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メモリ―9 推理
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午後9時23分。ヘリは飛び立っていく。
日下部はヘリを追跡しろと叫んだ。
「新井はどうした?」振り返ると現場をかき乱したキャリア風情はどこにもない。お得意の会議や資料の作成にでも言ったのか。
「用があると。あとヘリに惑わされるなと言われておりました」
キャリアがないと日下部は悪態をついた。所詮現場は知らん奴だ。
「犯人は1人も逃すな!」
今度こそ一網打尽にしてやる。日下部はプルプルと震えた手でこぶしを机に叩きつけていた。上層部は多分こんな具合に餌に食いつくようJBがしている。
問題はこっちにある。
「こちらエコー。正門に発煙筒を撒きました」
「こちらシエラ。よし撤収だ。お前らも急げよ」
撤収するタイミングを見計らう。警察がうまくダミーに引き付けられるまで待っていた。
「こちらエコー。警官隊に動きあり。突撃してきます」
「こちらシエラ。ヘリを出されろ」
旧校舎と今の校舎にはフェンスを隔てて脇道がある。犯人たちは次々と越えていく。
「早くしろ。お前らはたっぷりと可愛がってやるよ」
煮え湯を飲まされたので気のすむようにするわけだ。それだけは何としても避けるべく頭を使わなければ。沙良は現状の自分にできることを考えていた。自分だけではなく3人が生き延びるビジョンをひねり出そうとしていた。
「5人ずつになって、散れ。灯りはあまり付けるなよ」
暗がりを慣れた足取りで進んでいく。泉岳寺の本堂に出る。ここを抜ければパンが止められている駐車場まであと少しか。こちらは手薄になっている。犯人たちは迷彩服を脱ぎ捨て本堂の床下に隠していたツナギに着替えた。近辺で道路工事が行われているから、関係者に紛れて逃げるわけだ。
念には念のいったことだが小細工に過ぎずビジョンを描けるに至っていない。警察も犯人も、所詮は単なる登場人物に過ぎない。
「ばかめ。まんまと釣られやがって」
シエラの勝ち誇った声がしたときだ。闇夜に雷鳴のごとき声が境内に響き渡る。
ビジョンとは常に先を読み続けるもの。ビジョンを頭に持って行動する者をビジョナリーと呼ぶ。もう1人のビジョナリーが姿を現した。
「なるほど。密林の中に混じって抜けだし、ツナギに着替えて工事関係者を装い、闇夜に乗じて雲隠れをするとは」
誰だとシエラの低いくぐもった声がとどろいた。聞いたことがある声だった。
オンライン上と銀座の歩道橋の上で2回である。つまり3度目の正直というわけだ。
日下部はヘリを追跡しろと叫んだ。
「新井はどうした?」振り返ると現場をかき乱したキャリア風情はどこにもない。お得意の会議や資料の作成にでも言ったのか。
「用があると。あとヘリに惑わされるなと言われておりました」
キャリアがないと日下部は悪態をついた。所詮現場は知らん奴だ。
「犯人は1人も逃すな!」
今度こそ一網打尽にしてやる。日下部はプルプルと震えた手でこぶしを机に叩きつけていた。上層部は多分こんな具合に餌に食いつくようJBがしている。
問題はこっちにある。
「こちらエコー。正門に発煙筒を撒きました」
「こちらシエラ。よし撤収だ。お前らも急げよ」
撤収するタイミングを見計らう。警察がうまくダミーに引き付けられるまで待っていた。
「こちらエコー。警官隊に動きあり。突撃してきます」
「こちらシエラ。ヘリを出されろ」
旧校舎と今の校舎にはフェンスを隔てて脇道がある。犯人たちは次々と越えていく。
「早くしろ。お前らはたっぷりと可愛がってやるよ」
煮え湯を飲まされたので気のすむようにするわけだ。それだけは何としても避けるべく頭を使わなければ。沙良は現状の自分にできることを考えていた。自分だけではなく3人が生き延びるビジョンをひねり出そうとしていた。
「5人ずつになって、散れ。灯りはあまり付けるなよ」
暗がりを慣れた足取りで進んでいく。泉岳寺の本堂に出る。ここを抜ければパンが止められている駐車場まであと少しか。こちらは手薄になっている。犯人たちは迷彩服を脱ぎ捨て本堂の床下に隠していたツナギに着替えた。近辺で道路工事が行われているから、関係者に紛れて逃げるわけだ。
念には念のいったことだが小細工に過ぎずビジョンを描けるに至っていない。警察も犯人も、所詮は単なる登場人物に過ぎない。
「ばかめ。まんまと釣られやがって」
シエラの勝ち誇った声がしたときだ。闇夜に雷鳴のごとき声が境内に響き渡る。
ビジョンとは常に先を読み続けるもの。ビジョンを頭に持って行動する者をビジョナリーと呼ぶ。もう1人のビジョナリーが姿を現した。
「なるほど。密林の中に混じって抜けだし、ツナギに着替えて工事関係者を装い、闇夜に乗じて雲隠れをするとは」
誰だとシエラの低いくぐもった声がとどろいた。聞いたことがある声だった。
オンライン上と銀座の歩道橋の上で2回である。つまり3度目の正直というわけだ。
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