38 / 156
第3章 諸王の会議
2
しおりを挟む
すっかり変わっちまった。全然違う街並になっている。外壁なんて大層なものはなかったし、都は緑が生い茂っていた。なのに、今はずいぶんとお堅いじゃないか。見渡せば煉瓦造りの家が多い。
でも宮殿だけは不変だ。おっと誰かいる。
「久しいなあ。懐かしの我が家!」
幹道には人はいない。せっかく帰ってきたというのに、嫌われちまったか。
宮殿の近くまでやってきて感じる。このカチカチの、無機質な建造物が嫌いだった。いかめしくて、何の自由も許してくれない感じがとても不愉快だ。
事実宮廷内での生活は、常に礼法を習うことばかりだった。全てはこの女のまま動かされていた。制約された日々……自由なき生活……
「お久しぶり」
烈王は、自分を辺境の地に追いやった女を一瞥した。相変わらず美しかった。苦々しく思うほど、涼やかな顔は十年という歳月を隔てても変わりがない。
「ええ、御変わりなく」
彼はすでに二十を過ぎた大人だった。社交辞令という術を会得していた。
「あと一人、どうしたのかしらね?」
夕美は笑う。あざけるような笑顔は相変わらず厭味ったらしい。こちらも全然変わっていない。
「さあ、いつも一緒じゃないからね、知らん」彼は嘘をつく。意味のない嘘を。
「ここだよ」
一同、声のする方を向く。気づけは最後の王がいた。四ノ国王、聡士。王名から死の王、死の魔術師と言われている。烈王の友人にして、同盟者であった。
この世のあらゆる謀略は、彼が淵源となっている。陰で言われるほど見えないところで力を誇示している男がそこにいる。
「全員、そろったようね。残念なことに、伍の王が寿命を迎えてしまわれたわ」
「本当に、唐突だね」
「ああ、惜しい人を亡くしちゃったなあ。彼から色々と魔術をまだ学びたかった」
彼は心からお悔やみを述べているようだが全くの本心ではない。
「陛下がお待ちよ。皆さん心してね」
「はい」
人一倍うずうずしているのが、猛留であった。久しぶりの姉弟の対面だ。忘れるわけがないあの日。放逐された日。忘れ去られた日。彼の心の篩は過去への怒りで満ち溢れ、今にも零れ落ちそうだ。
やがて皆が思い出す瞬間が訪れる。わが身を見ておののく。烈王の名とともに。
でも宮殿だけは不変だ。おっと誰かいる。
「久しいなあ。懐かしの我が家!」
幹道には人はいない。せっかく帰ってきたというのに、嫌われちまったか。
宮殿の近くまでやってきて感じる。このカチカチの、無機質な建造物が嫌いだった。いかめしくて、何の自由も許してくれない感じがとても不愉快だ。
事実宮廷内での生活は、常に礼法を習うことばかりだった。全てはこの女のまま動かされていた。制約された日々……自由なき生活……
「お久しぶり」
烈王は、自分を辺境の地に追いやった女を一瞥した。相変わらず美しかった。苦々しく思うほど、涼やかな顔は十年という歳月を隔てても変わりがない。
「ええ、御変わりなく」
彼はすでに二十を過ぎた大人だった。社交辞令という術を会得していた。
「あと一人、どうしたのかしらね?」
夕美は笑う。あざけるような笑顔は相変わらず厭味ったらしい。こちらも全然変わっていない。
「さあ、いつも一緒じゃないからね、知らん」彼は嘘をつく。意味のない嘘を。
「ここだよ」
一同、声のする方を向く。気づけは最後の王がいた。四ノ国王、聡士。王名から死の王、死の魔術師と言われている。烈王の友人にして、同盟者であった。
この世のあらゆる謀略は、彼が淵源となっている。陰で言われるほど見えないところで力を誇示している男がそこにいる。
「全員、そろったようね。残念なことに、伍の王が寿命を迎えてしまわれたわ」
「本当に、唐突だね」
「ああ、惜しい人を亡くしちゃったなあ。彼から色々と魔術をまだ学びたかった」
彼は心からお悔やみを述べているようだが全くの本心ではない。
「陛下がお待ちよ。皆さん心してね」
「はい」
人一倍うずうずしているのが、猛留であった。久しぶりの姉弟の対面だ。忘れるわけがないあの日。放逐された日。忘れ去られた日。彼の心の篩は過去への怒りで満ち溢れ、今にも零れ落ちそうだ。
やがて皆が思い出す瞬間が訪れる。わが身を見ておののく。烈王の名とともに。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。
▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ......
どうしようΣ( ̄□ ̄;)
とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!!
R指定は念のためです。
マイペースに更新していきます。
Sランク冒険者の受付嬢
おすし
ファンタジー
王都の中心街にある冒険者ギルド《ラウト・ハーヴ》は、王国最大のギルドで登録冒険者数も依頼数もNo.1と実績のあるギルドだ。
だがそんなギルドには1つの噂があった。それは、『あのギルドにはとてつもなく強い受付嬢』がいる、と。
そんな噂を耳にしてギルドに行けば、受付には1人の綺麗な銀髪をもつ受付嬢がいてー。
「こんにちは、ご用件は何でしょうか?」
その受付嬢は、今日もギルドで静かに仕事をこなしているようです。
これは、最強冒険者でもあるギルドの受付嬢の物語。
※ほのぼので、日常:バトル=2:1くらいにするつもりです。
※前のやつの改訂版です
※一章あたり約10話です。文字数は1話につき1500〜2500くらい。
捨てられた転生幼女は無自重無双する
紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。
アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。
ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。
アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。
去ろうとしている人物は父と母だった。
ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。
朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。
クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。
しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。
アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。
王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。
アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。
※諸事情によりしばらく連載休止致します。
※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
異世界宿屋の住み込み従業員
熊ごろう
ファンタジー
なろう様でも投稿しています。
真夏の昼下がり歩道を歩いていた「加賀」と「八木」、気が付くと二人、見知らぬ空間にいた。
そこに居たのは神を名乗る一組の男女。
そこで告げられたのは現実世界での死であった。普通であればそのまま消える運命の二人だが、もう一度人生をやり直す事を報酬に、異世界へと行きそこで自らの持つ技術広めることに。
「転生先に危険な生き物はいないからー」そう聞かせれていたが……転生し森の中を歩いていると巨大な猪と即エンカウント!? 助けてくれたのは通りすがりの宿の主人。
二人はそのまま流れで宿の主人のお世話になる事に……これは宿屋「兎の宿」を中心に人々の日常を描いた物語。になる予定です。
聖女の姉が行方不明になりました
蓮沼ナノ
ファンタジー
8年前、姉が聖女の力に目覚め無理矢理王宮に連れて行かれた。取り残された家族は泣きながらも姉の幸せを願っていたが、8年後、王宮から姉が行方不明になったと聞かされる。妹のバリーは姉を探しに王都へと向かうが、王宮では元平民の姉は虐げられていたようで…聖女になった姉と田舎に残された家族の話し。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる