行くのを見送りながら、しばらくボーゼンと立ち尽くしていた。
彼女の温もりがまだ頬と左腕に残り、まるで夢のように感じられた。
心の中が高揚し、現実の感覚が薄れていく。
「でも…
美咲がまた戻ってきてくれたなんて…」
と、思わず呟く。
彼女との再会がどれだけ特別なことか、今さらながら実感する。
幼馴染であり、かなり大人になった彼女との関係が、今後どのように発展していくのか、心の中で想像を膨らませる。
自分の部屋に戻ると、心の中で彼女の笑顔が何度も浮かんでは消える。
もちろん、笑顔だけではなくあんな姿やこんな姿も…
「いやいや、不謹慎だな…」
そう呟いてみるものの、性には勝てそうもない。
とにかく、彼女の言った「約束」が気になりながら、ベッドに横たわる。
「あれ?
でも、電車の中で、どうして僕だって分かったんだろう?」
ふとした疑問が浮かんだが、度重なるアクシデントの数々に、亨は気付かないうちに疲れており、あっという間に深い眠りについた。
これからの毎日が、彼女との出会いによってどれだけ素晴らしいものになるのか、期待が膨らむばかりだった。
実は彼女は幼馴染で、隣に住んでいたこともあったが、小学校を卒業と同時にアメリカに引っ越してしまった。
家族で渡ったアメリカでは、彼女は優秀で、飛び級で大学も卒業してしまったという。
ついでに英語だけでなく、数学と体育の教育免許も取得したと聞き、驚きを隠せない。
母親から言うには、先日彼女が
「またあの街へ帰る」
と言って日本に戻ってきたらしい。
僕、里崎亨(さとざきとおる)の母親は、美咲の両親と連絡を取り続けていたようで、亨の祖母が管理人をしているアパートの部屋を借りたとのことだった。
アパートは古ぼけているが、美咲はその雰囲気に全く気にしない様子で、むしろその男勝りでサバサバとした性格が、そんな場所にぴったりと合っているように感じた。
今日は僕の家で夕食を共にしている。
父親は弁護士で帰りが遅いため、普段は母親と二人の静かな食事だが、今日は美咲がいることで賑やかだった。
美咲がアメリカでの経験や、楽しかった出来事を次々と語る。
その様子を見ていると、自然と僕の緊張もほぐれていく。
彼女の話にはユーモアがあり、時折見せるあどけない笑顔がどれだけ僕の心を癒してくれるのか、言葉にできないほどだった。
「アメリカでは、毎日新しいことに挑戦してたのよ!」
と、美咲が目を輝かせながら話す。
彼女の表情は、まるで過去の思い出を辿るかのようで、胸が温かくなる。
「最初はすごく緊張したけど、今は楽しくて仕方ないの!」
そんな彼女の話を聞きながら、僕は思わず微笑む。
時折、目が合うたびに、ドキドキと心が高鳴る。
彼女が戻ってきたことに感謝し、また一緒に過ごす時間が持てることに心が躍った。
夕食が終わり、彼女が帰る時間になった。
美咲と一緒にアパートの前まで送ることにした。
と言っても、うちからほんの3分ほどのところだけどね。
家を出るとすぐに美咲は僕の腕に絡みついてきた。
(あ、当ってる…)
柔らかい部屋着のすぐ下には、魅惑の膨らみがあるようだ。
僕は気にしないように平然を装い、更に子供の頃の話をした。
懐かしい思い出に話題は尽きない。
それほど、美咲との思い出は鮮明に覚えていた。
祖母のアパートの前は、まるで昼間のように明るかった。
この辺りで犯罪を無くしたいという父の提案から、ソーラーパネルをアパートの屋根に敷き詰め、そこから供給される電気の一部をアパートの周りを一周囲むほどのセンサーライトと各角に設置された防犯カメラに使われている。
「じゃあ、また明日。」
アパートの前に着いたので亨は言った。
名残惜しそうに体を離して、美咲はにっこり微笑んだ。
「約束を果たしてもらいに来たんだからね。」
と言った。
「約束?」
僕が聞き返すと、
「亨は小さかったからもしかすると覚えてないかもしれないけど…」
「?」
僕は首をかしげながら考えてみた。
「まぁ、それは、また、追々とね。」
と言いながら、じっと見つめてきた。
「ずいぶん、カッコ良くなったね。」
「えっ!」
ドギマギしながら眼鏡に触ると、
「まつ毛も長いのね。」
と美咲は言った。
「ちょっと目を瞑ってみて。」
そう言われ、僕は馬鹿正直に、
「こう?」
と目を閉じて見せた。
「うんうん、いいね~。」
と言いながら、何やら頬に感触があった。
美咲の優しい唇が僕の頬に触れたのだ。
「!!!」
その瞬間、心臓が大きく跳ね上がり、言葉を失った。
「じゃあね。
ふふふ。」
と、彼女が手を振りながら階段を昇って行くのを見送りながら、しばらくボーゼンと立ち尽くしていた。
彼女の温もりがまだ頬と左腕に残り、まるで夢のように感じられた。
心の中が高揚し、現実の感覚が薄れていく。
「でも…
美咲がまた戻ってきてくれたなんて…」
と、思わず呟く。
彼女との再会がどれだけ特別なことか、今さらながら実感する。
幼馴染であり、かなり大人になった彼女との関係が、今後どのように発展していくのか、心の中で想像を膨らませる。
自分の部屋に戻ると、心の中で彼女の笑顔が何度も浮かんでは消える。
もちろん、笑顔だけではなくあんな姿やこんな姿も…
「いやいや、不謹慎だな…」
そう呟いてみるものの、性には勝てそうもない。
とにかく、彼女の言った「約束」が気になりながら、ベッドに横たわる。
「あれ?
でも、電車の中で、どうして僕だって分かったんだろう?」
ふとした疑問が浮かんだが、度重なるアクシデントの数々に、亨は気付かないうちに疲れており、あっという間に深い眠りについた。
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