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転校生#2
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しばらく同じ空間で授業を受けて、転校生が『色んな意味ですごい。』と言われていた意味が、よくわかった。
「なあなあしゅうじ!これなんて読むの?なあなあ!」
まず、どんなときでもお構いなしに話しかけてくる。
「……齋藤君?今は小テスト中だから、隣の子に聞いちゃだめですよ」
「なんで?」
「な、なんでって……」
転校生のあまりの返答に、先生は絶句していた。
「なあせんせー、これいつまでやんの?」
「はい?」
「もうおれ、飽きたんだけど」
そして爆弾発言。今度こそ先生は言葉を失った。
「……もういいです……」
そう言った先生は哀愁が漂っていた。
――この午前中、ずっとこんな感じだった。
そして俺はその間ずっと話しかけられまくって、午前中にして気力がもう限界だった。
話しかけてくる声が大きいから只でさえ痛い頭に響くし……せっかく熱下がったのに、また上がりそう……。
――キーンコーンカーンコーン……
チャイムが鳴り、ようやく午前の授業が終わった。や、やっと休憩だ……。
また話しかけられてはたまらないと、即座に立ち上がり医務室へと向かった。
診察を終えていつもの空き教室で祥吾に再会した。
ハルはいないので、今日は一日サボりのようだ。久しぶりに会いたかったんだけどなあ……。
祥吾は憔悴した俺の顔を見て、「だから言ったのに……」と呆れた。
「転校生には関わらない方がいいって言ったのに」
「俺だってそうしたかったけど、転校生くん、俺の席の隣だったんだよ……」
「えっ……マジで?」
既にどっと疲れている俺は、結局昼食は一口も口にできず、薬だけ胃に流し込んだ。
「また午後もあの転校生くんと隣か……、っゲホゲホッ!」
ため息を吐いた途端に咳き込んでしまい、祥吾に背中をさすられた。
まだ風邪も完全に治っていない。
「大丈夫?まだ本調子じゃないんだし、今日はもう帰ったら?」
「この程度で帰ってたら俺、お前と一緒に卒業できないよ。それは困るだろ」
「それは、そうだけど……無理だけはしないでね」
「わかってるって」
教室の前で祥吾と別れて中に入ると、「しゅうじー!」と大きな声で呼ばれた。ウッ、頭に響く……。
「……な、何?」
「せんせーに、これ渡せっていわれた!しゅうじとおれ、いっしょなんだって!!」
「何が……?」
転校生の手から渡されたのは、補習授業の案内文だった。
出席日数の足りない生徒や中間テストの結果が思わしくなかった生徒のための補習らしい。
俺の出席日数が足りないのは明らかだし、この案内を貰うのは当然だ。
それはそうなのだが……
……補習のときまで転校生と一緒なのか……。
「……そう……、ありがとう」
「おう!!」
嬉しそうな転校生をよそに、俺は頭痛が増した。
***
午後の授業を、俺は何とか薬で誤魔化しつつ乗り切った。だが、今日はこれから補習授業が残っている。
「柊、本当に大丈夫?補習、受けられる?大分顔色悪くなってるけど……」
「さっき薬もう一回飲んだし、平気だよ」
「え、また飲んじゃったの?間隔早くない?」
「でも、咳とか頭痛い方がつらいし……」
「そんなこといって、胃まで痛めても知らないよ?」
「う……」
祥吾に言われて、過去の苦い経験が思い起こされた。
この学校に入学する前、どうしても頭の痛みが治まらず鎮痛剤をあまり間隔を開けずに飲んだらものの見事に胃が荒れて悲惨なことになったのだ。
頭の痛さプラス気持ち悪さが加わり、あのときは本当にひどい思いをした。
「だ、大丈夫。胃薬も一緒に飲んだから……多分」
「はあ……、もう仕方ないなあ」
薬漬けの兄に対して、祥吾は呆れ気味だった。
祥吾はきつかったらすぐ先生に言うんだよと俺に念を押し、陸上部の放課後練習へ向かっていった。
弟に心配かけっぱなしの至らない兄でホントごめん……。
祥吾が去ると、横から大きな声で呼ばれた。
「しゅうじー!ほしゅう行こうぜー!」
「……ッ、う、うん。行こうか……」
眼鏡と髪でよくわからないが、多分満面の笑みを浮かべているであろう転校生に、俺は頭の痛みに顔を顰めつつ返事した。
本当、その大きな声良く出るね……。
「たのもー!!」
補習の行われる教室に着いた途端、そんなことを叫びながら転校生が勢いよく扉を開けた。
「……道場破りでもする気?」
「ともだちが、扉を開けるときはこういっとけばいいっていってたんだ!!」
「どういう友達?」
ちょっと不思議な転校生の友達も、やはりちょっと不思議なようだ。
教室にはまだ誰もいなかったが、すでに三つの机上にプリントが置かれていた。とりあえずあのプリントの置かれている席に座ればいいのかな。
「おれ、ここ!!」
転校生が元気よく真ん中の、教卓の前の席に着いたので、俺はその左隣、窓側の席に着いた。
席に着いてからも転校生は本当に良く喋るなあと感心してしまうほどにずっと話続けていた。その大半が『ともだち』の話だった。
楽しそうに『ともだち』の話をする彼の様子は、本当にその『ともだち』が好きなんだと伝わってきたが、相槌を打つのも大分疲れてきた。
「んで、きょうやが――」
