女子高生探偵:千影&柚葉

naomikoryo

文字の大きさ
1 / 39
第1章:開かずのアパート

第1話:「憧れの的とミステリー研究会」

しおりを挟む
春の日差しが降り注ぐ午後、私立桜城(おうじょう)学園の食堂は昼休みを迎えていた。開放感のある広々とした空間には、多くの生徒が集まり、それぞれのランチを楽しんでいる。そんな中、異様なほどの注目を集める二人の少女が、隅のテーブルに腰を下ろしていた。

 天野千影と相川柚葉。

 彼女たちは学内で"特別な存在"だった。端正な顔立ちとスタイルの良さ、そしてどこか気品を感じさせる雰囲気が相まって、男子生徒からは憧れの的、女子生徒からは「御姉様」と崇められるほどのカリスマ性を持っていた。しかし、本人たちはまったく気づいていない。

「柚葉、食べながらそんなに大声で話すと行儀が悪いわよ」

 千影は冷静な口調で向かいの席の柚葉に注意を促した。彼女の瞳は知性と冷徹さを帯びており、その美しい黒髪は背中まで流れるように伸びている。まるでクラシカルな名探偵のような佇まいだ。

「えー? いいじゃん、別に! だって部員集めに必死なんだもん!」

 柚葉はフォークを振りながら不満げに返す。彼女の明るい茶髪はふわりとカールしており、元気な笑顔が周囲を魅了する。千影とは対照的な陽気な性格の彼女だが、二人は信頼し合い、最強のバディとして活動していた。

「それにしても、誰も入ってくれないねぇ、ミステリー研究会」

 柚葉は深いため息をついた。

「仕方ないわ。私たちが目立ちすぎるせいで、入部するのに覚悟がいるんでしょうね」

「覚悟って……。まるでブラック企業じゃん」

 柚葉が肩をすくめる。確かに、ミステリー研究会には何人もの「犠牲者」がいた。入部した途端、男子からの嫉妬、女子からの羨望と憎悪が入り混じった視線に晒され、結局耐えきれずに退部する者が後を絶たなかった。

「もう、どうしたらいいんだろうね……。普通にミステリーが好きな人を集めたいだけなのにさ」

「まあ、私たちは私たちのペースでやるしかないわね」

 千影が淡々と告げる。そのとき、すぐそばのテーブルで下級生たちがひそひそと話している声が耳に入った。

「ねぇ、知ってる? 近所のあのアパート、また変な噂が出てるらしいよ」

 その一言に、千影と柚葉の耳は鋭く反応した。

「アパート? なんの話?」

「ほら、"開かずのアパート"って呼ばれてるやつだよ!」

 千影と柚葉は一瞬目を合わせると、すぐにその会話に割り込んだ。

「ちょっと、詳しく聞かせてもらえる?」

 突然、二人の美貌と圧倒的な存在感に話しかけられた下級生たちは、一斉に緊張した表情を見せた。

「え、えっと……、天野先輩と相川先輩……?」

「うん、そう。別に怖がらなくていいよ! 私たちはただ、その話に興味があるだけ!」

 柚葉がにこやかに笑うが、それでも下級生たちは少し戸惑ったようだった。とはいえ、ミステリー好きな二人が興味を持ったことに気付くと、彼らはゆっくりと話し始めた。

「その……学校の近くに、古いアパートがあるじゃないですか」

「ええ、分かるわ」

「あれ、もうずっと前から誰も住んでないはずなのに、最近になって夜に窓に人影が映るらしいんです」

「へぇ……」

 千影の瞳が鋭く光る。

「それだけじゃないんです。誰も入れないはずの部屋の中から、物音が聞こえたりするらしくて……」

「へぇ~、それって幽霊の仕業ってこと?」

 柚葉が楽しげに身を乗り出す。

「それが……よくわからないんですけど……。誰かが勝手に入り込んでるんじゃないかって噂もあるし、本当に幽霊が出るって話もあって……」

 下級生たちは不安そうな顔をしながら話した。千影は顎に手を当て、じっと考え込む。

「それで、そのアパートって具体的にどこにあるの?」

「えっと……商店街の裏通りにある、あのボロボロの建物です」

「なるほどね。ありがとう、参考になったわ」

 千影は微笑みながら礼を言うと、すぐに柚葉の方を向いた。

「行ってみましょう」

「うん!」

 二人は、下級生たちの会話から聞き出した情報をもとに、謎のアパートへと足を踏み入れる決意をした。

 ——こうして、「開かずのアパート」の謎が、ミステリー研究会の手によって解き明かされることとなるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった! 木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...