異世界転生したのに弱いってどういうことだよ

めがてん

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第5章―似た者兄弟

校外学習#5

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アルフレッドによって俺は植物園を出た先の博物館の通路に設置されているベンチに寝かされた。
その間もぐるぐると視界は回っていたが、寝た状態でしばらく目を瞑っていたら、少しずつではあるが眩暈は収まっていった。
ようやく眩暈が収まって、目を開けると顔を青くしたアルフレッドと目が合った。

「ミハル……大丈夫か」
「ごめんなさい……何故か急に、眩暈がして……」
「多分、植物園の温度や湿度を保つために使われていた魔法具の所為だろう」
「あ……」

アルフレッドに言われて俺は、何故急に眩暈がしたのか理由がわかった。
よく考えたら、室内にある植物園なら魔法具で湿度や温度を調整していて当然だった。
前世の植物園ならそういうのは機械でやってたけど、この世界は魔法具が代わりになっている世界だ。その魔法具のマナに俺は反応してしまったんだろう。
マナを弾くアイテムで、魔法具から放たれるマナもある程度は防げるけど、植物園くらい広い場所の温湿度を調整しているような、規模の大きい魔法具が放つマナのすべては防ぎきれなかったようだ。

……俺もまだこの世界に染まり切れてないな……。行く先々で魔法具が使用されている可能性は、常に頭に入れておかなきゃ駄目だったのに。

「ごめんなさい、僕……魔法具のことすっかり頭から抜けてて……」
「いや……俺も、完全に頭から抜けていた……すまない」
「アル兄さまは……悪くないですよ」

自分のことは、自分でしっかり把握して気を付けなければならないのに、それが出来てなかった俺が悪い。
なのに俺はまた……アルフレッドに要らない気苦労を与えてしまったみたいだ。

「違う……、俺の考えが至らなかったせいで、お前をまた、あのときみたいに苦しめた……」
「兄さま!!」

虚ろな目で震えはじめたアルフレッドを見た俺は、慌てて体を起こした。
急に起き上がったことでまた頭がぐらっと揺れたけど、なんとか踏ん張って俺は彼の手を握った。

「違います、アル兄さまは悪くないんです。今日も――あのときも、僕が……自分の体のこと、ちゃんと把握してなかったから起きたことなんです。だからアル兄さまが責任を感じる必要なんて……」
「――それでも!!俺があのとき、ミハルを外に連れ出して目を離したことは事実だ!!」

アルフレッドは周囲が震えるくらい大きな声で叫んだ。

「俺が、軽率だったせいで、ミハルを苦しめて……それに、今日だって、また……。だからやっぱり俺は、ミハルの側に居るべきじゃ……」
「アル兄さま!!」

いくら名前を呼んでも、アルフレッドはこちらを見てくれず、虚ろな目で呟くだけだった。
まさかここまで、あのときのことがアルフレッドの心に深く傷を付けていたなんて、俺は思いもしていなかった。
そんな彼の様子を見て、俺は思った。

――やっぱり俺は、家族を不幸にしてしまうんだろうか、と。
前世の実親は俺が生まれた直後に亡くなったし、引き取ってくれた伯父一家も――俺が来てから伯父の経営していた会社の経営が傾いて生活が苦しくなった。
それを、伯父の子供――俺の従兄弟は「お前が来たからだ」と毎回なじってきた。伯父夫婦も「お前の所為だ」と言ってきた。
伊月だけはそんなわけないって言ってくれていたけど……その伊月も、結局俺より先に死んでしまった。

そして、今世の家族にも――俺の身体が弱いせいで、父にも母にも、兄たちにも、要らない気苦労をかけてしまっている。
俺の存在が、今まで両親や兄妹たちにどれだけの心労をかけてきたか。

「――ごめんなさい」
「……ミハル?」
「ずっと、つらい思いばっかりさせて……ごめんなさい」

謝ったところで、許されるとは思っていないけど。
アルフレッドや家族の皆に今まで沢山気苦労を与えてしまったことは謝るしかない。

「僕が、いなければ……こんな風にアル兄さまを苦しめることもなかったのに」
「――違う!!」

その瞬間、俺は、アルフレッドに抱きしめられた。

「違う……、違うんだ、ミハル……俺はただ……ミハルを苦しめた自分の不甲斐なさが許せなくて、ずっとお前を避けてしまってただけなんだ」
「……」
「だから、ミハルがいなければいいなんて、俺は一度も思ったことない」

アルフレッドの暖かいぬくもりが俺を包む。

「……それを言うなら……僕だって、アル兄さまが側に居るべきじゃないなんて思ったこと、一度もありません……」

俺もアルフレッドを抱きしめ返して、言った。

「本当は、寂しかった……」
「……!」

4歳のときの出来事が起こってから、アルフレッドは俺を避けるようになって……それまで一緒に遊んでいたのに、それができなくなって。
だけどそれは、俺がアルフレッドにトラウマを植え付けてしまったせいだからと思って、寂しくても何も言わなかった。俺に言う資格はないと思っていた。
――でも、本当は、ずっと寂しかった。

「アル兄さまと、あそべなくなって、ずっとさみしかった……」
「……っ、ミハル……!」

アルフレッドが再び、俺を強く抱きしめた。

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