異世界転生したのに弱いってどういうことだよ

めがてん

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第5章―似た者兄弟

校外学習#4

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途中バテたりもしたが、何とか目的地である植物の展示ブースにたどり着いた。

中は植物の実際の標本や、模造花が見やすいように工夫されて展示されている。別室には実際の草花を栽培して展示している植物園もあるようだ。
俺が見たことがない、他国の植物の展示もあって興奮する。

「で……、どの植物をテーマにするんだ?」
「え?」
「テーマを一つ絞ってレポート提出することになってるだろ」
「……あ、そうでした!」

アルフレッドに言われて思い出した。これ、一応校外学習だった。
博物館に来れただけで嬉しすぎて正直忘れてた。

「色々見てから、決めます!」
「わかった」

俺は展示を見て回りながら、テーマを考えつつ、別のことも考えていた。
――アルフレッドとどう仲直りするかだ。

『――まずは誠心誠意謝罪でしょ。これに尽きる』

校外学習の前日、ダニエルからまず言われたアドバイスがこれだ。

『そうだよね、まずは謝罪だよね』
『でもいきなり謝っても、「なんで今更?」で終わっちゃう可能性もある。だから謝罪する理由と、あのとき起きた出来事の原因を明示して、そしてそれをもう二度と起こさないという改善点をしっかり話すんだよ』
『な、成程。謝罪の理由と、原因の明示、今後の改善点だね』

ダニエルの言葉をメモしていたら、俺の横に居たレナルド――実はこのとき俺達の寮の部屋に遊びに来ていた――が呆れたように溜息を吐いた。

『ダニエル、お前、それ……謝罪会見でもする気かよ』
『は?何で?謝罪っていったら普通こうだろ』
『兄弟間の仲直りでそんな仰々しいのいらねーから』

よくわかってなさそうなダニエルに対しレナルドは再び溜息を吐くと、俺へ向き直った。

『いいかミハル、兄弟でのケンカは……まず、弟は勝てないと思っておけ』
『え?』
『どんなに向こうが悪かろうが……最終的に負けるのは弟の方だ。だから、兄貴が言ってきたことは……全部肯定しておけ!そして言い訳は無用だ!言うだけ向こうが有利になるから!!』
『君普段どれだけお兄さんたちにしてやられてんの』

俺の肩を掴み必死の形相で言ってきたレナルドに、今度はダニエルが呆れていた。

『ミハルとお兄さんはまた違うでしょ……ミハルのお兄さんはミハルを下に見たりしてないし』
『弟を立てる兄貴がこの世に存在するのか!!!??』
『いくらでもいるでしょ』

レナルド……普段どれだけお兄さんに苦労してるんだ……。俺の兄は二人とも優しくて良かった……。

『というか、僕……別にアル兄さまとケンカしてるわけじゃないし……』
『そうだね。君が倒れちゃったことがお兄さんのトラウマになってるだけだもんね』
『うっ……』

ダニエルの言葉が耳に痛かった。

『多分お兄さんは、もう4歳の頃の出来事を起こしたくないから君を避けてるんだよ。だからもう、そうはならないんだよってことをしっかりミハルの口から伝えてあげればいいと思うよ』
『な、成程』
『謝るべきところはちゃんと謝れよ!そこ有耶無耶にすると後からまたそのことを蒸し返されるからな!!』
『わ、わかった!』

俺はダニエルとレナルドからのアドバイスを改めて思い出しながら、展示を見て回った。

どの植物も面白いし魅力的だけど……一つ選ぶとなると難しいな。
実際の草花の咲いている植物園の方も寄ってみた。
すると、ふと見覚えのある花を咲かせている木が目についた。

「あ、アル兄さま!」
「……なんだ?」
「これ、昔アル兄さまが持ってきてくれた木ですね!」

俺が示した木を見たアルフレッドはぎくりと肩を震わせた後、赤くなった顔を逸らした。

「……それは忘れてくれ」
「あれ見たとき僕、アル兄さま力凄い!って思ったんですよ!」
「だからやめてくれ……恥ずかしいから」

俺が3歳のとき、俺の為にと庭に生えていた木を根こそぎ持ってきてくれたアルフレッド。
反応を見るにアルフレッドもそのことを覚えていたようだ。本人的には黒歴史になってるみたいだけど。

その後も――アルフレッドとは、4歳のときの出来事が起こるまでは、まるで友達のように遊んだ。
アルフレッドは意外にも絵を描くのが好きだったから、よく一緒に花や家族の絵を描いたりした。
それにアルフレッドとはボードゲームもよくやった。ユリアスとも遊んだことはあったけど、ユリアスは強すぎるが故に俺の為にわざと手を抜いたりしてきたので、ボードゲームを始めたての頃はアルフレッドとの対戦が一番面白くて俺はしょっちゅう彼をボードゲームに誘ったものだった。

――でも、それもこれも皆、4歳のときの出来事があってからは無くなってしまったのだけど。

幼いアルフレッドにとって、弟である俺が倒れたあの出来事は――どれ程の衝撃を与えてしまったのだろう。
俺が、自分の体を甘く見て顧みなかったばかりに――

――やっぱり、謝らなきゃ駄目だ。

「アル兄さま……、あの、」

意を決して、横に居るアルフレッドに話しかけた、そのときだった。

「――っ!?」

急に眩暈がしてアルフレッドの方へ倒れ込んでしまった。

「ミハル!?」
「ぅ……、あれ、何で……」

急にぐるぐると回り出した視界に耐え切れずアルフレッドに縋りついてしまう。
おかしい、なんで急に、こんな……さっきまで全然平気だったのに……。

「っ、まさか……!」

アルフレッドは焦ったようにそう呟くと、凭れ掛かる俺の身体を抱え上げた。
そしてそのまま植物園を飛び出した。

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