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第2章―人間と契約
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――昼休み。空き教室。
頭を抱える俺を、他の四人が呆れた顔して囲んでいた。
「本当……なにやってるのかしら……」
「た、頼みに行った側が断るなんて前代未聞だよ……ぷくく」
「笑っている場合か……結城」
「にったさんの言うとおりっすよゆーきさん!このままだととーまさんが契約できなくて、おれたちも力が使えないままっす!!」
本当に俺は何をしているんだろうか。
「すまん……ついカッとなって……」
「毎度毎度、カッとなりすぎでしょ」
結城に呆れられ、俺は肩を落とした。俺は本当にいつもここぞというときに感情が抑えられないんだ……。
結局三上はあの後、教室に姿を現さなかった。
期限は一週間だが、学校があるのは今日までだ。このままでは、俺は本当に自然消滅だ。
一体どうすれば……
――その時、天満のポケットの中に居た御神体が叫んだ。
『【邪魔】の気配が強くなった!その近くに三上君の気配がする……!もしかしたら三上君が【邪魔】にとりつかれるかも……!』
「……あっ、藤間!?待ちなさい!!」
その言葉を聞いた俺は天満から御神体を奪ってすぐさま教室を飛び出した。
走りながら、神に訊いた。
「【邪魔】の気配はどこだ!」
『仮にも御神体だからもっと優しく……』
「いいから言え!」
『屋上からだよ』
「屋上だな!」
俺は屋上へ続く階段へ向かう。
「……もし、三上が【邪魔】にとりつかれたとしたら、その原因は……俺のせいか?」
『……いや、そうとは限らないけど……君の言葉が、三上君の負の感情を増幅させたのは間違いないね』
「く……」
俺はいつもそうだ――ついカッとなって、口を滑らせてしまう。
あのときだって、あんなことを言わなければ――同胞たちを死なせることはなかったかもしれないのに。
『それよりも、どうするの?今の君じゃ、【邪魔】に対抗できる力はないよ?』
「……だが、三上が【邪魔】にとりつかれたとすれば、それは俺が原因だ……。だから、どんな手を使っても……三上は救う」
今度こそ彼奴を――俺は救う。
あのとき果たせなかったことを……俺は果たす!
バン!と勢いよく屋上の扉を開けた。
するとそこには、あの三上をいじめていた男子三人と――その三人のうちの一人に、首を絞められている三上の姿があった。
「貴様……なにをしている!!」
叫んで、首を絞めている奴を突き飛ばした後、倒れている三上を揺り起こした。
「三上!おい!起きろ!」
「う……」
三上はとりあえず身体的には無事なようだ。だが……
「神!三上は……」
『大丈夫、まだ【邪魔】には取りつかれていないようだ』
その言葉を聞き、ほっと胸を撫で下ろした。
「タクミ!」
「大丈夫か!?」
視線の先では、俺の体当たりで吹っ飛んだ男子を助け起こしている二人の男子がいた。
助け起こされている男子の体の周りには――何か黒い靄のようなものが視えた。
「まさか、あの黒い靄が……」
『あれが【邪魔】の気配だ。彼は【邪魔】にとりつかれている』
やはりか……
咄嗟にタクミとやらを突き飛ばしたが何も警告が鳴らなかったのは、奴が【邪魔】にとりつかれていたからか。
『……』
ゆらり、と【邪魔】にとりつかれたタクミが立ち上がる。
「た、タクミ!どうしたんだよ!」
「首まで絞めるなんてどうかしてる……!」
いつもと明らかに雰囲気が違う友人を見て、残りの二人は戸惑っていた。
「貴様らにはいろいろと聞きたいことがあるが……今はここに居られると邪魔だ……とっとと失せろ」
「ッ!」
「い、行くぞ!」
殺気を込めて言えば、二人は慌てて屋上から去っていった。
俺と、【邪魔】にとりつかれたタクミ、そして三上だけになった屋上に強い風が吹き荒んだ。
「……藤間、君?」
「三上……!気が付いたか」
「……どうして、ここに?」
「貴様が、【邪魔】にとりつかれそうになっていると聞いて」
「……!あれが……【邪魔】なの?」
