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波乱#3
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「……ふ、風紀副委員長……」
「なんでこんなところに……」
風紀副委員長と呼ばれた人は、鋭い眼光で三人を睨み付けていた。
鍛えているのか体ががっしりとしていて、とても貫禄のある人だった。
「校内での暴力沙汰は、一発退学もあり得る。それをわかっていての行動か?」
副委員長はぎりっとさらに腕を掴む手の力を強めた。
腕を掴まれた人は、痛みに顔をゆがませた。
「っ……!」
「今回は未遂ということで見逃してやるが、次は覚悟しておくんだな」
副委員長がそう言って腕を話すと、三人は苦々しい顔をしてその場を去っていった。
「ふん……」
つまらなそうに鼻を鳴らす副委員長に、俺は頭を下げた。
「……あ、あの、ありがとうございました」
「それはいい。だが君も、暴力を呼ぶような挑発はするな。正直今のは、無謀としか言えなかったぞ」
「いえ……何とかするつもりではいたんですが……」
「何とかとは?」
「挑発に乗って殴りかかってきたら、その瞬間にこれで気絶させようかと思ってました」
俺はそう言って、小型のスタンガンをポケットから出した。
それを見た副委員長は、しばらくぽかんとした後、笑いだした。
「ハハハ!なんだ、なかなか肝が据わっているじゃないか、君。ただでやられるつもりではなかったのか」
副委員長は笑いながら俺の肩を叩いた。
「ところで君、名前は?」
「あ……、一年A組の二宮柊司です」
「二宮……ああ、生徒会長のデート相手になっていた……」
「……ご存じなんですね」
「風紀委員は今度のデートの間も警備に入るからな、誰と誰がどこでデートするかも把握しておかなければいけないんだ」
「な、成程……」
副委員長曰く、新歓の間も風紀委員はイベントには参加せず、審判と警備を担っていたらしい。
また、新歓が終わってデート相手が決まった今の時期は、こういった親衛隊からのデート相手への嫌がらせや暴力行為が増えるため、休み時間には、今いるゴミ捨て場のような人気のない場所を中心に、見回りを行っているようだ。
俺のピンチに絶妙なタイミングで駆けつけてくれたのも、そういった事情があったからだった。
大変だな、風紀委員って……
「ああ、そうだ。まだ自己紹介をしていなかったな。俺は風紀副委員長をしている、二年の桜城壮太だ。よろしくな」
「こ、こちらこそ……」
「これからもこういったことはあるかもしれないから、あまり一人にはならないようにするんだぞ。あと、先程のような無謀なこともしないように」
「はい……すみませんでした」
副委員長に窘められて頭を下げたとき、ぐらっと視界が揺れ、よろけたところを副委員長に支えられた。
「大丈夫か?」
「あ、だ……大丈夫です。ちょっと立ち眩みがしただけです」
「……そうか。無理はするなよ」
「はい」
支えてくれた副委員長にお礼を言いつつ、拾った弁当箱を丁寧にハンカチに包んだ。
「あ……あの副委員長。お願いがあるんですが……」
「なんだ?」
「このこと、うちの弟……二宮祥吾には言わないようにしてください……確実に暴走するので」
「いいのか」
「これ以上暴力沙汰が起きてほしくはないでしょう?風紀委員としても」
「……お前の弟、そんなに狂暴なのか」
「俺が絡む時は……」
副委員長は引きつった顔をしながらも頷いてくれた。
「わかった、今回のことは黙っておこう。しかし、次このようなことがあったら、然るべきところに報告するからな。そうされたくなければ、気を付けろよ」
「は……はい。肝に銘じます……」
そのあと俺は副委員長に送られて、教室に戻った。
そして昼休み、医務室での診察を終えた俺は、昼食を食べるときにいつも使っている空き教室へと向かった。
最近は、俺が診察に行っている間は祥吾とハルには先に空き教室で待ってもらうようになっていた。
弁当箱の中身がないことに案の定祥吾が反応したが、途中で転んで中身をすべてこぼしてしまったと誤魔化した。
そう言えば、祥吾は弁当の中身がないことより、俺の体の方に気を取られる。
弟を騙しているようで気は引けるが……いやがらせされているとバレるよりはいい。
「転んだって、怪我はしてないの!?大丈夫!?」
「してないしてない。篠北先生にも診てもらって、どこも怪我してないって言ってたから!」
「よかった……。もー、気を付けてよ!柊はドジっ子なんだから!」
「ごめんごめん」
「それじゃあ今日はオレのお弁当半分こしよ!」
思惑通り、祥吾は引っかかってくれた。
……ごめん、祥吾。俺、お前にこれ以上心配かけたくないんだ。
「……」
