異世界転生したのに弱いってどういうことだよ

めがてん

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第5章―似た者兄弟

校外学習#1

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~ミハル視点~

この度はえらい目にあった。まあでも犯人わかったし、何とかなったから結果オーライだ。
犯人の子も後日謝ってくれたし。

『ごめんなさい……。まさか、命に係わるほどだとは思っていなくて……』

とても反省した様子だったし、精神年齢30歳越えの俺からしたら、13歳の子をこれ以上責める気にはなれなかったのだ。子供には誰しも失敗をすることがあるものだ。それを諭すのが、年上の役割だろう。
それに俺は一応腐っても公爵家の子供だし……ここで大事にすると魔法を使える程才能ある彼の将来を潰してしまう。それは避けたかったのだ。

『こうやって謝ってくれたから、もういいよ。でも、これからはこんなことしちゃ駄目だよ。君だって、必死に勉強してここ入ったんでしょ?折角魔法が使える才能あるんだし、それを無駄にしちゃ勿体ないよ』
『……は、はい!本当にすみませんでした……!これからは心を入れ替えて頑張ります!ミハル様!』

だけどそれからその犯人の子が俺を見てくる目がやたら熱いというか……嫌な感じではないので放置してるけど。


「校外学習?」

そんなある日、療養のため寮の部屋で休んでいた俺に、授業から帰還したダニエルが教えてくれた。

「うん。来週に。まあ、校外学習っていっても成績にはあんまり関係なくて、新入生と上級生の親睦会みたいなものだってさ。上級生とペアで系列の博物館に行って、テーマ絞ってレポート提出するんだって」
「はあ……成程」

前世の学校でもそういうのはあったな。まあ校外学習ではなくて新入生と上級生でレクリエーションをやるって感じだったけど。
そんなことよりも、校外学習か……。これはつまり、今世初の純粋な遠出ということになるのか。
今までは身体的に遠出は出来なかった。6歳のときに一度だけ領地から首都に行ったが、あれは皇帝への挨拶のためだったから、純粋に遠出をするのは初だ。
そう考えると、ワクワクしてきた。

でもその後すぐに、俺が行っても大丈夫だろうかという思いに駆られた。
上級生と一緒に博物館に行くのはいいが、俺は長時間歩けないし、そもそも屋外に長くいるのも難しい。そういう配慮をしてくれる上級生でないと、一緒に回るのは難しいだろう。

「ミハル?どうかした?」
「あ、いや……僕が行っても大丈夫かなって思って……。僕、あまり長い時間歩けないし、ペアの上級生に迷惑かけちゃいそうで」
「ああ……なら、先生に相談してみたら?配慮してくれるかもよ」
「あ、確かに!」

ダニエルのアドバイスに従い、次の日先生に相談したら調整してくれるとのことで、ホッとした。これで俺も校外学習に行けそうだ。


……なんて思いながら、校外学習までの日をワクワクしながら待っていた俺だけど、校外学習の前日にペアの上級生の発表があったことでそのワクワクは急転直下した。

「嘘でしょ……、何で……」
「何でそんなに落ち込んでるの?すごくいい配役だと僕は思ったけど」
「ダニエルも知ってるでしょ!――僕、アル兄さまとは滅茶苦茶気まずいんだって!!」

――そう、俺のペアの上級生は何と、アルフレッドだったのだ。アルフレッドは三年前にアカデミーに入学しており、現在は4年生だ。確かに上級生だし、先生としては身内だから配慮もしやすいだろうと思って組んでくれたんだろうけど、正直滅茶苦茶困る!

アルフレッドとは子供の時、二人で遊んでいた最中に俺が倒れてしまったことで、それ以来アルフレッドには避けられているというか、腫れものに触れるみたいな扱いをされている。
俺としては幼いアルフレッドにトラウマを与えてしまったと自責の念しかないのだが……それもあって、アルフレッドとは現在まで微妙な関係のままとなっている。

「気まずくたって家族じゃない。それに、これはいいチャンスじゃないの?」
「チャンス?」
「和解するチャンス」
「う……」

確かに、ダニエルの言う通りである。
俺だっていつまでもアルフレッドと気まずい関係でいたいわけではない。それに、彼が今も俺に対して責任を感じてしまっているのだとしたら、それは晴らしてあげないと申し訳ないと思った。
今までは俺に彼と話ができるほどの体力と余力が無かったこともあって、何となく有耶無耶になってしまっていたけど、こうして昔より元気になって話も長くできるようになった今なら、関係も修復できる気がする。

「そうだよね、チャンスだよね……。うん、僕、頑張ってみるよ!……で、ダニエル、どう話したらいいかなぁ……?」
「……はあ、全く君は……仕方ないな」

ダニエルは呆れながらも、アルフレッドとの和解作戦の案を立ててくれた。
決戦は明日、校外学習である。

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