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第1章―新しい人生
転生しちゃった
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その日、俺――須藤美陽は、大きな悲しみの中に居た。
何故なら、俺の一番大切な親友であり、かつ恋人でもあった男の葬式に参列した後だったからだ。
絶対に俺を一人にしない、と耳にタコができるまで言っていたはずの彼は、原因不明の事故によりあっけなく死に、俺を置き去りにした。
親友――榊原伊月は、親もなく頼れる人の居ない俺の唯一の家族でもあった。
小さいワンルームのアパートで、二人で身を寄せ合いながら暮らしていた。
だが、もう家に帰っても、伊月はいない。もう、この世のどこにも――
「なんで……、なんで俺を置いて逝ったんだよ、伊月……」
家に帰れば、嫌でも俺が孤独となった事実を突きつけられるとわかっていたので、家には戻れず、葬儀場のすぐ近くにあった公園で泣いていた。
幼馴染であり親友であり、そして恋人でもあった伊月。
アイツが居ない世界なんて……
――その時だった。
眩い光が、俺の周りを包み込んだのだ。
「な……なんだ!?」
あまりにも眩しすぎて思わず目を瞑った。
そして、次に目を開けた時――俺の身にはとんでもないことが起きていたのだった。
「……あ?」
先程まで公園のベンチに座っていたはずだったのに、何故か寝転がっていた。
しかも、外に居たはずが、目の前に映るのは空ではなく、白い天井。
(ど、どうなってんだ?)
慌てて起き上がろうとしたが、何故か体に力が入らない。思わず手を目の前に持っていった。すると、ふくふくと丸くて小さな手が映った。
「あう!?」
なんでこんなに俺の手、小さいんだ!?
しかも、驚いて出た声もなんだか甲高くて、赤ちゃんみたいだった。
いや――違う。
「あうううーーー!!?(俺、赤ちゃんになってるーーー!!?)」
みたい、ではなく、本当に赤ちゃんになっていた。
ほんの数分前まで成人男性だったのに、急に赤ちゃんになってしまい、当然ながらパニックに陥った。
親友兼恋人を亡くした後に、まさかの赤ちゃんになってしまうなんて、意味が分からなすぎる。
「ふ、ふえええーん!(どうなってんだよー!)」
嘆きの言葉も弱弱しい泣き声になるだけだった。
もう泣く以外に何もできず、ただひたすら泣いていたら、バタンという扉が開く音が聞こえた。
「――ミハル!」
名前を呼ばれたかと思ったら、目の前に人の顔が映り、身体が持ち上げられた。
「……えぐっ?」
「どうした、苦しいのか?よしよし」
俺の身体を優しく抱き上げ、落ち着かせるように背中を叩いてくれたのは、美しい女性だった。
黒曜石のように艶やかに靡く長い黒髪に、強い意志を感じる紫色の瞳を持ったその女性は、俺が落ち着くまでずっと背中を撫でてくれた。
「随分泣いたようだな、この母がもう少し早く気付ければよかったのだが」
「あうう?(お母さん?)」
どうやらこの女性は、この身体の母親らしい。
ようやく落ち着いた俺は、まじまじと母だという彼女を見つめた。
するとその視線に気付いたのか、彼女が首を傾げた。
「ミハル?今日はなんだか雰囲気が違うな」
「あ、あう……」
まさか我が子の中身が成人男性になっているとは、夢にも思うまい。
なんだか申し訳ない気分になり、女性から目を逸らしたら、額に手が当てられた。
「ん?熱があるな……泣いたからか?」
言われて初めて、なんだか身体がだるいことに気付いた。赤ちゃんの身体は、長い時間泣くだけでも負担がかかるのか?
