異世界転生したのに弱いってどういうことだよ

めがてん

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第2章―初めての友達

入院生活#1

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~ミハル視点~

首都に来て、皇帝に謁見してから、一か月が経った。が、謁見の際に発作を起こして以来なかなか体調が戻らないため、未だに首都に滞在していた。
父は、首都のブラックウェル別邸の限られた設備で俺の治療をしようと頑張っていたが、やはり実家の設備には叶わないらしい。
ちなみに実家は、前世で言うならば、大学病院並の医療設備が備わっている、最早俺専用の医療施設と化している。

とりあえず、歩けるくらいには体調が戻らないと領地にも戻れないということで、俺は首都の病院に入院し治療を受けることになった。
父は己の力不足を嘆いていたけど、これは父の力量が不足しているのではなく、俺の身体が弱すぎるせいだ。父には申し訳ない。

というわけで、父の医者としての知名度と、公爵家の権力で、常に予約で一杯の首都の最高峰の病院の、一番いい部屋に入院させてもらった。
この病院では皇族も治療を受けるというのだから、とんでもない病院だ。ちなみに父は母と結婚する前は、この病院に勤めていて、皇族の治療もしたことがあるそうだ。

一番いい病室なだけあって、部屋は広いしベッドはふかふかだった。
前世でも入院したことあったけど、四人一部屋でベッドは固いしで最悪だったが、流石は最高峰の病院の、最高峰の部屋だった。
本当に転生して立場が変わったんだなあなんて今更思っていると、看護師さんが入ってきた。

「ミハル様、朝の体温を測りますね。昨夜はしっかり眠れましたか?」
「……はい!」
「成程、昨夜も発作が起きたと」
「うっ……」

ここのナースは読心術でも習っているのか、嘘ついても絶対にバレる。俺がわかりやすいだけなのかもしれないけど……。

「発作が起きた時は誤魔化さず、すぐに我々を呼ぶよう言いましたよね?それではいつまで経っても治りませんよ?」
「はい、すみません……」
「ウィリアム先生やご家族にも、これ以上心配かけたくないでしょう?」
「はい、そのとおりです……」
「であれば、早く治すためにも、体調については誤魔化さないように。わかりましたか?」
「はい……」

そんなわけで、看護師さんに今日も怒られてしまった。

俺だって、体調が悪くなったら言うって頭ではわかっている。
だけど、どうしても前世からの癖が抜けないのだ。何故なら前世では、体調が悪いと知られたら面倒がられて、看病もしてもらえなかったから。
伊月と知り合ってからは、体調を崩したらすぐ気付かれて問答無用で休まされたが、それでも自分から体調が悪いとは言ったことはなかった。それに甘えちゃってたな。
隠した方が面倒なことになるというのはわかってるんだけど……。


朝食を食べ、食後の薬を飲んで本を読んでいると、再び看護師さんがやってきた。

「ミハル様、少々よろしいですか?」
「どうしたんですか?」
「この部屋に新しい患者さんを入れてもよろしいでしょうか」
「え、」

実は、この部屋はVIPルームではあるのだが、伝染病が流行った場合など、病室が足りなくなった場合の為に、最大四人入れる設備となっているのだ。

「僕は構いませんが……何かあったんですか?」
「実は、貴族の方が入院することとなったのですが、他のVIPルームがちょうど埋まってしまっておりまして……、その方はミハル様と同じくらいの歳の方なので、できればこちらに、他の部屋が空くまで相部屋とさせていただければ……と思いまして」

ああ、なるほど……。それなら仕方ないよな。

「わかりました、僕は大丈夫です」
「ありがとうございますミハル様!」

看護師さんは頭を下げると、忙しそうに部屋を出ていった。
その後、俺のベッドの向かいに新しいベッドが運ばれ、あっという間にもう一人の入院準備が整っていった。
その鮮やかな手法に感動していると、俺と同室となる患者が部屋に入ってきた。赤い髪をした、俺と同じくらい歳の男の子だった。
その子は沢山の使用人を引き連れ、車椅子の上で苛立った顔をしていた。左手を三角巾で吊っているから、病気ではなく怪我をして入院することになったようだ。

「……はあ、なんで相部屋なんだよ。レッドグレイヴのこのオレが」
「申し訳ございません公子様、別室が空くまでですのでどうかご容赦ください」

レッドグレイヴってことは、公爵家か。道理で、相部屋にされたわけだ。
レッドグレイヴ家に俺と同じくらいの子供が居たんだな。他の公爵家というか、貴族とほとんど交流したことないから知らなかった。

というか、俺、他の貴族家の子供に会ったの初めてじゃね?今までどんだけ家に閉じこもっていたんだろう……。
自分の引き籠りっぷりに戦慄していると、赤い髪の子と目が合った。

「……じい、アイツは誰だ?」
「同室の方は、ブラックウェル家の御子息と伺っております」
「はあ?ブラックウェル?父上の言ってた、はんらんぶんしってやつじゃねえか!なんでそんなやつと一緒なんだよ!」
「……坊ちゃま、御子息の前ではお控えくださいませ」

じい、と呼ばれた高齢の執事がやんわりと窘めた。
反乱分子って何だ?

……あ、そういえばレッドグレイヴ家は現皇帝派の筆頭なんだっけ?
でも何でうちが反乱分子なんだろう?家では今の皇族に逆らうとか、別の派閥と結託するとかそういう話はほとんど出たことはなかったけど。
どちらかというとうちは中立派だったんじゃなかったっけ?

頭を捻っていると、いつの間にか使用人は退室しており、俺とレッドグレイヴの彼だけになっていた。

「おい!お前!」
「え?……僕ですか?」

と思ったら話しかけられた。声色といい表情といい、敵意剥き出しだった。

「お前以外に誰が居るんだよ」
「確かに……」
「変なやつだなお前……。ま、まあとにかく、お前がブラックウェルの誰だかは知らねえが、同室だからって気安く話しかけてくんじゃねえぞ!うるさくしても許さねえからな!」
「はあ……わかりました」

フン!と鼻を鳴らして、レッドグレイヴの彼は布団を被った。
元気だなあ……。でも普通、子供ってあれくらい元気じゃないとおかしいんだよな。
まあ、うるさくするなというのだから、本でも読んでいればいいだろう。話しかける気もないし。

――そういうわけで、しばらくの間、二人での入院生活が始まったのだった。

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