頭痛が再発し始めたころ、ガラリと教室の扉が開かれた。
「なあなあしゅうじ!これなんて読むの?なあなあ!」
まず、どんなときでもお構いなしに話しかけてくる。
「……齋藤君?今は小テスト中だから、隣の子に聞いちゃだめですよ」
「なんで?」
「な、なんでって……」
転校生のあまりの返答に、先生は絶句していた。
「なあせんせー、これいつまでやんの?」
「はい?」
「もうおれ、飽きたんだけど」
そして爆弾発言。今度こそ先生は言葉を失った。
「……もういいです……」
そう言った先生は哀愁が漂っていた。
――この午前中、ずっとこんな感じだった。
そして俺はその間ずっと話しかけられまくって、午前中にして気力がもう限界だった。
話しかけてくる声が大きいから只でさえ痛い頭に響くし……せっかく熱下がったのに、また上がりそう……。
――キーンコーンカーンコーン……
チャイムが鳴り、ようやく午前の授業が終わった。や、やっと休憩だ……。
また話しかけられてはたまらないと、即座に立ち上がり医務室へと向かった。
診察を終えていつもの空き教室で祥吾に再会した。
ハルはいないので、今日は一日サボりのようだ。久しぶりに会いたかったんだけどなあ……。
祥吾は憔悴した俺の顔を見て、「だから言ったのに……」と呆れた。
「転校生には関わらない方がいいって言ったのに」
「俺だってそうしたかったけど、転校生くん、俺の席の隣だったんだよ……」
「えっ……マジで?」
既にどっと疲れている俺は、結局昼食は一口も口にできず、薬だけ胃に流し込んだ。
「また午後もあの転校生くんと隣か……、っゲホゲホッ!」
ため息を吐いた途端に咳き込んでしまい、祥吾に背中をさすられた。
まだ風邪も完全に治っていない。
「大丈夫?まだ本調子じゃないんだし、今日はもう帰ったら?」
「この程度で帰ってたら俺、お前と一緒に卒業できないよ。それは困るだろ」
「それは、そうだけど……無理だけはしないでね」
「わかってるって」
教室の前で祥吾と別れて中に入ると、「しゅうじー!」と大きな声で呼ばれた。ウッ、頭に響く……。
「……な、何?」
「せんせーに、これ渡せっていわれた!しゅうじとおれ、いっしょなんだって!!」
「何が……?」
転校生の手から渡されたのは、補習授業の案内文だった。
出席日数の足りない生徒や中間テストの結果が思わしくなかった生徒のための補習らしい。
俺の出席日数が足りないのは明らかだし、この案内を貰うのは当然だ。
それはそうなのだが……
……補習のときまで転校生と一緒なのか……。
「……そう……、ありがとう」
「おう!!」
嬉しそうな転校生をよそに、俺は頭痛が増した。
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午後の授業を、俺は何とか薬で誤魔化しつつ乗り切った。だが、今日はこれから補習授業が残っている。
「柊、本当に大丈夫?補習、受けられる?大分顔色悪くなってるけど……」
「さっき薬もう一回飲んだし、平気だよ」
「え、また飲んじゃったの?間隔早くない?」
「でも、咳とか頭痛い方がつらいし……」
「そんなこといって、胃まで痛めても知らないよ?」
「う……」
祥吾に言われて、過去の苦い経験が思い起こされた。
この学校に入学する前、どうしても頭の痛みが治まらず鎮痛剤をあまり間隔を開けずに飲んだらものの見事に胃が荒れて悲惨なことになったのだ。
頭の痛さプラス気持ち悪さが加わり、あのときは本当にひどい思いをした。
「だ、大丈夫。胃薬も一緒に飲んだから……多分」
「はあ……、もう仕方ないなあ」
薬漬けの兄に対して、祥吾は呆れ気味だった。
祥吾はきつかったらすぐ先生に言うんだよと俺に念を押し、陸上部の放課後練習へ向かっていった。
弟に心配かけっぱなしの至らない兄でホントごめん……。
祥吾が去ると、横から大きな声で呼ばれた。
「しゅうじー!ほしゅう行こうぜー!」
「……ッ、う、うん。行こうか……」
眼鏡と髪でよくわからないが、多分満面の笑みを浮かべているであろう転校生に、俺は頭の痛みに顔を顰めつつ返事した。
本当、その大きな声良く出るね……。
「たのもー!!」
補習の行われる教室に着いた途端、そんなことを叫びながら転校生が勢いよく扉を開けた。
「……道場破りでもする気?」
「ともだちが、扉を開けるときはこういっとけばいいっていってたんだ!!」
「どういう友達?」
ちょっと不思議な転校生の友達も、やはりちょっと不思議なようだ。
教室にはまだ誰もいなかったが、すでに三つの机上にプリントが置かれていた。とりあえずあのプリントの置かれている席に座ればいいのかな。
「おれ、ここ!!」
転校生が元気よく真ん中の、教卓の前の席に着いたので、俺はその左隣、窓側の席に着いた。
席に着いてからも転校生は本当に良く喋るなあと感心してしまうほどにずっと話続けていた。その大半が『ともだち』の話だった。
楽しそうに『ともだち』の話をする彼の様子は、本当にその『ともだち』が好きなんだと伝わってきたが、相槌を打つのも大分疲れてきた。
「んで、きょうやが――」
頭痛が再発し始めたころ、ガラリと教室の扉が開かれた。
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