女子高生探偵:千影&柚葉

naomikoryo

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第1章:開かずのアパート

第14話:「倉庫街の闇」

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——商店街の裏手、川沿いの倉庫街。

 夜の帳が降り、辺りはしんと静まり返っていた。昼間はトラックが出入りする場所だが、今はまるで廃墟のように不気味な雰囲気を漂わせている。

 薄暗い街灯の下、千影と柚葉は足音を抑えながら歩いていた。

「……ここ、本当に誰もいないの?」

 柚葉が不安げに辺りを見回す。

「ええ。でも、それが逆に不自然ね」

 千影は低く呟く。

「普通、どんなに遅い時間でも、一台や二台は車が停まっているものよ。なのに、今は……」

 周囲を見渡す限り、動く影はない。

「本当に静かすぎるわね……」

「でしょ!? なんかホラー映画の導入みたいなんだけど!」

「ホラーじゃないわ。これは、"作られた静けさ"よ」

「作られた……?」

 千影は歩みを止め、慎重に周囲を観察する。

「誰かが意図的に、人払いをしているのかもしれないわ」

「……ってことは、つまり……」

「私たちは"歓迎されていない"ってことね」

「や、やめてよ……そういうの怖いから……」

 柚葉が縮こまるが、千影は真剣な表情を崩さない。

「とにかく、杉田さんと美咲ちゃんを探しましょう。スマートフォンのGPSによると、最後の発信元はこの辺りだったはずよ」

「うん……分かった」

 二人は倉庫街の奥へと慎重に進んでいく。


 しばらく歩くと、川沿いの一角に一つだけ灯りがともった倉庫があった。

 他の倉庫はすべて真っ暗で、稼働している様子はない。

「……あれかもしれないわね」

 千影は倉庫のドアの前で立ち止まった。

「ここから杉田さんが電話をかけてきたの?」

「可能性は高いわ。中を確認してみましょう」

「えぇぇ……マジで?」

 柚葉が戸惑うが、千影は迷わず倉庫の隙間から中を覗き込んだ。

 そして——

「……!」

 千影の表情が変わる。

「どうしたの!?」

「中に人がいる……!」

 柚葉も恐る恐る覗き込んだ。

 倉庫の奥。

 古びた木箱が積まれた隙間に、椅子に縛り付けられた二つの影が見えた。

「美咲ちゃん! 杉田さん!」

 柚葉が思わず声を上げそうになるが、千影がすぐに彼女の口を塞ぐ。

「しっ……!」

「むぐ……!」

「まだ敵がいる可能性があるわ。慎重に行動するのよ」

「……っ!」

 柚葉は小さく頷き、千影の手を外させた。

「じゃあ、どうするの?」

「まずは周囲の状況を確認するわ。敵の人数と、彼らが何をしているのか」

 二人は倉庫の外壁に身を潜め、慎重に中の様子を伺った。

 ——すると、奥の方から低い声が聞こえてきた。

「……このガキ、いつまでたっても口を割らねぇな」

「仕方ねえだろ。こいつらが何を知ってるのか、まだ確かめる必要がある」

「さっさと始末しちまえばいいじゃねえか」

「バカ、そんな簡単に片付けられるかよ。まずは"先生"の指示を待つんだ」

「……っ!」

 柚葉の顔が青ざめる。

「な、何これ……? マジでヤバい奴らじゃん……!」

「……"先生"?」

 千影は、小さく眉をひそめた。

「この男たちには、指示を出している"上の存在"がいる……」

「え、えぇぇ……? 何それ、余計にヤバいじゃん!」

「ええ。でも、それが分かったのは収穫よ」

「収穫って……いやいや! このままじゃ美咲ちゃんたちが……!」

「ええ、それも分かってるわ」

 千影は視線を倉庫の奥へと向ける。

「とにかく、彼らを助ける方法を考えましょう」


「さて、どうする?」

 柚葉が小声で尋ねる。

「正面突破は無理よ。敵が複数いる上に、こちらは丸腰だもの」

「……でも、警察を呼ぶ時間はないよね?」

「ええ、通報しても到着まで時間がかかるわ。その間に、最悪の事態になる可能性もある」

「うぅ……じゃあ、どうやって……?」

 柚葉が頭を抱えかけたそのとき——

「……そうね。"煙幕作戦"で行くわ」

「……へ?」

 柚葉がポカンと千影を見つめる。

「煙幕?」

「ええ。この倉庫の構造を利用するのよ」

 千影は素早く倉庫の周囲を見渡した。

「ほら、あそこ」

 彼女が指差したのは、倉庫の外に放置された古びた発電機だった。

「古い発電機は、燃料が古くなっていることが多いの。その状態で一気にエンジンをかけると、大量の煙が発生する」

「なるほど!? それを利用して敵の視界を塞ぐの?」

「ええ。その隙に、美咲ちゃんたちを助けるわ」

「でも、そんなうまくいくの?」

「やるしかないでしょう?」

「……うぅ、分かったよ!」

 柚葉は腹をくくり、発電機の側へと静かに移動する。

「よし、準備オッケー!」

「いくわよ」

 千影が合図を出し、柚葉が一気に発電機のスイッチを入れた。

——ゴゴゴゴ……バシュウウウッ!!!

 大量の白煙が倉庫の入り口付近から噴き出し、一瞬にして視界を奪った。

「な、なんだ!?」

「煙!? くそ、何が起こってやがる!?」

 男たちの声が混乱に包まれる。

「今よ!」

 千影と柚葉は、倉庫の中へと飛び込んだ。

「美咲ちゃん、杉田さん!」

「……千影……!?」

 驚く美咲の縄を千影が素早く解く。

「立てる?」

「う、うん……!」

 一方、柚葉も杉田の拘束を解く。

「よし、これで——」

——バンッ!!

「おい!! 誰だ!!」

 煙の中から、怒号が響いた。

「まずい! 逃げるわよ!!」

「お、おう!!」

 美咲の手を引き、千影は倉庫の出口へと駆け出した。

 ——だが、その時。

「どこへ行くつもりかな?」

 煙の中から、"新たな影"が現れた。

 「……"先生"?」

 千影の足が止まる。

 この事件の"黒幕"が、ついに姿を現した——。
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