ビジョンゲーム

戸笠耕一

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ビジョン5 調査

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 ティーポットをそっと持ち上げ、ふたを押さえ静かにカップにお茶を注いだ。赤みがかった茶色の液体がすっと流れ込んでいく。

「お茶だよ」

 貴子は勝手に鏡の裏を見て沙良が不快な思いをしていないか気がかりだった。お茶もせっかく入れてくれたのに少しも喉を通らない。

「気にしないでよ。二人で調べようって決めたから」

 立ち上がってベッドにころころと寝転んで伸びをしていた。奔放だなと貴子は親友の可愛い素顔を好きになった。

「じゃはじめよっか?」

 沙良はベッドで少しだけ考えたようなそぶりを見せる。

「サイトを調べてみた。ねえ貴子あのサイトかなりやばい」

 沙良は急にまじめな顔で貴子を見すえた。

「なにそれ?」

「表は小説投稿サイトだけど。ダークウェブとつながっている。年会費を払って有料会員になると専用のVPNが払い出されるの。そこからTorを使って犯罪サイトにアクセスできる。昨日そこまではやった」

「沙良、そういうの、私分かんないよ」

 まくし立てるように専門用語を交えて話す友人に貴子は慌てふためいた。

「そっか、ごめんね。わかりやすくいうよ。貴子がいつも投稿しているサイトは裏で危険なところとつながっているの。犯罪を実行する計画を考える人がお金を受け取っている」

「それって? やばいよね……」

「違法サイトだね。VPNは位置情報と通信を暗号化してくれるツールだよ。危ないからばれないよう仕組みができている」

 ゾクリと背筋が凍る思いを貴子はした。事件の調査って聞いて浮かれていたかもしれない。沙良は事件の当事者だからまじめになっている。当然だが……

「JBって人を調べたの。この人凄腕の犯罪ビジョナリーだって呼ばれているらしいの」

 犯罪ビジョナリー。ミステリー小説を読んでいるような気分になった。貴子はジェットコースターが嫌いだった。高いところからヒュンと落ちる瞬間に耐えがたかった。ミステリーでも同様のにおいがした。

「JBって人に絡んだの?」

「まだだね。会うにはいろいろルートを経由しないといけないの。それに今会うのは危険だよ。もうちょっと慎重にいかないと。変に嗅ぎまわっていると思われたくないから」

「うちらかなりやばいところに触れていない。ね、なんかさほかの方法を」

「貴子、JBが書いた小説読んだけど。主人公の女の子は私だよ。内容がそっくり。続き読んだけどトラック運転手を事故に見せかけて殺した方法が書いてあった」

「嘘でしょ? 何でそんなこと?」

 貴子は素っ頓狂な声を上げる。

「すごい人の盲点を突くのがうまいの。誰も被害者本人が自分のトラックに細工していたなんて思わないよ」

「じゃあ自殺?」

「違う。運転手は奥さんの愛人を殺そうとしていたの。それに気づいた奥さんが愛人と連携して、計画を利用して逆に殺した」

 炎をまとった娘の復讐は生々しい出だしを見て読むのをやめてしまった。貴子は火に包まれた目の間にいる親友の姿を想像してしまい読みたくなかった。

「トラックは? 自分の車ってあると思うけど」

「ナンバープレート。すり替えたとか」

「小説に書いてあったの?」

「私の推測だけど。サイトは見ているけどしばらく更新がない」

「ねえ沙良のご両親は? どう関係あるの?」

「今のところないよ。新聞で調べた運送会社とパパの会社つながりないし、二人の死は計画の誤算だったかもしれない」

「じゃあ、巻き添えってこと?」

 コクリと沙良の細長い首筋が前に傾いた。ひどい、何の落ち度もないのに。沙良だって何一つ悪くないじゃない。どうしてこんなに聡明で優しい女の子が理不尽な目に合わないといけないのか。貴子は憤りを覚えた。

「警察に言わない? そっちの方がいい気がしてきた。事件の捜査なんてやっぱり私たちには厳しいよ」

「あの人たちは信憑性のない情報を信じると思う? あの人たちが何をしてくれるの?」

 珍しく憤りを覚え白いい素肌が紅潮している姿を見て貴子は言葉をかけられなくなる。何か事情がありそうだ。

 被害者連絡制度という仕組みがある。捜査状況や被疑者の名前、起訴不起訴の状況を教えてくれる。しかし捜査中の場合は教えてくれない。捜査が終わるまで時間がかかる。やっとの思いで沙良の手元に入った情報は被疑者嫌疑不十分という紙一枚に記されていた。

 B5用紙がたった一枚。ほとんどが黒塗りにされて得られる情報はなかったという。

「こいつらを殺してやりたいって。そんな感情が湧き出てくるなんて想像もしてみなかった」

 ぎゅっと貴子の体が引き締まる思いがした。沙良の心痛を察するに堪えがたいものがある。

「ごめん、私は沙良の気持ちに気づけていなかった。本当にごめんなさい。無理はしないでね」

 沙良に降りかかった被害を知らずに貴子は友達ずらして毎日を送ってきた。友達の裏側を見てしまい、恐怖を覚えてしまった。信じられなくなった自分がいた。事件を話し出す沙良は別人のようだった。何かにとりつかれたように没頭している。

「いいよ。仕方ないよ」

 鏡に貼られた一式を沙良は睨むようにしてみた。

「前に刑事さんが病院に来て名刺を渡してくれたから、実際に聞いてみたの」

 沙良の瞳にいつしか執念が宿っていた。

「板倉って人だけど、その人も誰か裏で指揮している奴がいるかもしれないって」

「JB?」

「調べたのは一応ここまで。一方的にしゃべっちゃった。そっちはどう?」

 貴子は聞かれたので図書館やネットでの調査を話した。現地に行ってもみたが正直見えてこない。

「あんまりお役に立てないけど」

「事件現場はどうだった?」

「今は事件の面影はないけど。献花台があったから。お花置いてきた。結構おいてあってやさしい人たちがいるね」

「そうなの。貴子、現場の近くに歩道橋あったでしょ? 行ってみた?」

「Xになっているところだよね。よくドラマの撮影になっている?」

「そうそう」

「書いている恋愛小説で好きな人と結ばれるシーンで出したけど、やっぱりいいよね。ときめき橋って名前らしいよ」

 沙良の緊迫した表情に貴子は一瞬メルヘンな気分になったが、すぐに黙った。沙良は男がと口火を切った。

「フロントミラー越しに私を双眼鏡か何かで見ていたの。JBかもしれない。事件現場を見に来たのよ」

 沙良はいきなり立ち上がると三面鏡を開いた。全開になった沙良の内側の世界。それを前に沙良は演説をする政治家のように語りだした。どこか恍惚と輝いていて女神のように気高かった。

「ねえ貴子。歩道橋には何かなかった? なんでもいいの。ヒントになりそうなもの。なかった?」

 沙良は貴子に近づくと腕をつかんでゆする。腕はぎゅっと締め付けられ圧迫を受けた。

「わかんない。見晴らしのいい場所だけど。沙良、痛いよ」

 ハッと沙良は我に返り掴んでいた手を離す。

「ごめんなさい。少し冷静になる」

 沙良は目を閉じて後ろを向くと、何度か深呼吸をする。きちんと伸びた背筋。すらりと細く白い砂浜のようなうなじがキラキラと輝いている。そっと肩に何かが乗っかる感覚がした。貴子の手だった。

「いつだって私は沙良の味方だからね」

 言葉では言いつつも貴子は不安でいっぱいになっていた。自分がどこか遠くへ行ってしまう懸念がある。今では事件に巻き込まれてしまい後悔している。ティーポットをそっと持ち上げ、ふたを押さえ静かにカップにお茶を注いだ。赤みがかった茶色の液体がすっと流れ込んでいく。

「お茶だよ」

 貴子は勝手に鏡の裏を見て沙良が不快な思いをしていないか気がかりだった。お茶もせっかく入れてくれたのに少しも喉を通らない。

「気にしないでよ。二人で調べようって決めたから」

 立ち上がってベッドにころころと寝転んで伸びをしていた。奔放だなと貴子は親友の可愛い素顔を好きになった。

「じゃはじめよっか?」

 沙良はベッドで少しだけ考えたようなそぶりを見せる。

「サイトを調べてみた。ねえ貴子あのサイトかなりやばい」

 沙良は急にまじめな顔で貴子を見すえた。

「なにそれ?」

「表は小説投稿サイトだけど。ダークウェブとつながっている。年会費を払って有料会員になると専用のVPNが払い出されるの。そこからTorを使って犯罪サイトにアクセスできる。昨日そこまではやった」

「沙良、そういうの、私分かんないよ」

 まくし立てるように専門用語を交えて話す友人に貴子は慌てふためいた。

「そっか、ごめんね。わかりやすくいうよ。貴子がいつも投稿しているサイトは裏で危険なところとつながっているの。犯罪を実行する計画を考える人がお金を受け取っている」

「それって? やばいよね……」

「違法サイトだね。VPNは位置情報と通信を暗号化してくれるツールだよ。危ないからばれないよう仕組みができている」

 ゾクリと背筋が凍る思いを貴子はした。事件の調査って聞いて浮かれていたかもしれない。沙良は事件の当事者だからまじめになっている。当然だが……

「JBって人を調べたの。この人凄腕の犯罪ビジョナリーだって呼ばれているらしいの」

 犯罪ビジョナリー。ミステリー小説を読んでいるような気分になった。貴子はジェットコースターが嫌いだった。高いところからヒュンと落ちる瞬間に耐えがたかった。ミステリーでも同様のにおいがした。

