時の迷い子

未来への約束

ケンは、ユウコの手をしっかりと握りしめながら、自分の選択を実感していた。
過去の痛みを抱えつつも、彼女と共に生きる未来を選んだことに心が温かくなった。
この時代での再会は、彼にとって新たな希望の光となった。

「私たち、これからどんなことをしようか？」
ユウコの声が、ケンの心を弾ませる。
「そうだな、ユウコはどうしたい？」
ケンは嬉しそうに提案した。
彼女の笑顔が再び彼の心を照らし、楽しい時間を過ごすことができる喜びを感じていた。
二人は公園を歩きながら、過去の思い出を語り合った。
彼女との楽しい瞬間を思い出しながら、同時にこれからの新しい思い出を作ることができると考えると、彼の心は希望に満ちていた。
「また、一緒に絵を描きたいな。」
ユウコはふとつぶやいた。
「いいね！
一緒に素敵な絵を描こう！」
ケンは心から同意した。
あの時、ユウコが描いた絵を一人眺めていた自分を思い出した。
本当なら、ユウコがここにいて、自分の絵を見てくれている人たちを一緒に見ているはずだった。
彼女が言葉をかけてもらうことで、更に彼女の夢が叶うかもしれない、と。
それを一緒に実現できるかもしれない、そんな未来を描くことができると思うとワクワクした。

次の日、二人は公園の片隅で一緒に絵を描き始めた。
ユウコの指示に従って色を重ね、彼女の表現する美しい世界に少しずつ近づいていく。
彼はユウコの楽しそうな笑顔を見ていると、過去の悲しみが徐々に薄れていくのを感じた。

「ケン、これが私の描きたい風景なの。」
ユウコが描いた絵を見せてくれる。
そこには色とりどりの花々と青い空、そして二人が楽しそうに笑っている姿が描かれていた。
「すごい、素敵だよ！」
ケンは心から褒めた。
彼女が描く世界は、彼にとっての理想そのものであり、その景色に自分も溶け込んでいるような気持ちになった。
「ありがとう、ケン。
あなたと一緒にいるから、こんなに楽しいの。」
ユウコは照れくさそうに微笑む。
彼女のその言葉が、ケンの心を温かく包み込んだ。

しかし、彼の心の奥には、再びあの少年の言葉がよみがえった。
「本当に未来を選べるのか？」
という問いかけ。
過去の痛みを背負いながら、果たしてこの道を進むべきなのかと、時折不安がよぎることもあった。

その日の終わり、二人は公園のベンチに座り、夕日が沈む様子を眺めていた。
空が赤やオレンジに染まり、幻想的な風景が広がっている。
「こんな景色、ずっと一緒に見ていたいね。」
ケンは静かに言った。
「うん、私も。
ずっと一緒にいようね、ケン。」
ユウコは優しく彼の手を握りしめる。
その瞬間、彼の心に確かな感情が芽生えた。
彼はこの時代で彼女と共に生きることを選び、未来を築くために進んでいくことを決意した。

「この瞬間を大切にするよ。
ユウコと一緒にいることが、何よりも幸せだから。」
ケンは心の底から思った。
「ケン…
好きだよ…」
ユウコの甘い瞳がケンを見つめる。
動けないケンにユウコの顔が少しずつ近付き、二人は初めてキスをした。
ほんの数秒に過ぎないキスが、もう何十年も望んでいたことのように思えた。
ケンは涙が流れ落ちていることに気づき、さりげなく伸びをしてみせた。

「やっと、ユウコと気持ちが通じ合えた気がするよ。」
「何、それ？」
ユウコはちょっと頬を膨らませて見せた。
「僕もユウコが大好きで、これからもずっと一緒にいたい、ってことさ！」
しかし、その言葉の背後には、まだ不安が潜んでいた。
彼がこの選択を続けることで、過去の記憶や痛みが再び襲いかかることはないのか。
彼は心の中でその問いに向き合う必要があった。

「もしも…
また戻ることができたら、どうする？」
ケンはふと自分に問いかけた。
過去に戻ることができた場合、彼は再びユウコと過ごすことができるのか、それとも彼女を失うことになるのか。
その葛藤が彼を悩ませた。

だが、今はその不安を振り払い、彼女といるこの瞬間を楽しむことが重要だと感じた。
未来は自分の手の中にあるのだと、自分に言い聞かせる。

「未来は僕たちの手で作ることができるんだ。」
ケンは心の中で決意を固めた。
その言葉が彼に勇気を与え、ユウコと共に新たな冒険を始めるための一歩を踏み出す準備が整った。