「念のため、お父さんに診てもらうことにしよう。お父さんはとてもすごいお医者さんだから、きっとすぐに楽になるぞ」
どうやら、この身体の父親は医者らしい。
美人の母親に、医者の父親か。この身体は親に随分恵まれているようだ。
本来の俺の親を思い出して苦い気分になりつつ、俺は母親によって父親のところへ連れていかれた。
「ウィル。ミハルが熱を出した。診てくれるか」
「本当かい!?すぐに診るよ!!」
ウィルと呼ばれた金髪の男性は、母親に言われるなり先程までやっていたことを放り投げて母親の――正確には母親の腕に抱かれている俺の下に一瞬で迫ってきた。
この金髪の男性こそがこの身体の父親なのだろう。
「え……、ウィリアム先生、俺のことは……」
「むさくるしい騎士より我が子の体調の方が優先に決まっているだろう!」
父は、先程まで父親に診てもらっていたらしい騎士の男性を一喝し部屋から追い出すと、母親から俺を受け取った。
「ミハル?大丈夫かい?少し口の中を見せてね?」
そう言われたので口を開けると、父親が少し驚いた顔をした。
「ねえアリサ!ミハルは天才か!?」
「どうしたウィル」
「今明らかに、僕の言葉を理解した上で口を開けたよ!うちの子は天才なんじゃないか!?」
「当然だろう、私と君の子だぞ。それはいいから早く診ろ」
「ああ、そうだったね!じゃあミハル、ちょっと口開けたまま我慢してね?」
いや、それは中身が成人男性だからであって……。というかこの両親、親馬鹿が過ぎないか?
「うーん……。少し喉が赤いね。風邪を引いてしまったかな」
「何?風邪だと?大丈夫なのか?」
「薬を飲ませて、暖かくしていれば大丈夫だよ」
「そうか、だが……」
「大丈夫だよアリサ。ただの風邪だからきっとすぐ治る。心配しないで」
「しかし、これでミハルが熱を出すのは何度目だ?この子の兄たちはこんなに弱くなかったのに……」
母はそう言うと、俺を見つめたのち、ふるふると肩を震わせ始めた。
「やはり……私が、早く産んでしまったから……」
「アリサ」
悲痛な声を出す母の肩を、父が抱き寄せた。
「君の所為じゃない。だから、そんなに自分を責めないで」
「でも」
「大丈夫。ミハルのことは、僕が絶対に死なせない」
「……ウィル。君が、私の夫でよかった。愛してる」
「僕もだよアリサ」
そんな会話のあと、頭上で両親がいちゃつく音が聞こえ始め、俺は遠い目になった。赤子を間に挟んでいちゃつくなよ……。
それにしても、急に赤ちゃんになってしまうなんて……。
俺は、これから一体どうしたらいいんだよ!誰か教えてくれ!
何故なら、俺の一番大切な親友であり、かつ恋人でもあった男の葬式に参列した後だったからだ。
絶対に俺を一人にしない、と耳にタコができるまで言っていたはずの彼は、原因不明の事故によりあっけなく死に、俺を置き去りにした。
親友――榊原伊月は、親もなく頼れる人の居ない俺の唯一の家族でもあった。
小さいワンルームのアパートで、二人で身を寄せ合いながら暮らしていた。
だが、もう家に帰っても、伊月はいない。もう、この世のどこにも――
「なんで……、なんで俺を置いて逝ったんだよ、伊月……」
家に帰れば、嫌でも俺が孤独となった事実を突きつけられるとわかっていたので、家には戻れず、葬儀場のすぐ近くにあった公園で泣いていた。
幼馴染であり親友であり、そして恋人でもあった伊月。
アイツが居ない世界なんて……
――その時だった。
眩い光が、俺の周りを包み込んだのだ。
「な……なんだ!?」
あまりにも眩しすぎて思わず目を瞑った。
そして、次に目を開けた時――俺の身にはとんでもないことが起きていたのだった。
「……あ?」
先程まで公園のベンチに座っていたはずだったのに、何故か寝転がっていた。
しかも、外に居たはずが、目の前に映るのは空ではなく、白い天井。
(ど、どうなってんだ?)
慌てて起き上がろうとしたが、何故か体に力が入らない。思わず手を目の前に持っていった。すると、ふくふくと丸くて小さな手が映った。
「あう!?」
なんでこんなに俺の手、小さいんだ!?
