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第1章―新しい人生
初めての遠出#1
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6歳の誕生日を迎えた後、何とか冬を越して、春を迎えた。
暖かくなってきたことで体調も安定してきた俺は、ついに今世初の遠出をすることになった。
行き先は今居る国の首都だ。
首都まで行く理由は、ブラックウェル家の者が6歳になったら必ずしなければならないことをしに行くからだ。
「ミハル、準備はできたか?」
「はい、できました」
「暖かくなってきたとはいえ、朝晩はまだ冷え込むからな、しっかり着こむんだぞ」
母に、しっかりと首まで隠れる服を着せられたのち、コートとマフラーもばっちり着せられた。
「ウィル、ミハルを頼むぞ」
「うん。道中もしっかり見ておくから安心して」
「アル、お前も弟のことを気にかけてあげるんだぞ」
「……はい」
今回俺と一緒に首都へ行くのは父と、アルフレッドのみだ。母は、なんとお腹に新しい命が宿っていることが判明したため、大事を取って行かないことになった。
本来は首都まで馬車で半日でいけるのだが、初の遠出である俺の体調を鑑みて、一日道中の街で一泊する、余裕のあるスケジュールを組んでくれた。
「それじゃ、行こうか。ミハル、アルフレッド」
「はい。お母さま、行ってきます」
「行ってまいります」
「ああ、気を付けてな」
母に見送られ、俺と父とアルフレッドは首都へ向け出発した。
「ミハル、乗り心地はどうだい?この日の為に、最新の揺れにくい馬車を特注したんだよ!」
「はい、とっても快適です」
「あといつでも横になれるスペースと、毛布とクッションもあるからね!疲れたらすぐに言うんだよ」
「あはは……わかりました」
相変わらず両親の過保護っぷりがすごいが、俺の為にしてくれていることなので無下になどできるわけがない。
前世含めても馬車の旅は初めてだから、疲れたら遠慮なく使わせてもらおう。
――その数分後。
「う、うええ……っ」
俺はものの見事に馬車に酔い、早速横になるスペースを使うことになった。
いや早いって。
まさか、乗り物にも弱いとは思わなかった。前世では乗り物酔いどころかジェットコースターもリピートしまくれるくらいだったのに……。
「大丈夫、ゆっくり息吸って」
父が背中をさすりながら、口元にエチケット袋を当ててくれた。ちなみにエチケット袋3枚目である。
吐き気に魘されつつも何とか向かいにいるアルフレッドを見ると、彼も顔色が悪かった。
もしかして、俺の所為でアルフレッドも酔ってしまったのかもしれない。貰いゲロって子供だとよくあるし。
「はあ、はあ……、アルにいさま……、だいじょぶ、ですか?」
「……!いや、俺は……」
「ああ、本当だ、アルも顔色良くないね。もしかしてアルも酔っちゃった?つらいなら寝ていいからね」
父からも顔色の悪さを指摘されたアルフレッドは、一瞬ぎくりとしていたが、次には顔をそむけた。
「俺は平気です」
「平気ならいいけど、気持ち悪くなったならいつでも言ってね?」
「俺のことは気にしなくて大丈夫ですから。父上はミハルを見ていてください」
「あ、そう……」
アルフレッドに突っぱねられた父はしょんぼりと肩を落としていた。
アルフレッド、昔から随分変わってしまったな。
前はあんなにやんちゃだったのに、随分とクールになっちゃって……。一人称もいつの間にかぼくから俺になってるし、父の呼び方もおとうさまから父上になってるし。
そういえば、アルフレッドは8歳になってから、ブラックウェル家の騎士団に交じって剣の稽古をし始めたと聞いた。彼の剣の腕は騎士の間で評判で、もう並の騎士には軽々勝てるほどの実力らしい。子供が成長するのは早いものだ。
俺の乗り物酔いにより、当初の予定よりも大幅に遅れた時間で、今日泊まる街の宿に着いた。
えずきすぎて最早起き上がる体力もなかったため、申し訳ないが父に宿まで運んでもらった。
そのままベッドに寝かせてもらい、ようやく落ち着くことができた。はあ、揺れてない地面最高。
隣のベッドに目を向けると、アルフレッドが室内着に着替えているところだった。
そういえば、アルフレッドは乗り物酔い大丈夫かな?最初は気にかけてたけど、途中から気に掛ける余裕もなくなってしまっていた。
「アル兄さま」
「……何?」
まさか俺に話しかけられるとは思っていなかったのか、アルフレッドはあからさまに肩を震わせた。
「アル兄さまは大丈夫ですか?お疲れではないですか?」
「疲れてない」
なるべく笑って話しかけたのだが、ばっさりと切り捨てられた。
「だけど、途中、アル兄さまもつらそうにみえたので……」
「疲れてないって言ってるだろ」
「でも……」
「お前は人のこと心配してる場合じゃないだろ。いいから寝てろよ!」
それを最後に背中を向かれてしまった。
この旅の間に、わだかまりも解けないかと思って話しかけてみたのだが、中々手ごわいな。
これ以上は話しかけても答えてもらえないだろう。
