面白ミステリー『名探偵マコトの事件簿2』

naomikoryo

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第25話『チャトラの行方と、手紙の正体』

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その日の放課後、青木真人は気合いに満ちていた。

「……ついに犯人像が見えてきた……!」

「“犯人”て言うなっての」
後ろから早紀が即ツッコミを入れる。

「チャトラを保護してくれた“優しい誰か”でしょ。
それに、ことりが“危険はない”って言ってたじゃん」

「だが、“手紙を出して名を名乗らない”のは、それなりに動機があるということ!」

「……あんたって、本当に面倒くさい方向に全力よね……」

マコトはポケットから**人物相関図(手描き)**を取り出した。

【容疑者(※マコト調べ)】

① 犬派の偏屈じいさん(過去にチャトラに威嚇されたらしい)
② 商店街の花屋の姉ちゃん(猫大好きすぎて“うちの子”って呼んでた)
③ 小学生トリオ(最近チャトラの写真を毎日撮っていた)
④ パーカー女子中学生(未確認。町内にそんなやついるのか?)
⑤ 動物病院の先生(やけに目が優しい)

「……いや、⑤が普通に有力候補じゃない?」
早紀が真面目にツッコむ。

「でも逆に“有力っぽすぎる”から怪しい!」

「何その“逆に”理論!?」

そこへ、美穂がすっ飛んできた。

「やっほ~!! ちょ、あんたら聞いた!? 聞いた!?!? あたし今すんごい情報掴んだんだけど!?」

「何!?」

「チャトラ、見つかったって!!!」

「なにぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」

一同、半ば走りながら向かったのは、商店街の端にある小さな温泉旅館。

旅館の裏庭――
木漏れ日が差し込む石畳の上で、
チャトラは、ふわぁっとあくびしながら寝転んでいた。

「いた……!!」

ことりが小さく叫び、駆け寄る。

「チャトラ……!」

猫はことりの声にパチリと目を開け、のんびりとした顔で「にゃー」と鳴いた。

「……ほっといたら、勝手に温泉リゾート満喫してたんかい!!」

マコト、倒れ込む。

そこへ現れたのは、旅館の女将さん。

「あらあら、チャトラのお友達かい? こないだ病院から戻ってきて、うちの裏庭が気に入ったみたいでねぇ」

「病院!? やっぱり怪我してたんですか?」

「そうなのよ。近くの動物病院の先生が、足をちょっと痛めてるのを見つけて保護してくれてね。昨日、うちの娘が連れて帰ってきたのよ」

「娘……?」

「こんにちは~」
ぴょこっと顔を出したのは――

動物病院の先生の娘。つまり、手紙の“正体”。

中学生くらいの女の子で、恥ずかしそうに頭を下げた。

「その……チャトラ、好きで……ことりさんがいつも撫でてるのも見てたし……
心配してるかなって思って……」

「それで手紙と猫缶を……?」

「はい……本当は直接言えたらよかったんだけど……」

ことりがそっと前に出て、頭を下げた。

「……ありがとう。すごく、安心しました」

「い、いえ……! こちらこそ、勝手なことしてすみません……!」

マコトが、ポンと手を打つ。

「つまり、真相はこうだッ!!」

◆【真人の名探偵タイム】
「チャトラは足をケガし、動物病院の先生に一時保護されていた!
その娘さんが、ことりの気持ちを察して、手紙と猫缶を用意!
あえて名前を書かずに、“想い”だけを託した――!」

「まさに、猫と人をつなぐ、優しい怪盗だったわけだ!!」

「いや誰が怪盗だよ」

ことりは、微笑みながら、そっとマコトに耳打ちした。

「……やっぱり君、すごいよ。
……次は、また“事件”、仕掛けてもいい?」

「……もちろんだッ!!」
真人、鼻息MAX。

「怪盗ルパンの末裔ことり! 次の挑戦、待ってるぜ!!」

「え、あんたら何その空気!? なに? ラブコメ!?
えっ!? おい! えっ!? あたし置いてかれてない!?」

美穂が一人で混乱していた。

そこへ――満を持して登場。

「先生も来ましたよ~~♡ チャトラくん、湯上がりですかぁ~~?」

「増渕先生ッ!?!?」

「おばあちゃんに聞いたの~。温泉旅館に猫がいるって♡
先生、タオルも持ってきちゃった♡」

「先生、それは“混浴”の覚悟じゃないと成立しないですよ!?」

「えっ!? 猫って混浴するの!?(キラキラ)」

「しないですッッ!!!!」

◆ラスト:名探偵のノート
【事件名】
チャトラ失踪事件

【犯人】
いない。みんな“やさしいひと”

【得たもの】
・チャトラの安否
・猫缶
・ことりからの“また事件仕掛けてもいい?”の一言
・あと、ラムネ(昨日の)

「名探偵ってのは、ただ“事件を解決する”だけじゃない。
誰かの“心”をちょっとでも軽くできたら、それで十分だよな……」

「……今だけは、ちょっとカッコよかったわよ」

「マジで!? マジで言った!? いま録音できてた!?」

「もう黙れ!!!」

(つづく/次回、ちょっとした“後日談”へ)
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