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第3章 戦い開始
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「なに!」
彼はいつも叫んでいた。彼自身が怒りたいのか、仕方なく怒りの感情を示しているのか真偽は不明だ。もはや始終怒りを露わにしていたから、どちらも兼ねているかもしれない。
「五万の軍だぞ! それが敗走だと!」
「ははあ!」
部下は事実を伝え、彼の怒りが過ぎ去るのを待つばかりだ。
「で、俺の軍はどこに?」
「それが敵の陽動にかかり、方々散り散りに逃げ去り、五万のうち一万ほどの兵が、都に体勢を立て直し、敵を前に膠着しておるとか」
タンという音がした。彼は立ち上がり、愛用の矛を手にして階段を下る。
「俺が出る」
「ではさっそく兵を」
「いや俺だけでいい。火都の兵はまだ出すな」
「殿下……」
側近が話しかける間もなく、烈王はすでにその場を後にした。彼は頼りにならない兵を連れて行くより、力のある者がいればいいと直感した。すなわち自分だ。敵側の五千にいかなる知略と気概を兼ね備えた者がいるかは不明だ。しかし、まあそれは面白いことではあるが、反面忌々しいことではある。
出立が少し速まるだけだ。まさか王がいない国の占領にこれほど時間がかかるとは。人材のいない西国に、どのような知者がいるのか。総大将はくそやつだ。
だが、思わぬ反撃もここまでだ。優れた作戦も王が現れれば意味をなさない。
見せてやろう。俺の、力を……
烈王は、姿かたちを変えた。転変。臭気が漂い、体に赤い斑点ができ、それはやがてうろこになった。顔は細長くとがり、いでたちは竜そのものだ。
赤き竜が降臨した。転変した烈王は、咆哮した。その声は都に轟いた。
火の騎馬隊を率いて南への進軍をしたかったが、そういうわけにはいかない。南への道は広く、王の行軍を領民に見せつけるいい機会だったのに。せっかくの楽しみを奪ったやつにはたっぷりと思い知らせてやる。
竜は、一瞬にして火都を飛び去り天高く舞う。南の地を目指して一直線に飛んで行った。
彼はいつも叫んでいた。彼自身が怒りたいのか、仕方なく怒りの感情を示しているのか真偽は不明だ。もはや始終怒りを露わにしていたから、どちらも兼ねているかもしれない。
「五万の軍だぞ! それが敗走だと!」
「ははあ!」
部下は事実を伝え、彼の怒りが過ぎ去るのを待つばかりだ。
「で、俺の軍はどこに?」
「それが敵の陽動にかかり、方々散り散りに逃げ去り、五万のうち一万ほどの兵が、都に体勢を立て直し、敵を前に膠着しておるとか」
タンという音がした。彼は立ち上がり、愛用の矛を手にして階段を下る。
「俺が出る」
「ではさっそく兵を」
「いや俺だけでいい。火都の兵はまだ出すな」
「殿下……」
側近が話しかける間もなく、烈王はすでにその場を後にした。彼は頼りにならない兵を連れて行くより、力のある者がいればいいと直感した。すなわち自分だ。敵側の五千にいかなる知略と気概を兼ね備えた者がいるかは不明だ。しかし、まあそれは面白いことではあるが、反面忌々しいことではある。
出立が少し速まるだけだ。まさか王がいない国の占領にこれほど時間がかかるとは。人材のいない西国に、どのような知者がいるのか。総大将はくそやつだ。
だが、思わぬ反撃もここまでだ。優れた作戦も王が現れれば意味をなさない。
見せてやろう。俺の、力を……
烈王は、姿かたちを変えた。転変。臭気が漂い、体に赤い斑点ができ、それはやがてうろこになった。顔は細長くとがり、いでたちは竜そのものだ。
赤き竜が降臨した。転変した烈王は、咆哮した。その声は都に轟いた。
火の騎馬隊を率いて南への進軍をしたかったが、そういうわけにはいかない。南への道は広く、王の行軍を領民に見せつけるいい機会だったのに。せっかくの楽しみを奪ったやつにはたっぷりと思い知らせてやる。
竜は、一瞬にして火都を飛び去り天高く舞う。南の地を目指して一直線に飛んで行った。
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