七宝物語

戸笠耕一

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第四部 楽園崩壊

プロローグ 暗黒の祭壇

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 霧深き森の奥。日付を越えた深夜。涼風がなびき野鳥がいななく中のこと。道なき道を進んだ先に暗黒へと通じる洞窟の入り口がある。物好きな者が入り口の中に入ったのならば、覚悟したほうがいい。ただで帰れる保障はない。

 覚悟を決め、歩を進めた者がいるならば教えよう。事前に懐中電灯を所持することを勧める。明かりに映し出された先には傾斜が続いている。ざらついた岩肌に足を取られないよう気をつけながら、下に降りて行こう。

 入り組んだ洞窟の中を進んでいくと、かすかな異変に気付く。足元は平らになり、洞窟は整っていく。人の手がかかっているようだ。先に進んでみる。ボウッと光が揺らいでいる。誰かがいるのかもしれない。何か知られたくない者が隠れて何かをしている気がする。

 光は段々と強くなっていく。恐れずに近くまで行くと、洞窟の中に巨大な空間が隠されていることがわかる。煉瓦が敷き詰められ、階段が下に向かって続いている。空間の中心に人々が集まっている。六芒星の紋章が地面に描かれ、中央に祭壇がある。どうやらここは礼拝堂のようだ。

 何をしているか? 確かめてみる。まずは目の前の階段を降りてみる。降った先はまた暗がりに広がっている。明かりは中央の人だかりに集約している。

 祭壇の周りには大勢集まっている。松明に彩られた光景は日常とは異なる世界がある。全員が黒色の円錐形の尖った帽子を被った集団が祭壇の中央に集まっている。とんがり帽子と呼ぶことにしよう。

 とんがり帽子たちに視線は祭壇に掲げられた生贄に注がれている。

 視線の先にある手足を縛られた20代の女。もがいても縄目はきっちりと締められ動くことができずにいる。

 ぎいいと礼拝堂の奥の扉が開かれる。

 中からまたとんがり帽子が現れる。ただ着用している服装の色が異なる。その者は紫。

 他のとんがり帽子たちが膝を折る。

「死は一抹の瞬間に過ぎません。死は大いなる生への礎に過ぎないのです」

 女の声である。ただあまりにも無機質で感情の抑揚がない。

 むーっ!

 女の目に死の影がチラつく。振り上げられた短刀。さっと振り落とされる。この世のものとは思えない悲鳴が礼拝堂を突き抜ける。広大な霧深き森の奥ではすべてがかき消されてしまう。

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