「JBって人に絡んだの?」

「まだだね。会うにはいろいろルートを経由しないといけないの。それに今会うのは危険だよ。もうちょっと慎重にいかないと。変に嗅ぎまわっていると思われたくないから」

「うちらかなりやばいところに触れていない。ね、なんかさほかの方法を」

「貴子、JBが書いた小説読んだけど。主人公の女の子は私だよ。内容がそっくり。続き読んだけどトラック運転手を事故に見せかけて殺した方法が書いてあった」

「嘘でしょ? 何でそんなこと?」

 貴子は素っ頓狂な声を上げる。

「すごい人の盲点を突くのがうまいの。誰も被害者本人が自分のトラックに細工していたなんて思わないよ」

「じゃあ自殺?」

「違う。運転手は奥さんの愛人を殺そうとしていたの。それに気づいた奥さんが愛人と連携して、計画を利用して逆に殺した」

 炎をまとった娘の復讐は生々しい出だしを見て読むのをやめてしまった。貴子は火に包まれた目の間にいる親友の姿を想像してしまい読みたくなかった。

「トラックは? 自分の車ってあると思うけど」

「ナンバープレート。すり替えたとか」

「小説に書いてあったの?」

「私の推測だけど。サイトは見ているけどしばらく更新がない」

「ねえ沙良のご両親は? どう関係あるの?」

「今のところないよ。新聞で調べた運送会社とパパの会社つながりないし、二人の死は計画の誤算だったかもしれない」

「じゃあ、巻き添えってこと?」

 コクリと沙良の細長い首筋が前に傾いた。ひどい、何の落ち度もないのに。沙良だって何一つ悪くないじゃない。どうしてこんなに聡明で優しい女の子が理不尽な目に合わないといけないのか。貴子は憤りを覚えた。

「警察に言わない? そっちの方がいい気がしてきた。事件の捜査なんてやっぱり私たちには厳しいよ」

「あの人たちは信憑性のない情報を信じると思う? あの人たちが何をしてくれるの?」

 珍しく憤りを覚え白いい素肌が紅潮している姿を見て貴子は言葉をかけられなくなる。何か事情がありそうだ。

 被害者連絡制度という仕組みがある。捜査状況や被疑者の名前、起訴不起訴の状況を教えてくれる。しかし捜査中の場合は教えてくれない。捜査が終わるまで時間がかかる。やっとの思いで沙良の手元に入った情報は被疑者嫌疑不十分という紙一枚に記されていた。

 B5用紙がたった一枚。ほとんどが黒塗りにされて得られる情報はなかったという。

「こいつらを殺してやりたいって。そんな感情が湧き出てくるなんて想像もしてみなかった」

 ぎゅっと貴子の体が引き締まる思いがした。沙良の心痛を察するに堪えがたいものがある。

「ごめん、私は沙良の気持ちに気づけていなかった。本当にごめんなさい。無理はしないでね」

 沙良に降りかかった被害を知らずに貴子は友達ずらして毎日を送ってきた。友達の裏側を見てしまい、恐怖を覚えてしまった。信じられなくなった自分がいた。事件を話し出す沙良は別人のようだった。何かにとりつかれたように没頭している。

「いいよ。仕方ないよ」

 鏡に貼られた一式を沙良は睨むようにしてみた。

「前に刑事さんが病院に来て名刺を渡してくれたから、実際に聞いてみたの」

 沙良の瞳にいつしか執念が宿っていた。

「板倉って人だけど、その人も誰か裏で指揮している奴がいるかもしれないって」

「JB?」

「調べたのは一応ここまで。一方的にしゃべっちゃった。そっちはどう?」

 貴子は聞かれたので図書館やネットでの調査を話した。現地に行ってもみたが正直見えてこない。

「あんまりお役に立てないけど」

「事件現場はどうだった?」

「今は事件の面影はないけど。献花台があったから。お花置いてきた。結構おいてあってやさしい人たちがいるね」

「そうなの。貴子、現場の近くに歩道橋あったでしょ? 行ってみた?」

「Xになっているところだよね。よくドラマの撮影になっている?」

「そうそう」

「書いている恋愛小説で好きな人と結ばれるシーンで出したけど、やっぱりいいよね。ときめき橋って名前らしいよ」

 沙良の緊迫した表情に貴子は一瞬メルヘンな気分になったが、すぐに黙った。沙良は男がと口火を切った。

「フロントミラー越しに私を双眼鏡か何かで見ていたの。JBかもしれない。事件現場を見に来たのよ」

 沙良はいきなり立ち上がると三面鏡を開いた。全開になった沙良の内側の世界。それを前に沙良は演説をする政治家のように語りだした。どこか恍惚と輝いていて女神のように気高かった。

「ねえ貴子。歩道橋には何かなかった? なんでもいいの。ヒントになりそうなもの。なかった?」

 沙良は貴子に近づくと腕をつかんでゆする。腕はぎゅっと締め付けられ圧迫を受けた。

「わかんない。見晴らしのいい場所だけど。沙良、痛いよ」

 ハッと沙良は我に返り掴んでいた手を離す。

「ごめんなさい。少し冷静になる」

 沙良は目を閉じて後ろを向くと、何度か深呼吸をする。きちんと伸びた背筋。すらりと細く白い砂浜のようなうなじがキラキラと輝いている。そっと肩に何かが乗っかる感覚がした。貴子の手だった。

「いつだって私は沙良の味方だからね」

 言葉では言いつつも貴子は不安でいっぱいになっていた。自分がどこか遠くへ行ってしまう懸念がある。今では事件に巻き込まれてしまい後悔している。
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