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北斗学園の食堂#2

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「あのウエイターさん、これで注文してくださいって言ってたね」
「言ってたな。設備もすげえ……」

祥吾が、テーブルに置いてあったタブレット端末をいじってメニューを見始めた。
どうやらこのタブレット端末は各テーブルに置いてあり、この端末で注文をするとウエイターが品を運んでくるシステムのようだ。
普通学校の食堂って言ったら食券買って、出されたものはセルフで運ぶものだろ!

「お金かかってるな~。流石、北斗学園だね。お金持ち学校だっていう噂通り」
「寄付沢山もらってんだろうな」

北斗学園は、事業家や政治家などの、金持ちのご子息が多く入学していることで有名らしく、寄付がものすごいらしい。
また、その卒業生がさらに成功してその分を母校に寄付したりしているため、北斗学園の財政は当分破綻することはないようだ。

「メニュー多いな~。柊、何食べたい?」
「うーん……ちょっと見せて」

祥吾からタブレットを受け取りメニューを流し見た。

「!?……A5ランクサーロインステーキ!?」

A5ランクのサーロインステーキを食堂で出すとか何考えてんだよ!

「ステーキ食べたいの?」
「いや、いらない……驚いただけ」

すでにこれだけでお腹一杯になってきた。

「それで、どうする?何食べる?」
「……じゃあ、オムライス」
「わかった、じゃあ頼むね。はんぶんこしよ!」

タブレットで注文をすると、数分でオムライスが運ばれてきた。
そして何故か、取り分け用の皿とスプーンも二個ずつ運ばれてきた。

「あれ?このお皿……」
「先ほどシェアをされるとお話されてましたので。不必要であればお下げしますが」
「いえ、大丈夫です!すごく気が利くんですね……」
「北斗学園食堂のウエイターとして、当然のことです」

ウエイターは恭しく頭を下げ、厨房の方へ戻っていった。

「……すごいな、この食堂」
「うん……」

学校の食堂とは思えないサービスぶりだな……。

「まあ、二度手間にならなくてよかったじゃん。はい、柊!あーん」
「え、一口目は祥が食べなよ」
「オムライス食べたいのは柊でしょ?先に食べな!はい、あーん」

祥吾がスプーンに乗せたオムライスは、卵がふわふわとしていて、デミグラスソースがいい匂いをさせていた。
それにぱくりと食いついた。

「……ん、うまい!卵ふわふわだ」
「ホント?オレにもちょーだい」
「うん。はい」

俺もオムライスを掬って祥吾に食べさせた。
それを食べた祥吾は、目を輝かせた。

「ホント、これおいしー!高級店のトロトロオムライスってかんじ!」
「だなー」
「ねー、もう一口!」
「はいはい」
「おいし!はい柊も。あーん」
「ん」

そんな感じで二人でオムライスを消費していたら、急に周りが静かになったような気がして、ふと周りを見回すと、周りの人たちが皆こちらに注目していた。

「……え、祥、なんか見られてるけど……」
「えー?気のせいじゃない?」
「そうか……?ま、まあいいか……」

視線は気にしないようにしつつ、オムライスを半分ほど消費したところで、知った声に話しかけられた。

「珍しいね、二宮君たちが食堂に居るなんて」
「……あ、北峯君」

声をかけてきたのは北峯君だった。なんだかすごく微妙な顔をしている。

「北峯君はもう食事終わり?」
「うん、そうなんだけど……一つ聞いてもいい?」
「え、何?」
「君たちって……互いに食べさせ合わないと、ものが食べられないの?」
「へ?」

食べさせ合う?

「別にいつも通りだけど?こうしないと柊、全然食べようとしないんだもん」
「食べようとしないっていうか、入らないだけなんだけど」
「でもオレが食べさせたらちゃんと食べるから、柊はいい子だよね~」
「だって、わざわざ取ってくれてるもの、食べないわけにもいかないじゃん……」

元々は俺が自分じゃまったく食べないから、見かねた祥吾が少しでも食べさせようとしたのが始まりだった。
そうしてるうちに、自分だけ食べさせてもらっているのも申し訳なくなったので、祥吾にも食べさせていたらこうなっただけだ。

「……ああ、そういうことなんだ。付き合ってるとかそういうことではないんだね」
「え?あははは!北峯君も冗談とかいうんだな!俺達血のつながった双子だからね?」
「冗談ではないんだけどね……割と真面目に」

双子で付き合うとか、ないない!

(……わかってたけど、あっさり否定されると凹むな~……)

祥吾が向かいでひきつった顔をしていたのには、俺は気付かなかった。

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