三上が黒い靄を纏う男子をみて、目を見張った。俺は、そんな三上の前に庇うように立ち塞がった。
「貴様はすぐに逃げろ」
「え、でも、藤間君は……!?」
「俺は……彼奴を倒す」
「で、でも……契約をしないと、力は使えないんじゃ……!」
『三上君の言う通りだ!早く彼と契約をするんだ!』
三上と神が叫んだが、俺は首を振った。
「……お前との契約を頼みに行って自ら断った奴が、どの面下げて契約をできるというんだ」
「……!」
「大丈夫だ。俺はどんな手を使っても……彼奴は倒す」
立ち上がり、【邪魔】を睨み付けた。
後ろの三上の素顔を思い出し―――俺は呟いた。
「俺は、今度こそ、自分がどうなったとしても……お前を守るよ……『ユス』」
「――藤間君!!」
そのとき、辺りがびりびりと震えるくらい、三上が大きな声で俺を呼んだ。
「僕……今朝、君に言われたこと……ずっとここで考えてた……。僕はずっと、何か言っても無駄なんだって思いこんで……現状を何も変えようとしなかった……。でも、それじゃ駄目なんだって、君に言われてやっと気づいたんだ……!」
「三上……」
「藤間君……こんな、気付くのが遅い僕でも良ければ……僕と契約して!!」
――俺はその言葉を聞き、彼を見た。そして、目を見開く。
三上の長い前髪は何故か左側が一部短くなっていて、そこから覗く彼の左眼には、強い意志が宿っていた。
それを目の当たりにした俺は、三上の腕を掴んで引き寄せた。
「本当にいいんだな?」
「はい……僕は、決めました」
「――礼を言う」
俺はそう言うと――三上の顎を掬い上げ、その唇に口付けた。
「……んむっ!?」
三上の戸惑いが、唇から伝わってきた。
半開きの唇に無理矢理舌をこじ入れ、口内を掻きまわす。
「んー!んー!」
どんどんと胸を叩かれるが、俺は唇を離すことはなかった。
口付けを深くしていけば、段々と三上から抵抗する力が抜けていった。
「……ん……、あ……っ」
三上の唇の隙間から、熱い息が漏れる。
口付けとは――こんなものだっただろうか?
久しぶりだからそう思うのか?
瞑っていた目を開けると、戸惑いと涙に揺れる大きな瞳とかち合った。
(ああ――なんて、甘い――……)
そのとき、俺の首に巻かれていたチョーカーが光を発した。
『――契約が成立した!魔王くん!』
唇を離すと、溢れた互いの唾液が間を繋いだ。
「はぁ……はぁ……」
力が抜けてぐたりと体を預けてきた三上をそっとその場に座らせる。
「あ、あの……今のって……」
「契約のためには必要だった。すまん。謝罪は、彼奴を倒した後にもう一度させてもらう」
俺は立ち上がると、【邪魔】にとりつかれたタクミを睨んだ。
「神、どうすればいい」
『彼はまだ完全に【邪魔】と融合しているわけではない。今の君なら、【邪魔】だけを引っ張り出すことができるはずだ!』
じっと見つめると、確かにタクミの体から出ている黒い靄に、「掴めそうなところ」があるのがわかった。
「――そこか」
それを掴みに、俺は足に魔力を纏わせると、タクミの下へ一瞬で迫った。
『――ジャマヲ、スル、ナ!!』
「【邪魔】なのは貴様だろう」
そして、今度は手に魔力を纏わせ、それを掴んで――一気に引き抜いた。
すると、ずるり、とあっけなく黒い靄はタクミの体から抜け出た。
『その状態なら【邪魔】を消すことができる!どんな手段でも構わないから、【邪魔】を消すんだ!』
神がそう言ったとき、手に掴んでいた【邪魔】がぐるぐると俺の体を取り囲み始めた。
体に巻き付いてくる【邪魔】からは、肌を焦がすようなチリチリとした刺激を感じた。
成程……これが、世界を壊すエネルギーか。
「藤間君!」
気が付くと、俺は【邪魔】に体中を取り囲われており、それを見た三上が焦ったように俺を呼んだ。
しかし俺を消滅させられるほどのエネルギーは無いと感じた俺は冷静に魔力を込めた。
「――ダークフレア」
俺の出した黒い炎は、瞬く間に【邪魔】を燃やしていく。
【邪魔】は断末魔ともいえない悲鳴を上げ、あっけなく消え失せた。
【邪魔】が消えると同時に、光っていた俺の首輪は鳴りを潜め、元の黒いチョーカーに戻った。
『流石だね、魔王くん。【邪魔】は綺麗さっぱり消えたよ』
「そうか……」
――バタバタ、バン!!
