41 / 156
第3章 諸王の会議
5
しおりを挟む
すっかり変わっちまった。全然違う街並になっている。外壁なんて大層なものはなかったし、都は緑が生い茂っていた。なのに、今はずいぶんとお堅いじゃないか。見渡せば煉瓦造りの家が多い。
でも宮殿だけは不変だ。おっと誰かいる。
「久しいなあ。懐かしの我が家!」
幹道には人はいない。せっかく帰ってきたというのに、嫌われちまったか。
宮殿の近くまでやってきて感じる。このカチカチの、無機質な建造物が嫌いだった。いかめしくて、何の自由も許してくれない感じがとても不愉快だ。
事実宮廷内での生活は、常に礼法を習うことばかりだった。全てはこの女のまま動かされていた。制約された日々……自由なき生活……
「お久しぶり」
烈王は、自分を辺境の地に追いやった女を一瞥した。相変わらず美しかった。苦々しく思うほど、涼やかな顔は十年という歳月を隔てても変わりがない。
「ええ、御変わりなく」
彼はすでに二十を過ぎた大人だった。社交辞令という術を会得していた。
「あと一人、どうしたのかしらね?」
夕美は笑う。あざけるような笑顔は相変わらず厭味ったらしい。こちらも全然変わっていない。
「さあ、いつも一緒じゃないからね、知らん」彼は嘘をつく。意味のない嘘を。
「ここだよ」
一同、声のする方を向く。気づけは最後の王がいた。四ノ国王、聡士。王名から死の王、死の魔術師と言われている。烈王の友人にして、同盟者であった。
この世のあらゆる謀略は、彼が淵源となっている。陰で言われるほど見えないところで力を誇示している男がそこにいる。
「全員、そろったようね。残念なことに、伍の王が寿命を迎えてしまわれたわ」
「本当に、唐突だね」
「ああ、惜しい人を亡くしちゃったなあ。彼から色々と魔術をまだ学びたかった」
彼は心からお悔やみを述べているようだが全くの本心ではない。
「陛下がお待ちよ。皆さん心してね」
「はい」
人一倍うずうずしているのが、猛留であった。久しぶりの姉弟の対面だ。忘れるわけがないあの日。放逐された日。忘れ去られた日。彼の心の篩は過去への怒りで満ち溢れ、今にも零れ落ちそうだ。
やがて皆が思い出す瞬間が訪れる。わが身を見ておののく。烈王の名とともに。
でも宮殿だけは不変だ。おっと誰かいる。
「久しいなあ。懐かしの我が家!」
幹道には人はいない。せっかく帰ってきたというのに、嫌われちまったか。
宮殿の近くまでやってきて感じる。このカチカチの、無機質な建造物が嫌いだった。いかめしくて、何の自由も許してくれない感じがとても不愉快だ。
事実宮廷内での生活は、常に礼法を習うことばかりだった。全てはこの女のまま動かされていた。制約された日々……自由なき生活……
「お久しぶり」
烈王は、自分を辺境の地に追いやった女を一瞥した。相変わらず美しかった。苦々しく思うほど、涼やかな顔は十年という歳月を隔てても変わりがない。
「ええ、御変わりなく」
彼はすでに二十を過ぎた大人だった。社交辞令という術を会得していた。
「あと一人、どうしたのかしらね?」
夕美は笑う。あざけるような笑顔は相変わらず厭味ったらしい。こちらも全然変わっていない。
「さあ、いつも一緒じゃないからね、知らん」彼は嘘をつく。意味のない嘘を。
「ここだよ」
一同、声のする方を向く。気づけは最後の王がいた。四ノ国王、聡士。王名から死の王、死の魔術師と言われている。烈王の友人にして、同盟者であった。
この世のあらゆる謀略は、彼が淵源となっている。陰で言われるほど見えないところで力を誇示している男がそこにいる。
「全員、そろったようね。残念なことに、伍の王が寿命を迎えてしまわれたわ」
「本当に、唐突だね」
「ああ、惜しい人を亡くしちゃったなあ。彼から色々と魔術をまだ学びたかった」
彼は心からお悔やみを述べているようだが全くの本心ではない。
「陛下がお待ちよ。皆さん心してね」
「はい」
人一倍うずうずしているのが、猛留であった。久しぶりの姉弟の対面だ。忘れるわけがないあの日。放逐された日。忘れ去られた日。彼の心の篩は過去への怒りで満ち溢れ、今にも零れ落ちそうだ。
やがて皆が思い出す瞬間が訪れる。わが身を見ておののく。烈王の名とともに。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
龍騎士イリス☆ユグドラシルの霊樹の下で
ウッド
ファンタジー
霊樹ユグドラシルの根っこにあるウッドエルフの集落に住む少女イリス。
入ったらダメと言われたら入り、登ったらダメと言われたら登る。
ええい!小娘!ダメだっちゅーとろーが!
だからターザンごっこすんなぁーーー!!
こんな破天荒娘の教育係になった私、緑の大精霊シルフェリア。
寿命を迎える前に何とかせにゃならん!
果たして暴走小娘イリスを教育する事が出来るのか?!
そんな私の奮闘記です。
しかし途中からあんまし出てこなくなっちゃう・・・
おい作者よ裏で話し合おうじゃないか・・・
・・・つーかタイトル何とかならんかったんかい!
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です
ぽっちゃりおっさん異世界ひとり旅〜目指せSランク冒険者〜
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
酒好きなぽっちゃりおっさん。
魔物が跋扈する異世界で転生する。
頭で思い浮かべた事を具現化する魔法《創造魔法》の加護を貰う。
《創造魔法》を駆使して異世界でSランク冒険者を目指す物語。
※以前完結した作品を修正、加筆しております。
完結した内容を変更して、続編を連載する予定です。
【完結】おじいちゃんは元勇者
三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話…
親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。
エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…
異世界に来ちゃったよ!?
いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。
しかし、現在森の中。
「とにきゃく、こころこぉ?」
から始まる異世界ストーリー 。
主人公は可愛いです!
もふもふだってあります!!
語彙力は………………無いかもしれない…。
とにかく、異世界ファンタジー開幕です!
※不定期投稿です…本当に。
※誤字・脱字があればお知らせ下さい
(※印は鬱表現ありです)
転生したらついてましたァァァァァ!!!
夢追子
ファンタジー
「女子力なんてくそ喰らえ・・・・・。」
あざと女に恋人を奪われた沢崎直は、交通事故に遭い異世界へと転生を果たす。
だけど、ちょっと待って⁉何か、変なんですけど・・・・・。何かついてるんですけど⁉
消息不明となっていた辺境伯の三男坊として転生した会社員(♀)二十五歳。モブ女。
イケメンになって人生イージーモードかと思いきや苦難の連続にあっぷあっぷの日々。
そんな中、訪れる運命の出会い。
あれ?女性に食指が動かないって、これって最終的にBL!?
予測不能な異世界転生逆転ファンタジーラブコメディ。
「とりあえずがんばってはみます」
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる