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初登校#1

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「もう今日こそ大丈夫だよね?もうどこも具合悪くないよね?」
「うん、もう平気だ……というかもうそろそろ授業出ないと俺はマジでクラスで居ない存在にされる」

結局あれから完全に回復するまでにさらに一週間かかり、入学式から実に二週間後、俺はようやく初登校の日を迎えた。

「大丈夫だよ!いない存在になんてなってないから!」
「なんだよその自信」
「オレが柊のクラスの人たちに、柊の可愛さや尊さをこの二週間しっかり語っておいたから!」
「何してんだ!?」

おかしい……祥吾って昔はこんなんじゃなかったのに……
俺の可愛い弟はどこに行った……?

「ま、まあいいや……行こうぜ」
「うん!」

弟の変貌に戦慄を覚えつつ、高等科校舎へ向かった。

「あの……祥吾君?」
「何?」
「なんで腕組んでるんだい?」

祥吾は俺よりも背が高いくせに何故か俺の腕に彼女のように腕を絡めて歩いていた。

「えー?弟だから?」
「意味わかんねえよ!」

もう怖いよ!弟が怖い!

「でも、こうしておいた方がいいよ」
「何で?」
「初日に理事長が言ってたでしょ?この学校って、9割方ホモかバイなんだよ」
「……忘れようとしてたのに」
「だから、既に恋人がいるって思わせてたらより危険は減るでしょ?」

……確かに、そうかもしれない。
だけど……

「俺達どう見ても双子だろ!!血繋がってるだろ!」

背丈はともかく顔はそっくりだし!!

「えーそんなことないよ!こうやって腕組んでたらどっからどう見ても恋人同士だよ!」
「いや無理があるって!!」
「そんなに叫んだらまた喉痛めるよ?」
「誰のせいだよ!!」

病み上がりにこんなに叫ばせないでくれない!?

「――ふふふ……君たち、甘いね」
「「!?」」

すると突然第三者の声がした。
一斉に振り向くと、そこに俺達と同じ制服を着た、明るめの茶髪にカラフルなピンを付けまくっているチャラい男がいた。

「……え?誰?」
「この世には双子CPという実に尊いCPが存在しているのだよ……だから君たちも十二分にカップルとして認識される可能性はある!!」
「いやだから誰……?」
「ですよね!!!」
「祥!?」

目をキラキラとさせた祥吾が謎のチャラ男の手をがしっと掴んだ。

「たとえ血の繋がった双子だってカップルになれる!そういうことですよね!!」
「その通りだ!これからもその心意気おもい、貫いてくれたまえ!(そしてオレに萌えを供給してくれ!)」
「はい!!」

何故かチャラ男と祥吾が意気投合していた。
……何だこれ。

「じゃあオレまだ用事(カップル観察)があるからこれで」

そして謎のチャラ男はそう言い残し、颯爽と去っていった。

「……何だったんだアイツ」
「……あ!名前聞きそびれちゃった!オレに勇気をくれたお礼がしたかったのに!」
「聞く必要ないと思う」

今度こそ俺達は校舎に入り教室へ向かった。


俺のクラスは一年A組で、祥吾のクラスは隣の一年B組だ。
双子の宿命で、やはりクラスは別々だった。

一年A組の教室の前で、俺は緊張していた。
入学式にいきなり倒れたあげく二週間も休んだ奴を、クラスの人たちは受け入れてくれるだろうか。
かすかに震える俺の肩に、祥吾がポンと手を置いた。

「大丈夫だよ!さっき言ったでしょ、クラスの人たちにはしっかり柊のこと言っておいたからって!」
「いや、でも……」
「心配ないよ、柊なら大丈夫!……あ、そろそろHR始まっちゃうからオレ行くね!また休み時間に!」
「え、ちょっ……!」

祥吾は爽やか笑顔で手を振り、さっさと自分のクラスに入っていってしまった。
あ、あいついつもはべったりのくせにこういうときだけあっさり離れていきやがって……!

とはいえいつまでも教室の前で突っ立っているわけにもいかないので、俺は覚悟を決めて扉に手をかけた。


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