「「「「藤間!」」」」
そのとき、天満達四人が屋上になだれ込んできた。
「大丈夫!?」
「ああ、【邪魔】は倒した」
焦った顔の天満達へ、【邪魔】は倒したことを伝えると、彼らはその場にて胸を撫で下ろした。
彼らには随分気を揉ませてしまったようで、申し訳ない気分になった。
「【邪魔】を倒したってことは、藤間も無事契約できたんだね」
「ああ」
「そう、おめでとう」
結城に祝福されながら、俺は思い出した。
そういえば三上はどうなった?
「藤間君……」
俺が後ろへ目を向けると、戸惑った顔の三上と目が合った。どうやら前髪が一部短くなっている以外は怪我などはないようでホッとする。
「そういえば前髪はどうしてそうなった?」
「あ、えっと……タクミくんがハサミを持ってて……少し切られちゃって」
「そうか……【邪魔】にとりつかれると、あんな風になるんだな」
まあ……無事でよかった。
『ま、皆契約できたようでなによりだよ!』
「ええ」
「そうだね」
「ああ」
「よかったっす!!」
神の言葉に、他四人が同意し、俺も胸を撫で下ろした。
――こうして、俺達はようやくスタートラインに立ったのだった。
頭を抱える俺を、他の四人が呆れた顔して囲んでいた。
「本当……なにやってるのかしら……」
「た、頼みに行った側が断るなんて前代未聞だよ……ぷくく」
「笑っている場合か……結城」
「にったさんの言うとおりっすよゆーきさん!このままだととーまさんが契約できなくて、おれたちも力が使えないままっす!!」
本当に俺は何をしているんだろうか。
「すまん……ついカッとなって……」
「毎度毎度、カッとなりすぎでしょ」
結城に呆れられ、俺は肩を落とした。俺は本当にいつもここぞというときに感情が抑えられないんだ……。
結局三上はあの後、教室に姿を現さなかった。
期限は一週間だが、学校があるのは今日までだ。このままでは、俺は本当に自然消滅だ。
一体どうすれば……
――その時、天満のポケットの中に居た御神体が叫んだ。
『【邪魔】の気配が強くなった!その近くに三上君の気配がする……!もしかしたら三上君が【邪魔】にとりつかれるかも……!』
「……あっ、藤間!?待ちなさい!!」
その言葉を聞いた俺は天満から御神体を奪ってすぐさま教室を飛び出した。
走りながら、神に訊いた。
「【邪魔】の気配はどこだ!」
『仮にも御神体だからもっと優しく……』
「いいから言え!」
『屋上からだよ』
「屋上だな!」
俺は屋上へ続く階段へ向かう。
「……もし、三上が【邪魔】にとりつかれたとしたら、その原因は……俺のせいか?」
『……いや、そうとは限らないけど……君の言葉が、三上君の負の感情を増幅させたのは間違いないね』
「く……」
俺はいつもそうだ――ついカッとなって、口を滑らせてしまう。
あのときだって、あんなことを言わなければ――同胞たちを死なせることはなかったかもしれないのに。
『それよりも、どうするの?今の君じゃ、【邪魔】に対抗できる力はないよ?』
「……だが、三上が【邪魔】にとりつかれたとすれば、それは俺が原因だ……。だから、どんな手を使っても……三上は救う」
今度こそ彼奴を――俺は救う。
あのとき果たせなかったことを……俺は果たす!
