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第5章―似た者兄弟
校外学習#2
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次の日、ついに校外学習の日がやってきた。
「ミハル、顔色悪いけど。昨日ちゃんと寝たの?」
「……うん、寝たよ。一応」
朝、ダニエルと顔を合わせて開口一番にそう言われて、俺は曖昧に笑うしかできなかった。
だってやっぱり緊張するんだもん!
もう何年もアルフレッドとはまともに二人で話したことないんだもん!
そのこと考えたらなかなか寝れなかったんだもん!
「そんな顔してたら、またお兄さんのトラウマ刺激しちゃうかもよ?」
「うっ……」
「こっち来て。少しでもマシに見えるようにしてあげるから」
俺は洗面所に連れていかれると、ダニエルによって軽くメイクを施された。寝不足の所為で血色が悪かった顔は、ダニエルのメイクで少しマシになった。
「ダニエル、いつの間にメイクなんか……」
「この一年結構余裕あったから」
ダニエルさん、貴方一体どこ目指してるの……。
とりあえず、ぐだぐだ言ってても仕方ないので俺は覚悟を決め、ダニエルと共に今日の出発集合場所である講堂へと向かった。
「はーい、皆さん揃いましたねー!ここからはペアの上級生のかたと各々国立博物館まで行ってもらいますよー!」
先生のその言葉に俺は驚いた。まさかもうここからペアで行動するとは思ってなかったからだ。
「ダニエル君、行こうか」
「あ、はい。よろしくお願いします。――じゃ、ミハル。頑張ってね」
しかし一緒に居たダニエルはペアの上級生と早々に合流して行ってしまった。ちょっと待って、俺はまだ心の準備が出来てません!
「――ミハル」
「……!」
緊張をほぐそうと何度も深呼吸していたら、ついに待っていた人から声を掛けられた。
「アル兄さま……、そ、その……本日はお日柄もよく……」
「……うん、そう、だな……?」
しかし緊張のあまり、俺は変な返答をしてしまった。
お日柄もよくってなんだよ!結婚式のスピーチか!
アルフレッドも反応に困っちゃってるじゃないか!
「きょ、今日はよろしくお願いします!」
「……うん」
気まずくてとりあえず頭を下げたら、アルフレッドは頷きつつもそっぽを向いてしまった。
その仕草に少なからずショックを受ける。俺……もしかして滅茶苦茶アルフレッドに嫌われてるんじゃ……
「そこの二人ー、もう他の子たち行っちゃったよー。貴方たちも早く行きなさいねー」
気まずい空気は、先生のそんな言葉で破られた。辺りを見回すと確かにもう周りには生徒が誰も居なかった。
「……行くか」
「はい……」
俺達はギクシャクしながらも、博物館に向け出発した。
アカデミーから国立博物館へは馬車で20分ほどの距離にある。多分ほとんどの生徒が辻馬車を呼んだり乗合馬車で向かったんだろうけど、俺達の場合、それらの手段は使えない。
何故なら俺が滅茶苦茶馬車酔いするからだ。俺が馬車に乗る際はいつも、揺れを極限まで少なくした特注の馬車を使う。それでも酔うときは酔うんだけど……。
「ミハル、こっち」
今回は事前にアルフレッドが、首都の邸宅から俺専用馬車をアカデミーの前まで持ってくるよう頼んでくれたみたいだった。
「あ、兄さま、馬車用意してくれて、ありがとうございます」
「……別に」
アルフレッドはそう言いながら、馬車の扉を開けてくれた。しかしこちらは見てくれない。
全然目が合わない……やっぱり俺、相当アルフレッドに嫌われてるっぽい……。
それはそうと、馬車には御者がいなかった。どうするのだろうと馬車に乗り込みつつ思っていたら、アルフレッドは馬車には乗り込まず、御者の座るところへ腰かけたのだ。
それを見た俺は慌ててアルフレッドに声を掛けた。
「兄さま!?なんでそこに……」
「俺が動かすから、ミハルは座っていろ」
「で、でも!」
貴族の子息が御者やるなんて聞いたことないよ!
「いいから座れ。もう出るから」
アルフレッドはそう突っぱねると手綱を握り、馬車を発車させてしまった。
しかし流石は実家の騎士団で小隊長をやってるだけはあって、馬の扱いも慣れているようだった。
何しろ全然揺れない。スピードも安定してて、お陰で博物館に着くまで俺は酔わずに来ることができた。
博物館の前の馬車止めに止まって、馬車の扉を開けてくれたアルフレッドに俺は興奮しながら話しかけた。
「ミハル、顔色悪いけど。昨日ちゃんと寝たの?」
「……うん、寝たよ。一応」
朝、ダニエルと顔を合わせて開口一番にそう言われて、俺は曖昧に笑うしかできなかった。
だってやっぱり緊張するんだもん!
