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波乱#2
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行く先々で見定めるような視線を感じながら午前の授業を受け、ようやく昼休みになった。
「なんで会長が柊のデート相手になってんの!!??」
祥吾は教室に入ってくるなり、バン、と俺の机を叩いて怒鳴った。
「た、多分会長に運ばれたときに捕獲判定されたんじゃないかと……」
「柊を俵担ぎして運ぶような奴が柊のデート相手なんて許せない!!オレ、抗議してくる!!」
「お、おい!祥!待てって!」
今にも生徒会室へと走りだそうとした祥吾を慌てて引き留めた。
「何で止めるの!?柊だって会長とデートなんかしたくないでしょ!?」
「ちょっ……そういうこと大声でいうな!……お前、ちょっとこい!!」
憤慨する祥吾を引っ張り、空き教室へと連れて行った。
「もう!どうしてよ!柊だって無理矢理好きでもない人とデートなんかしたくないでしょ!」
「そ、そりゃ俺だって、会長とデートなんて恐れ多くてしたくないけど……断ったら断ったで、角が立つんだよ……!」
「何それ!?」
俺は今朝北峯君に言われたことを祥吾に話した。
「親衛隊……本当に厄介な存在だな……!」
祥吾はかなり怒り心頭だった。
昨日、自分の親衛隊に追いかけられて頬を傷つけられたこともあり、祥吾の親衛隊に対する好感度は既に最低値のようだった。
「あとお前、あんなところで会長の悪口とか言うな。お前まで親衛隊に目を付けられる」
「別にそれくらいいいよ!柊の初デート相手を会長に取られるくらいなら、親衛隊ごとき返り討ちにしてやる!」
「駄目だっての!」
完全に目の据わっている祥吾を必死で止めた。
普段は割と冷静な祥吾だが、俺が絡むと本当に何をするかわからない。
もし祥吾が本当に親衛隊を返り討ちにしてしまったら、祥吾まで目を付けられて、学校に居づらくなることは必至だ。
俺はともかく……祥吾は期待の陸上部エースだし……そんなことにはさせられない。
「俺なら大丈夫だから、絶対にそういうことはするな。俺は、お前に傷ついてほしくない」
「……でも、それはオレだって同じなんだよ?学校での立場より、柊が大事なんだよ。オレだって、柊には傷ついてほしくないよ……」
「……それは、わかってるよ」
祥吾が、俺と同じ気持ちだってことは俺だってよくわかってる。
生まれてから、ずっと一緒の双子だから。
……でも、俺は兄だ。
体は弱っちいけど、それでもお兄ちゃんだから。
――弟を守りたいという気持ちは、いっぱしにあるんだ。
「俺だって、自分の身くらいは自分で守れるよ。……祥は、俺の言うことは信用ならない?」
「っ!そ、そんなこと……あるわけないじゃん……。その言い方は、ずるいよ」
……自分でも、ずるい言い方だと思う。
でも、こう言ってしまえば、祥吾はああ言うしかなくなる。
「じゃあ、この件に関しては、何も言うなよ?約束な」
「……わかった。けど……それでももし柊に何かあったら、そのときは容赦しないから。それだけは覚えといて」
「……お、おう」
低い声で宣言した祥吾を見て、俺は、マジでしっかり自分の身を守らないとヤバいな……と気を引き締めた。
……でも、俺は正直舐めていた。
この学校の親衛隊の、本当の怖さというやつを。
***
――その次の日から。
目立つほどではないが、地味に嫌な嫌がらせが始まった。
下駄箱の靴を隠されたり、ノートに落書きされたり。
匿名の悪口が書かれた手紙が机に入っていたりもした。
でも、これくらいなら許せた。
少々面倒ではあるが、やり過ごせる。
だけど……この日起きたことは、流石に許せなかった。
祥吾が俺の為に毎朝作ってくれているお弁当が、弁当箱ごと外のゴミ捨て場に捨てられていたのだ。
部活で毎日忙しいのに、それでも毎日早起きして、小食な俺でも十分な栄養を取れるようにいつも工夫して作ってくれている弁当を、あろうことかゴミ箱に捨てるなんて。
弁当箱をゴミ捨て場から拾い上げていると、どこからかくすくすと笑い声が聞こえた。
ふつふつと腹の底から怒りが沸き上がってくる。
「……なあ、アンタらさ」
今、俺を見ているだろう連中へ向け、話しかけた。
当然だが誰も返事はしない。
「靴隠すとか、落書きするとかはいいよ。困るのは俺だけだ。でも……流石にこれは、許せないんだけど」
隠れてないで出てこいよ、と言うと、物陰から三人の男子生徒が現れた。全員顔はいいが、下衆びた笑みを浮かべていた。
そのうちの一人が、ふんと鼻を鳴らした。
「許せないって、どうするつもり?」
「……」
「殴り合いでもするの?君、体弱いんでしょ?君がそんなことできるのかな~?」
くすくすと笑いながら、三人の男は俺に迫ってくる。
……駄目だ、怯むな!
ビビったら、負けだ。
震えそうになる足を、必死に奮い立たせて押さえつけた。
「どうするのか、教えてよ」
一人がそう言うと同時に、俺の方へ手を伸ばしてきた――
――バシッ!!
