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新入生歓迎会#3
しおりを挟む待つこと数分、ようやく壇上に生徒会の人たちが上がった。
『あーあー、マイクテス、マイクテス。高等科の皆さん、本日はお集まりいただきありがとうございまーす!』
マイクを持って話し始めたのは天沢会計だった。
『まぁ、前置きはこれくらいにして、皆さんお待ちかねの新入生歓迎会、早速開催しまーす!』
その声と共に、野太い叫び声が講堂中に響き渡った。
やっぱり熱いわ……
『はーい皆気合十分でボク嬉しいでーす!じゃあ、始める前にもう一度ルール説明するよ!美里ちゃーんおねがーい!』
『ちゃん付けしないでください。気持ち悪いので』
マイクが副会長に渡った。
副会長毒舌だな……
『この鬼ごっこはすべての人間が鬼でもあり、逃げる方でもあるサバイバル方式です。範囲は高等科の敷地内すべてですが、建物内に入るのは禁止です。端末は初期状態では青いランプがついているはずですので、まず確認してください』
見ると、確かに端末は青いランプが点灯していた。
『青いランプはまだ捕まっていないことを表します。そして、端末にはランプのほかにボタンがあると思います。人を捕まえる場合、自分の端末を相手の端末に近づけながら、相手の端末のボタンを押し、相手の端末が赤いランプに変わると捕えられたということになります。逆に、赤いランプになった方は捕まったということになりますので、その場合はこの講堂に戻ってくるようにしてください』
成程……そうやって捕まえるのか。
鬼ごっこなのに無駄にハイテクだな……
『協力して人を捕まえるのはありですが、既に赤いランプが点灯しているのにまだ捕まっていない別の人に協力したりするような行為は即失格となりますので、ご注意ください。各場所に設置しているカメラで見ていますのでね』
副会長のルール説明が終わり、再びマイクは会計に渡った。
『はーい、ではもううずうずしてると思うので、新入生歓迎会はじめまーす!それじゃあ皆、所定の位置に行ってくださーい!』
その合図とともに、全校生徒たちが一斉に移動を開始した。
スタートの位置は、公平を期す為生徒会が指定した所定の位置に行って始めることになっていた。
「お前、ちゃんと校舎裏来いよ」
「……わかってる」
結局俺はハルに捕まえてもらうことにした。
ハルなら安心だよね。友達だし。
ハルとは特別棟の校舎裏で落ち合うことになっていた。時々ブチ模様の猫と遊ぶところだ。
あそこなら俺のスタート位置から近いし、人もあまり来ないからいいだろうと判断したのだ。
俺のスタート位置は、特別棟の近くのテニスコート前だった。
ハルと別れ、スタート位置に付いた俺は、始まりの合図が鳴るのを待っていた。
『皆さん、所定の位置に付きましたね!では始めるよー!スタート!』
そんな放送とともに、新入生歓迎会は始まった。
「よし、じゃあ早速校舎裏に……」
――ドドドド……
「……ん?なんか地響きが……」
『会長ー!!待ってくださーい!!』
「っ、くんじゃねえ!」
『皆!回り込んで囲むんだよ!』
『『『了解!!』』』
ドドドド……――
早速生徒会の会長が沢山の生徒に追いかけられて目の前を走っていった。
「……人気者は大変だなあ」
今の人たち、皆会長狙いなのか……協力して会長を捕まえようとしてるんだな……
でも、デートできるのって実際に捕まえた一人だけなんだよな?
最終的にはどうするんだろうか?
「……ま、そんなのどうでもいいか……行こ」
そう言いながら歩き出したときだった。
「……!おい、そこどけ!!」
「ん?」
そんな叫び声がして振り向くと、必死の形相の会長と、それを追いかける軍団がこっちに迫ってきていた。
……いやさっき向こうに走ってったじゃん!なんでこっち来てんの!?
「うわあああ!!?」
叫んで俺も集団から逃げるように走ったが、元々走ることに適していない体である上、人酔いして気分が悪くなっていた俺は、すぐに足がもつれてその場で盛大にこけそうになった。
……が、地面とキスする寸前に、会長に体を抱えられた。
「――えっ!?」
「悪いがこのまま逃げさせてもらうぞ!」
「へ?え、えええええええ!!?」
そして会長は俺を持ったまま、一気に走り出した。
後ろからは「きゃー何あれ!?」とかいう叫び声が聞こえた。
「ちょ、ちょっとまっ……」
「喋るな、舌噛むぞ!」
「は!?」
そういって会長はさらにスピードを上げ、抱えられている俺は、ぐわんぐわんと揺さぶられた。
「ちょ、ほんとに、まっ……」
死ぬ!死ぬから待って!という俺の叫びは声にならなかった。
やがて会長の行く手には、特別棟と本校舎の間を仕切っているフェンスが現れた。
「飛ぶぞ!捕まっておけ!」
「……へ!?……う、わああああああ!!」
そして、会長は飛んだ。
俺を持ったまま、二メートルはあるフェンスを軽々と飛び越え、向こう側に美しく着地を決めた。
「ぐえっ!」
会長が着地を決めた瞬間、カエルが潰されたような声が出た。
『いやー!会長ー!』
『待ってくださいー!!』
悔しがる追手の声を背に、さらに会長は走っていった。
「……ここまでくれば大丈夫だろう」
そんな声とともに、ようやく会長は立ち止まった。
会長は少し息が切れていたものの、疲れた様子は見せていなかった。
しかし、俺はというと……
「おい、お前。大丈夫か……」
「……う、ぷ、っ」
「……いやお前ちょっと待て。ここではやめろ、ここでは……」
「う、おえええええええ……!」
「やめろおおおお!!」
会長に抱えられて上下左右に揺さぶられまくった結果、見事に酔い、盛大にリバースした。
――会長の服の上に。
「ちょ……マジかよ!?おい!しっかりしろ!」
会長の焦った声を最後に、俺はそのまま意識を失った。
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