だが、祥吾を騙すのに必死で俺は、もう一人の勘の鋭い存在を忘れていた。
「なんでこんなところに……」
風紀副委員長と呼ばれた人は、鋭い眼光で三人を睨み付けていた。
鍛えているのか体ががっしりとしていて、とても貫禄のある人だった。
「校内での暴力沙汰は、一発退学もあり得る。それをわかっていての行動か?」
副委員長はぎりっとさらに腕を掴む手の力を強めた。
腕を掴まれた人は、痛みに顔をゆがませた。
「っ……!」
「今回は未遂ということで見逃してやるが、次は覚悟しておくんだな」
副委員長がそう言って腕を話すと、三人は苦々しい顔をしてその場を去っていった。
「ふん……」
つまらなそうに鼻を鳴らす副委員長に、俺は頭を下げた。
「……あ、あの、ありがとうございました」
「それはいい。だが君も、暴力を呼ぶような挑発はするな。正直今のは、無謀としか言えなかったぞ」
「いえ……何とかするつもりではいたんですが……」
「何とかとは?」
「挑発に乗って殴りかかってきたら、その瞬間にこれで気絶させようかと思ってました」
俺はそう言って、小型のスタンガンをポケットから出した。
それを見た副委員長は、しばらくぽかんとした後、笑いだした。
「ハハハ!なんだ、なかなか肝が据わっているじゃないか、君。ただでやられるつもりではなかったのか」
副委員長は笑いながら俺の肩を叩いた。
「ところで君、名前は?」
「あ……、一年A組の二宮柊司です」
「二宮……ああ、生徒会長のデート相手になっていた……」
「……ご存じなんですね」
「風紀委員は今度のデートの間も警備に入るからな、誰と誰がどこでデートするかも把握しておかなければいけないんだ」
「な、成程……」
副委員長曰く、新歓の間も風紀委員はイベントには参加せず、審判と警備を担っていたらしい。
また、新歓が終わってデート相手が決まった今の時期は、こういった親衛隊からのデート相手への嫌がらせや暴力行為が増えるため、休み時間には、今いるゴミ捨て場のような人気のない場所を中心に、見回りを行っているようだ。
俺のピンチに絶妙なタイミングで駆けつけてくれたのも、そういった事情があったからだった。
大変だな、風紀委員って……
「ああ、そうだ。まだ自己紹介をしていなかったな。俺は風紀副委員長をしている、二年の桜城壮太だ。よろしくな」
「こ、こちらこそ……」
「これからもこういったことはあるかもしれないから、あまり一人にはならないようにするんだぞ。あと、先程のような無謀なこともしないように」
「はい……すみませんでした」
副委員長に窘められて頭を下げたとき、ぐらっと視界が揺れ、よろけたところを副委員長に支えられた。
「大丈夫か?」
「あ、だ……大丈夫です。ちょっと立ち眩みがしただけです」
「……そうか。無理はするなよ」
「はい」
支えてくれた副委員長にお礼を言いつつ、拾った弁当箱を丁寧にハンカチに包んだ。
「あ……あの副委員長。お願いがあるんですが……」
「なんだ?」
「このこと、うちの弟……二宮祥吾には言わないようにしてください……確実に暴走するので」
「いいのか」
「これ以上暴力沙汰が起きてほしくはないでしょう?風紀委員としても」
「……お前の弟、そんなに狂暴なのか」
「俺が絡む時は……」
副委員長は引きつった顔をしながらも頷いてくれた。
「わかった、今回のことは黙っておこう。しかし、次このようなことがあったら、然るべきところに報告するからな。そうされたくなければ、気を付けろよ」
「は……はい。肝に銘じます……」
そのあと俺は副委員長に送られて、教室に戻った。
そして昼休み、医務室での診察を終えた俺は、昼食を食べるときにいつも使っている空き教室へと向かった。
最近は、俺が診察に行っている間は祥吾とハルには先に空き教室で待ってもらうようになっていた。
弁当箱の中身がないことに案の定祥吾が反応したが、途中で転んで中身をすべてこぼしてしまったと誤魔化した。
そう言えば、祥吾は弁当の中身がないことより、俺の体の方に気を取られる。
弟を騙しているようで気は引けるが……いやがらせされているとバレるよりはいい。
「転んだって、怪我はしてないの!?大丈夫!?」
「してないしてない。篠北先生にも診てもらって、どこも怪我してないって言ってたから!」
「よかった……。もー、気を付けてよ!柊はドジっ子なんだから!」
「ごめんごめん」
「それじゃあ今日はオレのお弁当半分こしよ!」
思惑通り、祥吾は引っかかってくれた。
……ごめん、祥吾。俺、お前にこれ以上心配かけたくないんだ。
「……」
だが、祥吾を騙すのに必死で俺は、もう一人の勘の鋭い存在を忘れていた。
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