しかも、驚いて出た声もなんだか甲高くて、赤ちゃんみたいだった。
いや――違う。
「あうううーーー!!?(俺、赤ちゃんになってるーーー!!?)」
みたい、ではなく、本当に赤ちゃんになっていた。
ほんの数分前まで成人男性だったのに、急に赤ちゃんになってしまい、当然ながらパニックに陥った。
親友兼恋人を亡くした後に、まさかの赤ちゃんになってしまうなんて、意味が分からなすぎる。
「ふ、ふえええーん!(どうなってんだよー!)」
嘆きの言葉も弱弱しい泣き声になるだけだった。
もう泣く以外に何もできず、ただひたすら泣いていたら、バタンという扉が開く音が聞こえた。
「――ミハル!」
名前を呼ばれたかと思ったら、目の前に人の顔が映り、身体が持ち上げられた。
「……えぐっ?」
「どうした、苦しいのか?よしよし」
俺の身体を優しく抱き上げ、落ち着かせるように背中を叩いてくれたのは、美しい女性だった。
黒曜石のように艶やかに靡く長い黒髪に、強い意志を感じる紫色の瞳を持ったその女性は、俺が落ち着くまでずっと背中を撫でてくれた。
「随分泣いたようだな、この母がもう少し早く気付ければよかったのだが」
「あうう?(お母さん?)」
どうやらこの女性は、この身体の母親らしい。
ようやく落ち着いた俺は、まじまじと母だという彼女を見つめた。
するとその視線に気付いたのか、彼女が首を傾げた。
「ミハル?今日はなんだか雰囲気が違うな」
「あ、あう……」
まさか我が子の中身が成人男性になっているとは、夢にも思うまい。
なんだか申し訳ない気分になり、女性から目を逸らしたら、額に手が当てられた。
「ん?熱があるな……泣いたからか?」
言われて初めて、なんだか身体がだるいことに気付いた。赤ちゃんの身体は、長い時間泣くだけでも負担がかかるのか?
「念のため、お父さんに診てもらうことにしよう。お父さんはとてもすごいお医者さんだから、きっとすぐに楽になるぞ」
どうやら、この身体の父親は医者らしい。
美人の母親に、医者の父親か。この身体は親に随分恵まれているようだ。
本来の俺の親を思い出して苦い気分になりつつ、俺は母親によって父親のところへ連れていかれた。
「ウィル。ミハルが熱を出した。診てくれるか」
「本当かい!?すぐに診るよ!!」
ウィルと呼ばれた金髪の男性は、母親に言われるなり先程までやっていたことを放り投げて母親の――正確には母親の腕に抱かれている俺の下に一瞬で迫ってきた。
この金髪の男性こそがこの身体の父親なのだろう。
「え……、ウィリアム先生、俺のことは……」
「むさくるしい騎士より我が子の体調の方が優先に決まっているだろう!」
父は、先程まで父親に診てもらっていたらしい騎士の男性を一喝し部屋から追い出すと、母親から俺を受け取った。
「ミハル?大丈夫かい?少し口の中を見せてね?」
そう言われたので口を開けると、父親が少し驚いた顔をした。
「ねえアリサ!ミハルは天才か!?」
「どうしたウィル」
「今明らかに、僕の言葉を理解した上で口を開けたよ!うちの子は天才なんじゃないか!?」
「当然だろう、私と君の子だぞ。それはいいから早く診ろ」
「ああ、そうだったね!じゃあミハル、ちょっと口開けたまま我慢してね?」
いや、それは中身が成人男性だからであって……。というかこの両親、親馬鹿が過ぎないか?
「うーん……。少し喉が赤いね。風邪を引いてしまったかな」
「何?風邪だと?大丈夫なのか?」
「薬を飲ませて、暖かくしていれば大丈夫だよ」
「そうか、だが……」
「大丈夫だよアリサ。ただの風邪だからきっとすぐ治る。心配しないで」
「しかし、これでミハルが熱を出すのは何度目だ?この子の兄たちはこんなに弱くなかったのに……」
母はそう言うと、俺を見つめたのち、ふるふると肩を震わせ始めた。
「やはり……私が、早く産んでしまったから……」
「アリサ」
悲痛な声を出す母の肩を、父が抱き寄せた。
「君の所為じゃない。だから、そんなに自分を責めないで」
「でも」
「大丈夫。ミハルのことは、僕が絶対に死なせない」
「……ウィル。君が、私の夫でよかった。愛してる」
「僕もだよアリサ」
そんな会話のあと、頭上で両親がいちゃつく音が聞こえ始め、俺は遠い目になった。赤子を間に挟んでいちゃつくなよ……。
それにしても、急に赤ちゃんになってしまうなんて……。
俺は、これから一体どうしたらいいんだよ!誰か教えてくれ!
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