もう何年もアルフレッドとはまともに二人で話したことないんだもん!
そのこと考えたらなかなか寝れなかったんだもん!
「そんな顔してたら、またお兄さんのトラウマ刺激しちゃうかもよ?」
「うっ……」
「こっち来て。少しでもマシに見えるようにしてあげるから」
俺は洗面所に連れていかれると、ダニエルによって軽くメイクを施された。寝不足の所為で血色が悪かった顔は、ダニエルのメイクで少しマシになった。
「ダニエル、いつの間にメイクなんか……」
「この一年結構余裕あったから」
ダニエルさん、貴方一体どこ目指してるの……。
とりあえず、ぐだぐだ言ってても仕方ないので俺は覚悟を決め、ダニエルと共に今日の出発集合場所である講堂へと向かった。
「はーい、皆さん揃いましたねー!ここからはペアの上級生のかたと各々国立博物館まで行ってもらいますよー!」
先生のその言葉に俺は驚いた。まさかもうここからペアで行動するとは思ってなかったからだ。
「ダニエル君、行こうか」
「あ、はい。よろしくお願いします。――じゃ、ミハル。頑張ってね」
しかし一緒に居たダニエルはペアの上級生と早々に合流して行ってしまった。ちょっと待って、俺はまだ心の準備が出来てません!
「――ミハル」
「……!」
緊張をほぐそうと何度も深呼吸していたら、ついに待っていた人から声を掛けられた。
「アル兄さま……、そ、その……本日はお日柄もよく……」
「……うん、そう、だな……?」
しかし緊張のあまり、俺は変な返答をしてしまった。
お日柄もよくってなんだよ!結婚式のスピーチか!
アルフレッドも反応に困っちゃってるじゃないか!
「きょ、今日はよろしくお願いします!」
「……うん」
気まずくてとりあえず頭を下げたら、アルフレッドは頷きつつもそっぽを向いてしまった。
その仕草に少なからずショックを受ける。俺……もしかして滅茶苦茶アルフレッドに嫌われてるんじゃ……
「そこの二人ー、もう他の子たち行っちゃったよー。貴方たちも早く行きなさいねー」
気まずい空気は、先生のそんな言葉で破られた。辺りを見回すと確かにもう周りには生徒が誰も居なかった。
「……行くか」
「はい……」
俺達はギクシャクしながらも、博物館に向け出発した。
アカデミーから国立博物館へは馬車で20分ほどの距離にある。多分ほとんどの生徒が辻馬車を呼んだり乗合馬車で向かったんだろうけど、俺達の場合、それらの手段は使えない。
何故なら俺が滅茶苦茶馬車酔いするからだ。俺が馬車に乗る際はいつも、揺れを極限まで少なくした特注の馬車を使う。それでも酔うときは酔うんだけど……。
「ミハル、こっち」
今回は事前にアルフレッドが、首都の邸宅から俺専用馬車をアカデミーの前まで持ってくるよう頼んでくれたみたいだった。
「あ、兄さま、馬車用意してくれて、ありがとうございます」
「……別に」
アルフレッドはそう言いながら、馬車の扉を開けてくれた。しかしこちらは見てくれない。
全然目が合わない……やっぱり俺、相当アルフレッドに嫌われてるっぽい……。
それはそうと、馬車には御者がいなかった。どうするのだろうと馬車に乗り込みつつ思っていたら、アルフレッドは馬車には乗り込まず、御者の座るところへ腰かけたのだ。
それを見た俺は慌ててアルフレッドに声を掛けた。
「兄さま!?なんでそこに……」
「俺が動かすから、ミハルは座っていろ」
「で、でも!」
貴族の子息が御者やるなんて聞いたことないよ!
「いいから座れ。もう出るから」
アルフレッドはそう突っぱねると手綱を握り、馬車を発車させてしまった。
しかし流石は実家の騎士団で小隊長をやってるだけはあって、馬の扱いも慣れているようだった。
何しろ全然揺れない。スピードも安定してて、お陰で博物館に着くまで俺は酔わずに来ることができた。
博物館の前の馬車止めに止まって、馬車の扉を開けてくれたアルフレッドに俺は興奮しながら話しかけた。
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