……いいや、まだ旅は残っているし、諦めず話しかけていくとしよう。
その日は明日に備えてそのまま眠った。
暖かくなってきたことで体調も安定してきた俺は、ついに今世初の遠出をすることになった。
行き先は今居る国の首都だ。
首都まで行く理由は、ブラックウェル家の者が6歳になったら必ずしなければならないことをしに行くからだ。
「ミハル、準備はできたか?」
「はい、できました」
「暖かくなってきたとはいえ、朝晩はまだ冷え込むからな、しっかり着こむんだぞ」
母に、しっかりと首まで隠れる服を着せられたのち、コートとマフラーもばっちり着せられた。
「ウィル、ミハルを頼むぞ」
「うん。道中もしっかり見ておくから安心して」
「アル、お前も弟のことを気にかけてあげるんだぞ」
「……はい」
今回俺と一緒に首都へ行くのは父と、アルフレッドのみだ。母は、なんとお腹に新しい命が宿っていることが判明したため、大事を取って行かないことになった。
本来は首都まで馬車で半日でいけるのだが、初の遠出である俺の体調を鑑みて、一日道中の街で一泊する、余裕のあるスケジュールを組んでくれた。
「それじゃ、行こうか。ミハル、アルフレッド」
「はい。お母さま、行ってきます」
「行ってまいります」
「ああ、気を付けてな」
母に見送られ、俺と父とアルフレッドは首都へ向け出発した。
「ミハル、乗り心地はどうだい?この日の為に、最新の揺れにくい馬車を特注したんだよ!」
「はい、とっても快適です」
「あといつでも横になれるスペースと、毛布とクッションもあるからね!疲れたらすぐに言うんだよ」
「あはは……わかりました」
相変わらず両親の過保護っぷりがすごいが、俺の為にしてくれていることなので無下になどできるわけがない。
前世含めても馬車の旅は初めてだから、疲れたら遠慮なく使わせてもらおう。
――その数分後。
「う、うええ……っ」
俺はものの見事に馬車に酔い、早速横になるスペースを使うことになった。
いや早いって。
まさか、乗り物にも弱いとは思わなかった。前世では乗り物酔いどころかジェットコースターもリピートしまくれるくらいだったのに……。
「大丈夫、ゆっくり息吸って」
父が背中をさすりながら、口元にエチケット袋を当ててくれた。ちなみにエチケット袋3枚目である。
吐き気に魘されつつも何とか向かいにいるアルフレッドを見ると、彼も顔色が悪かった。
もしかして、俺の所為でアルフレッドも酔ってしまったのかもしれない。貰いゲロって子供だとよくあるし。
「はあ、はあ……、アルにいさま……、だいじょぶ、ですか?」
「……!いや、俺は……」
「ああ、本当だ、アルも顔色良くないね。もしかしてアルも酔っちゃった?つらいなら寝ていいからね」
父からも顔色の悪さを指摘されたアルフレッドは、一瞬ぎくりとしていたが、次には顔をそむけた。
「俺は平気です」
「平気ならいいけど、気持ち悪くなったならいつでも言ってね?」
「俺のことは気にしなくて大丈夫ですから。父上はミハルを見ていてください」
「あ、そう……」
アルフレッドに突っぱねられた父はしょんぼりと肩を落としていた。
アルフレッド、昔から随分変わってしまったな。
前はあんなにやんちゃだったのに、随分とクールになっちゃって……。一人称もいつの間にかぼくから俺になってるし、父の呼び方もおとうさまから父上になってるし。
そういえば、アルフレッドは8歳になってから、ブラックウェル家の騎士団に交じって剣の稽古をし始めたと聞いた。彼の剣の腕は騎士の間で評判で、もう並の騎士には軽々勝てるほどの実力らしい。子供が成長するのは早いものだ。
俺の乗り物酔いにより、当初の予定よりも大幅に遅れた時間で、今日泊まる街の宿に着いた。
えずきすぎて最早起き上がる体力もなかったため、申し訳ないが父に宿まで運んでもらった。
そのままベッドに寝かせてもらい、ようやく落ち着くことができた。はあ、揺れてない地面最高。
隣のベッドに目を向けると、アルフレッドが室内着に着替えているところだった。
そういえば、アルフレッドは乗り物酔い大丈夫かな?最初は気にかけてたけど、途中から気に掛ける余裕もなくなってしまっていた。
「アル兄さま」
「……何?」
まさか俺に話しかけられるとは思っていなかったのか、アルフレッドはあからさまに肩を震わせた。
「アル兄さまは大丈夫ですか?お疲れではないですか?」
「疲れてない」
なるべく笑って話しかけたのだが、ばっさりと切り捨てられた。
「だけど、途中、アル兄さまもつらそうにみえたので……」
「疲れてないって言ってるだろ」
「でも……」
「お前は人のこと心配してる場合じゃないだろ。いいから寝てろよ!」
それを最後に背中を向かれてしまった。
この旅の間に、わだかまりも解けないかと思って話しかけてみたのだが、中々手ごわいな。
これ以上は話しかけても答えてもらえないだろう。
……いいや、まだ旅は残っているし、諦めず話しかけていくとしよう。
その日は明日に備えてそのまま眠った。
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