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初登校#2

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ドアを開けると、教室の中に居たクラスメイト達が一斉にこっちを見てきた。
見られて緊張して、お腹痛くなってきた……

いや、気にしない!目線なんか気にしない!
今までだってあったじゃないか!
何日か休んだ次の日に登校して「あ、今日は居るんだ」みたいな目線で見られたのなんか今までもさんざんあったじゃないか!

(とりあえず席に座ろう……席はどこだ?)

教室を見渡すと、一番後ろの席のうち、窓際から二番目の机がやけに目立っていた。
その席はレースで飾られていて、座面には高級そうな座布団が置かれ、床にはなぜか絨毯が敷かれていた。
そしてその横には、とても目立つ立て看板があった。

おそるおそるその席に近づいて看板を読むと、こう書いてあった。

『これは二宮柊司の席です←部外者が座るな!!(座っていいのは二宮祥吾だけ!)』

(俺の席じゃん!!!)

これやったの祥吾だろ!!何してくれてんだあいつ!!

既に結構人が居るのに、きらびやかに飾られている席には一人も寄っておらず、ぽっかりとそこだけ別空間になっていた。

(そりゃ避けるわ!……座りたくねーーーー!でも座るしかねえ~~~~)

でも他に席はないので、座るしかない。
とりあえず座る前に立て看板だけでも退かそうとしたが、なぜか看板が持ち上がらなかった。

「な、なんでこれ動かないんだ……」

流石の俺でも看板くらいは持ち上げられるはずなのに、看板はびくともしなかった。
何かに引っかかっているのかと思い、看板の下を見てみたら、看板の足が接着剤で固められていた。

祥吾アイツ殴る!!」

殴ったら俺の手の方が死ぬかもしれないけど殴る!!今回ばかりは許せねえ!!


「あ、あの~……君、もしかして二宮柊司君?」
「え?」

するとおそるおそる、といった感じでクラスメイトの一人が声をかけてきた。
どうしよう!緊張する!

「ふぇ、あ、ふぁい!そうでしゅ!」

噛んだ。

「……あっ!い、今のなしで!!」
「……ぷっ、そうでしゅって」
「今のはマジで忘れて!お願い!」
「ふふっ、わかったよ。やっぱり二宮君なんだね。体調はもう大丈夫?」
「あ、うん……。もう平気だけど……」
「そっか、よかった。熱がすごく高かったって聞いたから、心配してたんだよ」
「……え?なんで……」
「双子の弟の二宮祥吾君が、二週間ずっと君のこと話してくれたからね。それはもう……色々と」

声をかけてきたクラスメイトは、そう言って微妙に目をそらした。
その顔はなんだ。

「……色々って何?」
「……個人の趣味嗜好は自由だよね、うん」
「何それ!?」

あいつ俺が居ない間にクラスメイトに一体何を話したんだよ!!?

「大丈夫、言われたことは皆、心にとどめておくから」
「何!?そういう気遣いされるレベルのことあいつ話したの!?」

やっぱり後であいつ殴る!!

「あ、そうだ、自己紹介してなかったね。僕はこのクラスの学級委員の北峯きたみねのぼる。よろしく」
「よ、よろしく」

差し出された手を握り返すと、北峯君はにっこりと笑った。
彼もとても顔がいい。まさにインテリといった感じのイケメンだった。

「わからないことがあったら何でも聞いて」
「あ、ありがとう」
「それじゃそろそろHR始まるから席に戻るね」

席に戻る北峯君を見送り、ふと窓側の隣の席を見ると、まだ誰も居なかった。

(もうHR始まるのに……まだ来てないのか?)

疑問に思ったとき、ガラ、と教室の扉が開かれた。

「……」

現れたのは、着崩した制服に金髪、そして大量にピアスを付けた生徒。

(……あ!)

二回も俺を助けてくれた、あの彼だった。

「……北大路きたおおじだ」
「今日は朝から居るのか……」
「聞いたか?あいつ昨日、不良チーム一つ潰したんだと」
「またかよ……怖っ……」

彼の姿を見た周りのクラスメイトが、ひそひそとそんなことを話しているのが聞こえた。
他のクラスメイトも、彼を見て怯えたような視線を向けていた。

だが、彼はそんな視線などお構いなしに、ずかずかと教室内を進み、俺の隣の席である一番後ろの窓側の席に腰かけた。

(……席、隣だったんだ)

入学式の時も席が隣だったが、ここでも隣とは、なんという偶然だろうか。
柄にもなくうれしさを感じている自分が居た。

二回も助けてもらったし、お礼が言いたいな……話しかけてみようか。

「あ、あの……」

「――はい、皆さんおはようございます。HR始めますよ」

だが、そうしようかと思ったところで、担任の先生が来てしまったため、話しかけられなかった。

――HRの間、彼はずっと眠そうにあくびをしていた。


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