上 下
20 / 41

新入生歓迎会#3

しおりを挟む

待つこと数分、ようやく壇上に生徒会の人たちが上がった。

『あーあー、マイクテス、マイクテス。高等科の皆さん、本日はお集まりいただきありがとうございまーす!』

マイクを持って話し始めたのは天沢会計だった。

『まぁ、前置きはこれくらいにして、皆さんお待ちかねの新入生歓迎会、早速開催しまーす!』

その声と共に、野太い叫び声が講堂中に響き渡った。
やっぱり熱いわ……

『はーい皆気合十分でボク嬉しいでーす!じゃあ、始める前にもう一度ルール説明するよ!美里ちゃーんおねがーい!』
『ちゃん付けしないでください。気持ち悪いので』

マイクが副会長に渡った。
副会長毒舌だな……

『この鬼ごっこはすべての人間が鬼でもあり、逃げる方でもあるサバイバル方式です。範囲は高等科の敷地内すべてですが、建物内に入るのは禁止です。端末は初期状態では青いランプがついているはずですので、まず確認してください』

見ると、確かに端末は青いランプが点灯していた。

『青いランプはまだ捕まっていないことを表します。そして、端末にはランプのほかにボタンがあると思います。人を捕まえる場合、自分の端末を相手の端末に近づけながら、相手の端末のボタンを押し、相手の端末が赤いランプに変わると捕えられたということになります。逆に、赤いランプになった方は捕まったということになりますので、その場合はこの講堂に戻ってくるようにしてください』

成程……そうやって捕まえるのか。
鬼ごっこなのに無駄にハイテクだな……

『協力して人を捕まえるのはありですが、既に赤いランプが点灯しているのにまだ捕まっていない別の人に協力したりするような行為は即失格となりますので、ご注意ください。各場所に設置しているカメラで見ていますのでね』

副会長のルール説明が終わり、再びマイクは会計に渡った。

『はーい、ではもううずうずしてると思うので、新入生歓迎会はじめまーす!それじゃあ皆、所定の位置に行ってくださーい!』

その合図とともに、全校生徒たちが一斉に移動を開始した。
スタートの位置は、公平を期す為生徒会が指定した所定の位置に行って始めることになっていた。

「お前、ちゃんと校舎裏来いよ」
「……わかってる」

結局俺はハルに捕まえてもらうことにした。
ハルなら安心だよね。友達だし。
ハルとは特別棟の校舎裏で落ち合うことになっていた。時々ブチ模様の猫と遊ぶところだ。
あそこなら俺のスタート位置から近いし、人もあまり来ないからいいだろうと判断したのだ。

俺のスタート位置は、特別棟の近くのテニスコート前だった。
ハルと別れ、スタート位置に付いた俺は、始まりの合図が鳴るのを待っていた。

『皆さん、所定の位置に付きましたね!では始めるよー!スタート!』

そんな放送とともに、新入生歓迎会は始まった。


「よし、じゃあ早速校舎裏に……」

――ドドドド……

「……ん?なんか地響きが……」

『会長ー!!待ってくださーい!!』
「っ、くんじゃねえ!」
『皆!回り込んで囲むんだよ!』
『『『了解!!』』』

ドドドド……――

早速生徒会の会長が沢山の生徒に追いかけられて目の前を走っていった。

「……人気者は大変だなあ」

今の人たち、皆会長狙いなのか……協力して会長を捕まえようとしてるんだな……
でも、デートできるのって実際に捕まえた一人だけなんだよな?
最終的にはどうするんだろうか?

「……ま、そんなのどうでもいいか……行こ」

そう言いながら歩き出したときだった。

「……!おい、そこどけ!!」
「ん?」

そんな叫び声がして振り向くと、必死の形相の会長と、それを追いかける軍団がこっちに迫ってきていた。

……いやさっき向こうに走ってったじゃん!なんでこっち来てんの!?

「うわあああ!!?」

叫んで俺も集団から逃げるように走ったが、元々走ることに適していない体である上、人酔いして気分が悪くなっていた俺は、すぐに足がもつれてその場で盛大にこけそうになった。
……が、地面とキスする寸前に、会長に体を抱えられた。

