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第1章 世界の理
プロローグ
しおりを挟むはるか歴史が語られる以前より
人々の諍いは絶えなかった。人の争いは業を生んだ。業はやがて禍となり大地に根付いた。業は人々の影となり、怒りとなり、闇となり人々の行手を阻んだ。光はないに思えた。
しかし聖女が現れた。聖女は禍を祓い七つの器に封じた。こうして聖女は人々に安息の地を与えた。聖女は七つの器に封じた禍を七人の賢者に与えて統治するように言った。
聖女はやがて統治権を七人に託して自らは身を引いた。腕に光る聖なる腕輪こそ、聖女たる証である。腕輪は母から娘へと受け継がれていく。しかし時の流れと共に聖女の血脈は途絶えた。
聖なる腕輪だけが残り、その伝説は歴史の彼方へと埋もれた。
そして世は力ある七人の王の元、戦乱に明け暮れ、終わることのない日々を送っていた。
王たちの力は絶大であった。只人では触れることもできず、無敵の存在だった。彼らの力の根源は七つ器にあった。
太古の昔よりある人の業が産みし七つの禍に認められし力ある者は器に宿る禍を従えられる。そうではないとき、命は奪われ永劫宝の糧となる。試練を乗り越え得た力を持った者は王たる気質を備えているとされ、誰もが従う。そうすれば世は収まるはずだった。しかし力はさらなる力を呼ぶ。
世は収まるどころか戦乱により地は荒れ、大気は煙火に包まれ、人々は疲弊していく。力による支配が薄々良い結果を生まないという認識を人々はおろか賢明な王は感じていた。
時に新暦二十三年。元号は希和二十三年である。
後世には、大いなる年と言われている。
長きの戦乱の果てに西王は諸王の王となった。西王の名は萌希。強大な力を持つ王である。王は戦乱の世を古き時代として旧暦と名づけ封印した。
西王は諸王の王が立つ時、聖女現るという予言を信じていた。予言は当たった。凱旋式の中で見つけたのだ。西都の貧民街の娘がそうだった。聖女の証である聖なる腕輪は少女に馴染んだ。名前を希和子と言った。
聖女がこの世に再臨した。世界は変わった。人々が聖女を再認し始めたときより物語は始まる。
世は平安と乱世の狭間にいた。
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