深木志麻

第五章

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　部屋の灯りが消えて朗読が始まる。
　
　タイトル　言葉は刃物
　藤垣美星作
　
１　深木志麻の死について
　
　正直に言わせてください。大変です。

　大変というのは私のスケジュールや、プレッシャーです。

　先輩が死んで私のところに取材が一気に来ました。質問は先輩の死についてお気持ちばかりでした。

　全く嫌になりますよね。十代の作家は私だけになっちゃいましたから。志麻先輩が背負っていた負担を全て私が担うことになってしまったんです。

　私なんてまだまだなのに。でも未成年だからって甘やかされる世界ではありません。私はプロです。文芸部もそうだし、出版不況と言われている文芸を活発にしなければいけません。

　私は自分が引っ張る人間として周りに厳しくしていこうと考えています。あんまり言いたくないけど、部室を休憩所と勘違いしている子がいます。その子はずっとスマホをいじるか、ゲームしているばかりです。小説は家で書いているとかいうけど、その子が書いた作品を読んだことがありません。

　先輩たちはあまり言わないけど、私は違います。私たちはプロの小説家としてやっていく集団ですよね。ならしっかりアウトプットしないといけない。だから怠けている人がいたら言ってあげないといけないと思う。それが本人のためでも、私のためでもあるから。

　でも矛盾しているけど、志麻先輩が亡くなった後、部室で小説はあんまり書いていません。何だかすごくやりづらくて。あの日、六月六日。どうしてあんなことが起きてしまったんだろう。