「……?」
しかし、その手は俺まで届いてこなかった。
いつの間にか瞑っていた目を、恐る恐る開いた。
「……一人に寄ってたかって、何をしているんだ?」
誰かが、俺を殴ろうとした人の腕を、がっしりと掴んでいた。
「なんで会長が柊のデート相手になってんの!!??」
祥吾は教室に入ってくるなり、バン、と俺の机を叩いて怒鳴った。
「た、多分会長に運ばれたときに捕獲判定されたんじゃないかと……」
「柊を俵担ぎして運ぶような奴が柊のデート相手なんて許せない!!オレ、抗議してくる!!」
「お、おい!祥!待てって!」
今にも生徒会室へと走りだそうとした祥吾を慌てて引き留めた。
「何で止めるの!?柊だって会長とデートなんかしたくないでしょ!?」
「ちょっ……そういうこと大声でいうな!……お前、ちょっとこい!!」
憤慨する祥吾を引っ張り、空き教室へと連れて行った。
「もう!どうしてよ!柊だって無理矢理好きでもない人とデートなんかしたくないでしょ!」
「そ、そりゃ俺だって、会長とデートなんて恐れ多くてしたくないけど……断ったら断ったで、角が立つんだよ……!」
「何それ!?」
俺は今朝北峯君に言われたことを祥吾に話した。
「親衛隊……本当に厄介な存在だな……!」
祥吾はかなり怒り心頭だった。
昨日、自分の親衛隊に追いかけられて頬を傷つけられたこともあり、祥吾の親衛隊に対する好感度は既に最低値のようだった。
「あとお前、あんなところで会長の悪口とか言うな。お前まで親衛隊に目を付けられる」
「別にそれくらいいいよ!柊の初デート相手を会長に取られるくらいなら、親衛隊ごとき返り討ちにしてやる!」
「駄目だっての!」
完全に目の据わっている祥吾を必死で止めた。
普段は割と冷静な祥吾だが、俺が絡むと本当に何をするかわからない。
もし祥吾が本当に親衛隊を返り討ちにしてしまったら、祥吾まで目を付けられて、学校に居づらくなることは必至だ。
俺はともかく……祥吾は期待の陸上部エースだし……そんなことにはさせられない。
「俺なら大丈夫だから、絶対にそういうことはするな。俺は、お前に傷ついてほしくない」
「……でも、それはオレだって同じなんだよ?学校での立場より、柊が大事なんだよ。オレだって、柊には傷ついてほしくないよ……」
「……それは、わかってるよ」
祥吾が、俺と同じ気持ちだってことは俺だってよくわかってる。
生まれてから、ずっと一緒の双子だから。
……でも、俺は兄だ。
体は弱っちいけど、それでもお兄ちゃんだから。
――弟を守りたいという気持ちは、いっぱしにあるんだ。
「俺だって、自分の身くらいは自分で守れるよ。……祥は、俺の言うことは信用ならない?」
「っ!そ、そんなこと……あるわけないじゃん……。その言い方は、ずるいよ」
……自分でも、ずるい言い方だと思う。
でも、こう言ってしまえば、祥吾はああ言うしかなくなる。
「じゃあ、この件に関しては、何も言うなよ?約束な」
「……わかった。けど……それでももし柊に何かあったら、そのときは容赦しないから。それだけは覚えといて」
「……お、おう」
低い声で宣言した祥吾を見て、俺は、マジでしっかり自分の身を守らないとヤバいな……と気を引き締めた。
……でも、俺は正直舐めていた。
この学校の親衛隊の、本当の怖さというやつを。
***
――その次の日から。
目立つほどではないが、地味に嫌な嫌がらせが始まった。
下駄箱の靴を隠されたり、ノートに落書きされたり。
匿名の悪口が書かれた手紙が机に入っていたりもした。
でも、これくらいなら許せた。
少々面倒ではあるが、やり過ごせる。
だけど……この日起きたことは、流石に許せなかった。
祥吾が俺の為に毎朝作ってくれているお弁当が、弁当箱ごと外のゴミ捨て場に捨てられていたのだ。
部活で毎日忙しいのに、それでも毎日早起きして、小食な俺でも十分な栄養を取れるようにいつも工夫して作ってくれている弁当を、あろうことかゴミ箱に捨てるなんて。
弁当箱をゴミ捨て場から拾い上げていると、どこからかくすくすと笑い声が聞こえた。
ふつふつと腹の底から怒りが沸き上がってくる。
「……なあ、アンタらさ」
今、俺を見ているだろう連中へ向け、話しかけた。
当然だが誰も返事はしない。
「靴隠すとか、落書きするとかはいいよ。困るのは俺だけだ。でも……流石にこれは、許せないんだけど」
隠れてないで出てこいよ、と言うと、物陰から三人の男子生徒が現れた。全員顔はいいが、下衆びた笑みを浮かべていた。
そのうちの一人が、ふんと鼻を鳴らした。
「許せないって、どうするつもり?」
「……」
「殴り合いでもするの?君、体弱いんでしょ?君がそんなことできるのかな~?」
くすくすと笑いながら、三人の男は俺に迫ってくる。
……駄目だ、怯むな!
ビビったら、負けだ。
震えそうになる足を、必死に奮い立たせて押さえつけた。
「どうするのか、教えてよ」
一人がそう言うと同時に、俺の方へ手を伸ばしてきた――
――バシッ!!
「……?」
しかし、その手は俺まで届いてこなかった。
いつの間にか瞑っていた目を、恐る恐る開いた。
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