「――えっ!?」
「悪いがこのまま逃げさせてもらうぞ!」
「へ?え、えええええええ!!?」

そして会長は俺を持ったまま、一気に走り出した。
後ろからは「きゃー何あれ!?」とかいう叫び声が聞こえた。

「ちょ、ちょっとまっ……」
「喋るな、舌噛むぞ!」
「は!?」

そういって会長はさらにスピードを上げ、抱えられている俺は、ぐわんぐわんと揺さぶられた。

「ちょ、ほんとに、まっ……」

死ぬ!死ぬから待って!という俺の叫びは声にならなかった。
やがて会長の行く手には、特別棟と本校舎の間を仕切っているフェンスが現れた。

「飛ぶぞ!捕まっておけ!」
「……へ!?……う、わああああああ!!」

そして、会長は飛んだ。
俺を持ったまま、二メートルはあるフェンスを軽々と飛び越え、向こう側に美しく着地を決めた。

「ぐえっ!」

会長が着地を決めた瞬間、カエルが潰されたような声が出た。

『いやー!会長ー!』
『待ってくださいー!!』

悔しがる追手の声を背に、さらに会長は走っていった。

「……ここまでくれば大丈夫だろう」

そんな声とともに、ようやく会長は立ち止まった。
会長は少し息が切れていたものの、疲れた様子は見せていなかった。
しかし、俺はというと……

「おい、お前。大丈夫か……」
「……う、ぷ、っ」
「……いやお前ちょっと待て。ここではやめろ、ここでは……」
「う、おえええええええ……!」
「やめろおおおお!!」

会長に抱えられて上下左右に揺さぶられまくった結果、見事に酔い、盛大にリバースした。
――会長の服の上に。

「ちょ……マジかよ!?おい!しっかりしろ!」

会長の焦った声を最後に、俺はそのまま意識を失った。


***

しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件

水野七緒
BL
ワケあってクラスメイトの女子と交際中の青野 行春(あおの ゆきはる)。そんな彼が、ある日あわや貞操の危機に。彼を襲ったのは星井夏樹(ほしい なつき)──まさかの、交際中のカノジョの「お兄さん」。だが、どうも様子がおかしくて── ※「目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件」の続編(サイドストーリー)です。 ※前作を読まなくてもわかるように執筆するつもりですが、前作も読んでいただけると有り難いです。 ※エンドは1種類の予定ですが、2種類になるかもしれません。

親衛隊総隊長殿は今日も大忙しっ!

BL
人は山の奥深くに存在する閉鎖的な彼の学園を――‥ 『‡Arcanalia‡-ア ル カ ナ リ ア-』と呼ぶ。 人里からも離れ、街からも遠く離れた閉鎖的全寮制の男子校。その一部のノーマルを除いたほとんどの者が教師も生徒も関係なく、同性愛者。バイなどが多い。 そんな学園だが、幼等部から大学部まであるこの学園を卒業すれば安定した未来が約束されている――。そう、この学園は大企業の御曹司や金持ちの坊ちゃんを教育する学園である。しかし、それが仇となり‥ 権力を振りかざす者もまた多い。生徒や教師から崇拝されている美形集団、生徒会。しかし、今回の主人公は――‥ 彼らの親衛隊である親衛隊総隊長、小柳 千春(コヤナギ チハル)。彼の話である。 ――…さてさて、本題はここからである。‡Arcanalia‡学園には他校にはない珍しい校則がいくつかある。その中でも重要な三大原則の一つが、 『耳鳴りすれば来た道引き返せ』

愉快な生活

白鳩 唯斗
BL
王道学園で風紀副委員長を務める主人公のお話。

モブらしいので目立たないよう逃げ続けます

餅粉
BL
ある日目覚めると見慣れた天井に違和感を覚えた。そしてどうやら僕ばモブという存存在らしい。多分僕には前世の記憶らしきものがあると思う。 まぁ、モブはモブらしく目立たないようにしよう。 モブというものはあまりわからないがでも目立っていい存在ではないということだけはわかる。そう、目立たぬよう……目立たぬよう………。 「アルウィン、君が好きだ」 「え、お断りします」 「……王子命令だ、私と付き合えアルウィン」 目立たぬように過ごすつもりが何故か第二王子に執着されています。 ざまぁ要素あるかも………しれませんね

普通の学園生活を送っていたはずなんだが???

あむ
BL
王道学園で生活する非王道主人公の話です。 主人公総受け、総愛され。 タチとしてある程度の人気があるただのモブ主人公が、学園内の色んな生徒たちと関わっていき……と言った感じの話です。 (タチとして人気はあると言いましたが、そもそも主人公はタチネコなどについての知識は皆無のノンケです) 女の子みたいに守りたくなるような受けも好きですが、普段は男らしい、かっこいい受けが見たかったんです……! ーーーー 初投稿ですよろしくお願いします!

BL学園の姫になってしまいました!

内田ぴえろ
BL
人里離れた場所にある全寮制の男子校、私立百華咲学園。 その学園で、姫として生徒から持て囃されているのは、高等部の2年生である白川 雪月(しらかわ ゆづき)。 彼は、前世の記憶を持つ転生者で、前世ではオタクで腐女子だった。 何の因果か、男に生まれ変わって男子校に入学してしまい、同じ転生者&前世の魂の双子であり、今世では黒騎士と呼ばれている、黒瀬 凪(くろせ なぎ)と共に学園生活を送ることに。 歓喜に震えながらも姫としての体裁を守るために腐っていることを隠しつつ、今世で出来たリアルの推しに貢ぐことをやめない、波乱万丈なオタ活BL学園ライフが今始まる!

処理中です...