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第6章―研究会
入会#1
しおりを挟む「な、なんとか書けた……」
「お疲れ」
アカデミーの図書館で、レポートを作成していた俺は最後の一文を書き終えると、机に突っ伏した。この世界はパソコンが無いから全部手書きなのが地味にきつかった。
結局忘れていたレポートは、植物園に栽培されていた植物――アルフレッドが昔持ってきてくれた木をテーマにして、図鑑を見ながら誤魔化しつつ書き上げた。
前世の大学時代に、無理矢理誤魔化しながら書いていたレポートを思い出した。コピペっぽくならないように仕上げるレポート作成技術がこんなところで役に立つとは……。
ダニエルはとっくにレポートを作成し終えており、俺がレポート作成に格闘する中涼しい顔で紅茶を飲んでいた。レポートが終わってるのに付き合ってくれただけでもありがたいけど。
そのダニエルが淹れてくれた紅茶を飲みながら横を見ると、レナルドがまだ難しい顔をして唸っていた。
実はレナルドも一緒に横でレポートを書いていた。レナルドは俺以上にレポート作成が苦手らしく、一緒に書き始めたのだがまだ終わっていないようだった。
「レナルド、大丈夫?」
「もう嫌だ……文字見たくない」
「君、それでよくアカデミー入れたね」
ペンを放り投げて突っ伏したレナルドを見て、ダニエルが呆れていた。
「そんなんでどうやって入学試験パスしたわけ?」
「試験予想問題集の中身と答えを丸暗記した」
「力ずく過ぎない?」
丸暗記で合格できるって……逆に凄いな、レナルド。
「そんなに勉強苦手なのに……どうしてアカデミー入ったの?」
俺がそう聞くと、レナルドは突っ伏していた顔を上げ、こちらを見てきた。
「ミハルに会いたかったから」
「え……」
「ミハルもアカデミー入るって聞いて……だから頑張って丸暗記して、入った」
「れ、レナルド……!」
若干顔を赤くしながらそう言ってきたレナルドが可愛すぎて、俺はつい感極まって彼の手を握った。
「僕も、ここでレナルドに会えて本当に嬉しかったよ」
「ミハル……!お、オレも、会えて、ホントにうれし」
「はい、そこまで」
すると笑顔のダニエルが俺達を引き剥がした。
「ベタベタしてる暇あったらさっさとレポート書き上げたら?」
「べ、ベタベタなんかしてねえよ!それに今のはミハルの方から……」
「何?」
「……なんでもないです」
ダニエルとレナルドは二人、顔を寄せてこそこそと話していた。
話している内容は俺からは聞こえなかったが、二人とも、気さくに話せるほど仲良くなったようで、俺は嬉しくなった。
「二人とも仲良いね」
「「良くはない」」
そう二人合わせて返してきて俺は目を丸くした。
いや、仲良くない?
***
一時間後、レナルドもようやくレポートを書き終えたので、俺達は図書館から寮の談話室に場所を移した。
「そういえば、ミハルはどこの研究会に入るか決めてるのか?」
「え?研究会?」
談話室に用意されているお茶菓子を食べながらレナルドが訊いてきたが、俺は何のことかわからず首を傾げた。
「研究会って何?」
「知らないのか?」
「う、うん」
俺は正直、今までアカデミーに入ることに必死で、アカデミーでの授業以外のものに関してはほとんど頭に入れていなかった。
アカデミーに入れるくらいまでの体調にするのに精一杯だったからだ。
「研究会っていうのは、生徒同士で一つのテーマを探求する団体活動のことだよ。剣術研究会とか、魔術研究会なんかがあるね」
俺の疑問に答えてくれたのはダニエルだった。
成程……つまり前世で言うクラブ活動みたいなものか。アカデミーにもそういうのあるんだな。
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