七宝物語

戸笠耕一

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第五部 美しき王

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大帝の都

 新都はかつての上王が構えていた都だった。大帝歴元年。大帝は上王を打ち破った。上王はその命を終えようとしていたときだ。

 力の衰えた上王は、かつての自分を牢獄に封じた時とは変わり、あまりにも脆かった。王は力だ。力なき者は滅びなければならない。そう冷たい牢獄の中で大帝は知った。

 当時の自分は弱い。あまりにも若く、非力だった。だが今は違う。大陸はすべて己のものだ。最後まで抵抗していた国も降伏した。大陸は再編させられ、領土は巨大になった。

 今や自分は王ではない。それを超えた大帝であると感じた。帝の位は聖女のみに与えられたものだ。だがそれがどうしたというのだ? 

 大陸を征服したものが最も尊い位を授かって何が悪いのだ。かつての烈王は大帝を称するようになった。王を超えた存在として。


 
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