バン!と勢いよく屋上の扉を開けた。
するとそこには、あの三上をいじめていた男子三人と――その三人のうちの一人に、首を絞められている三上の姿があった。
「貴様……なにをしている!!」
叫んで、首を絞めている奴を突き飛ばした後、倒れている三上を揺り起こした。
「三上!おい!起きろ!」
「う……」
三上はとりあえず身体的には無事なようだ。だが……
「神!三上は……」
『大丈夫、まだ【邪魔】には取りつかれていないようだ』
その言葉を聞き、ほっと胸を撫で下ろした。
「タクミ!」
「大丈夫か!?」
視線の先では、俺の体当たりで吹っ飛んだ男子を助け起こしている二人の男子がいた。
助け起こされている男子の体の周りには――何か黒い靄のようなものが視えた。
「まさか、あの黒い靄が……」
『あれが【邪魔】の気配だ。彼は【邪魔】にとりつかれている』
やはりか……
咄嗟にタクミとやらを突き飛ばしたが何も警告が鳴らなかったのは、奴が【邪魔】にとりつかれていたからか。
『……』
ゆらり、と【邪魔】にとりつかれたタクミが立ち上がる。
「た、タクミ!どうしたんだよ!」
「首まで絞めるなんてどうかしてる……!」
いつもと明らかに雰囲気が違う友人を見て、残りの二人は戸惑っていた。
「貴様らにはいろいろと聞きたいことがあるが……今はここに居られると邪魔だ……とっとと失せろ」
「ッ!」
「い、行くぞ!」
殺気を込めて言えば、二人は慌てて屋上から去っていった。
俺と、【邪魔】にとりつかれたタクミ、そして三上だけになった屋上に強い風が吹き荒んだ。
「……藤間、君?」
「三上……!気が付いたか」
「……どうして、ここに?」
「貴様が、【邪魔】にとりつかれそうになっていると聞いて」
「……!あれが……【邪魔】なの?」
三上が黒い靄を纏う男子をみて、目を見張った。俺は、そんな三上の前に庇うように立ち塞がった。
「貴様はすぐに逃げろ」
「え、でも、藤間君は……!?」
「俺は……彼奴を倒す」
「で、でも……契約をしないと、力は使えないんじゃ……!」
『三上君の言う通りだ!早く彼と契約をするんだ!』
三上と神が叫んだが、俺は首を振った。
「……お前との契約を頼みに行って自ら断った奴が、どの面下げて契約をできるというんだ」
「……!」
「大丈夫だ。俺はどんな手を使っても……彼奴は倒す」
立ち上がり、【邪魔】を睨み付けた。
後ろの三上の素顔を思い出し―――俺は呟いた。
「俺は、今度こそ、自分がどうなったとしても……お前を守るよ……『ユス』」
「――藤間君!!」
そのとき、辺りがびりびりと震えるくらい、三上が大きな声で俺を呼んだ。
「僕……今朝、君に言われたこと……ずっとここで考えてた……。僕はずっと、何か言っても無駄なんだって思いこんで……現状を何も変えようとしなかった……。でも、それじゃ駄目なんだって、君に言われてやっと気づいたんだ……!」
「三上……」
「藤間君……こんな、気付くのが遅い僕でも良ければ……僕と契約して!!」
――俺はその言葉を聞き、彼を見た。そして、目を見開く。
三上の長い前髪は何故か左側が一部短くなっていて、そこから覗く彼の左眼には、強い意志が宿っていた。
それを目の当たりにした俺は、三上の腕を掴んで引き寄せた。
「本当にいいんだな?」
「はい……僕は、決めました」
「――礼を言う」
俺はそう言うと――三上の顎を掬い上げ、その唇に口付けた。
「……んむっ!?」
三上の戸惑いが、唇から伝わってきた。
半開きの唇に無理矢理舌をこじ入れ、口内を掻きまわす。
「んー!んー!」
どんどんと胸を叩かれるが、俺は唇を離すことはなかった。
口付けを深くしていけば、段々と三上から抵抗する力が抜けていった。
「……ん……、あ……っ」
三上の唇の隙間から、熱い息が漏れる。
口付けとは――こんなものだっただろうか?
