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新入生歓迎会#4
しおりを挟む目を開けたら、白い天井が目に入った。
なにこれデジャブ。
「起きたかい?」
するとカーテンが開き、篠北先生が顔を出した。
「……おはようございます……」
「うん、おはよう。気分はどう?」
「……口の中がすっぱいです」
「だろうね。めちゃくちゃ吐いてたからね」
お水いる?と聞かれたので、頷くと篠北先生が水差しを持ってきてくれた。
水を飲んだら、口の中の酸っぱさは少し収まった。
そうか、吐いたからこんなにすっぱい感じがしたのか……
ところで俺、なんで吐いたんだっけ……?
寝たままぼんやりと考えて……俺は思い出した。
歓迎会の最中、大勢の人に追いかけられている会長に出くわして、持ったまま走られて……最終的にその場でリバースしたのを。
しかも記憶が正しければ、俺は会長の服の上に……リバースしたような……
「……う、うわああ……やっちまった……」
よりにもよって、この学校のアイドルとも呼べる存在である生徒会長にゲロをぶちまけるとは……!
「し、篠北先生、生徒会長は……」
「会長君なら、気を失った君をここまで運んできたあと、すぐに呼ばれて行ってしまったよ」
「あの、会長……怒っていたりとかは……」
「怒ってはいなかったと思うよ~。すぐ出て行っちゃったからわからないけどね」
篠北先生はそう言ったが、服の上にゲロぶちまけられて怒らない人なんていないだろう。
本当に俺、なんということをしてしまったんだ……
「それで、歓迎会は……?」
「今は閉会式をやっているところじゃないかな」
「あ、そうですか……」
そのとき、医務室の扉が開かれた。
「……シュウ!」
「……え?」
現れたのはハルだった。
ハルは荒い息のまま、一直線に俺が寝ているベッドまでやってきた。
「は、ハル。なんでここに?」
「……歓迎会終わったから。迎えに来たんだよ」
「え……?」
「僕が呼んだんだよ~。だって、『友達』なんでしょ?」
どうやら篠北先生がハルを呼んだらしい。
そしてハルは、篠北先生の友達発言を否定しなかった。
……どうしよう。嬉しい。
「シュウ、もう平気か」
「あ……うん。大丈夫」
「じゃあ帰るぞ」
「う、うん」
ハルに促され、ベッドから起き上がったが、すぐにその場でへたりこんでしまった。
「あ……あれ?」
「どうした」
「足に力が入んない……」
「……乗れ。運んでやる」
「でも……悪いよ」
「歩けねえくせに遠慮してんじゃねえ。いいから乗れ」
……情けないな、俺。
自分の貧弱ぶりに凹みつつ、目の前でしゃがんでくれたハルの背中に乗った。
――ハルの背中……大きくて、あったかいなあ……
その背中の暖かさに、俺は再び夢の中へと旅立った。
***
「……すー……」
「……寝やがった」
「彼には予想以上に負担だったんだろうね~。……それより、ちょっと厄介なことになっちゃったんじゃない?それ」
「……」
治良は篠北が示した、柊司の手首にある赤いランプが点灯している端末の表示を見て、顔を顰めた。
――【捕獲者:北條亮介】
「面倒なことにならないといいけどね」
「……チッ」
治良は少々乱暴に端末を外すと、篠北へ投げた。
「それ、返しとけ」
「ええ~……僕が?まあいいけど……」
面倒だという表情を隠しもしない篠北などお構いなしに、治良は柊司を背負って医務室を出た。
「……お前、のんきに寝てる場合じゃねえぞ……」
寮までの道すがら、柊司の寝息を聞きながら治良は、波乱の幕開けを予感していた。
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