久しぶりだからそう思うのか?
瞑っていた目を開けると、戸惑いと涙に揺れる大きな瞳とかち合った。
(ああ――なんて、甘い――……)
そのとき、俺の首に巻かれていたチョーカーが光を発した。
『――契約が成立した!魔王くん!』
唇を離すと、溢れた互いの唾液が間を繋いだ。
「はぁ……はぁ……」
力が抜けてぐたりと体を預けてきた三上をそっとその場に座らせる。
「あ、あの……今のって……」
「契約のためには必要だった。すまん。謝罪は、彼奴を倒した後にもう一度させてもらう」
俺は立ち上がると、【邪魔】にとりつかれたタクミを睨んだ。
「神、どうすればいい」
『彼はまだ完全に【邪魔】と融合しているわけではない。今の君なら、【邪魔】だけを引っ張り出すことができるはずだ!』
じっと見つめると、確かにタクミの体から出ている黒い靄に、「掴めそうなところ」があるのがわかった。
「――そこか」
それを掴みに、俺は足に魔力を纏わせると、タクミの下へ一瞬で迫った。
『――ジャマヲ、スル、ナ!!』
「【邪魔】なのは貴様だろう」
そして、今度は手に魔力を纏わせ、それを掴んで――一気に引き抜いた。
すると、ずるり、とあっけなく黒い靄はタクミの体から抜け出た。
『その状態なら【邪魔】を消すことができる!どんな手段でも構わないから、【邪魔】を消すんだ!』
神がそう言ったとき、手に掴んでいた【邪魔】がぐるぐると俺の体を取り囲み始めた。
体に巻き付いてくる【邪魔】からは、肌を焦がすようなチリチリとした刺激を感じた。
成程……これが、世界を壊すエネルギーか。
「藤間君!」
気が付くと、俺は【邪魔】に体中を取り囲われており、それを見た三上が焦ったように俺を呼んだ。
しかし俺を消滅させられるほどのエネルギーは無いと感じた俺は冷静に魔力を込めた。
「――ダークフレア」
俺の出した黒い炎は、瞬く間に【邪魔】を燃やしていく。
【邪魔】は断末魔ともいえない悲鳴を上げ、あっけなく消え失せた。
【邪魔】が消えると同時に、光っていた俺の首輪は鳴りを潜め、元の黒いチョーカーに戻った。
『流石だね、魔王くん。【邪魔】は綺麗さっぱり消えたよ』
「そうか……」
――バタバタ、バン!!
「「「「藤間!」」」」
そのとき、天満達四人が屋上になだれ込んできた。
「大丈夫!?」
「ああ、【邪魔】は倒した」
焦った顔の天満達へ、【邪魔】は倒したことを伝えると、彼らはその場にて胸を撫で下ろした。
彼らには随分気を揉ませてしまったようで、申し訳ない気分になった。
「【邪魔】を倒したってことは、藤間も無事契約できたんだね」
「ああ」
「そう、おめでとう」
結城に祝福されながら、俺は思い出した。
そういえば三上はどうなった?
「藤間君……」
俺が後ろへ目を向けると、戸惑った顔の三上と目が合った。どうやら前髪が一部短くなっている以外は怪我などはないようでホッとする。
「そういえば前髪はどうしてそうなった?」
「あ、えっと……タクミくんがハサミを持ってて……少し切られちゃって」
「そうか……【邪魔】にとりつかれると、あんな風になるんだな」
まあ……無事でよかった。
『ま、皆契約できたようでなによりだよ!』
「ええ」
「そうだね」
「ああ」
「よかったっす!!」
神の言葉に、他四人が同意し、俺も胸を撫で下ろした。
――こうして、俺達はようやくスタートラインに立ったのだった。
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