ビジョンゲーム

戸笠耕一

文字の大きさ
上 下
6 / 58
ビジョン1 決意

4

しおりを挟む
 現実に目を向ける。刑事ドラマなどを参考に空想を広げたがなかなか面白い。現実と空想の融合というべきだろう。

 外が騒がしくなってきている。現実世界も動き出している。ありきたりの日常から刺激ある非日常へ誘う。

 うるさいサイレンの音やどんよりした雲から鳴り響くヘリコプターの音がする。聞こえてくるのは刺激ある世界の音だ。今まさに自分の才能を社会で試している。

 今まさに青春を謳歌している。

 復讐も大事だけど、ネガティブな感情に浸りすぎるのも過ぎるのはよくない。十七という若い年齢をもっと楽しんでいる。

 次に警察はどう出るだろうか。人質の安全を最優先とするが、突撃のプランも捨てきれていないだろう。刑事ドラマで見た限りの情報だが、この手の人質救助には特殊部隊が出動するケースもあるはず。

 突入を敢行した場合のプランも練っている。

 経路として裏手の泉岳寺側からが想定される。雑木林が広がり視界が見えにくい。考えられる経路は地下一階にある旧校舎との連絡通路を利用するぐらいか。

 想定シナリオに沿って警察が取ってくる可能性は立てこもり事件の犯人たちには前もって連携してある。

 大がかりな設計だが、今のところ計画は順調だ。用意した駒を使って立てたプランに沿って駒たちは動かしている。

 少し不満がある。

 私はゲームを計画した製作者なのに何一つとして身動きが取れない。実際、ゲームをコントロールしているのはJBだ。これではただのお飾り。

 まったくつくづく忌々しいやつ。

 JBの正体を探すため、その本人と手を結ぶとはどうかしている。

 仇を打つ側が仇自身と手を結ぶなんて実におかしな話だ。

 ミッションはJBの正体を掴む。復讐はそれからだ。

 背中に残った火傷が疼いていた。未だに事故現場の地獄をどんなビジョンより正確に再現できた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺が咲良で咲良が俺で

廣瀬純一
ミステリー
高校生の田中健太と隣の席の山本咲良の体が入れ替わる話

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

兄になった姉

廣瀬純一
大衆娯楽
催眠術で自分の事を男だと思っている姉の話

聖女の如く、永遠に囚われて

white love it
ミステリー
旧貴族、秦野家の令嬢だった幸子は、すでに百歳という年齢だったが、その外見は若き日に絶世の美女と謳われた頃と、少しも変わっていなかった。 彼女はその不老の美しさから、地元の人間達から今も魔女として恐れられながら、同時に敬われてもいた。 ある日、彼女の世話をする少年、遠山和人のもとに、同級生の島津良子が来る。 良子の実家で、不可解な事件が起こり、その真相を幸子に探ってほしいとのことだった。 実は幸子はその不老の美しさのみならず、もう一つの点で地元の人々から恐れられ、敬われていた。 ━━彼女はまぎれもなく、名探偵だった。 登場人物 遠山和人…中学三年生。ミステリー小説が好き。 遠山ゆき…中学一年生。和人の妹。 島津良子…中学三年生。和人の同級生。痩せぎみの美少女。 工藤健… 中学三年生。和人の友人にして、作家志望。 伊藤一正…フリーのプログラマー。ある事件の犯人と疑われている。 島津守… 良子の父親。 島津佐奈…良子の母親。 島津孝之…良子の祖父。守の父親。 島津香菜…良子の祖母。守の母親。 進藤凛… 家を改装した喫茶店の女店主。 桂恵…  整形外科医。伊藤一正の同級生だった。 秦野幸子…絶世の美女にして名探偵。百歳だが、ほとんど老化しておらず、今も若い頃の美しさを保っている。

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

奇妙な日常

廣瀬純一
大衆娯楽
新婚夫婦の体が入れ替わる話

江戸時代改装計画 

華研えねこ
歴史・時代
皇紀2603年7月4日、大和甲板にて。皮肉にもアメリカが独立したとされる日にアメリカ史上最も屈辱的である条約は結ばれることになった。 「では大統領、この降伏文書にサインして貰いたい。まさかペリーを派遣した君等が嫌とは言うまいね?」  頭髪を全て刈り取った男が日本代表として流暢なキングズ・イングリッシュで話していた。後に「白人から世界を解放した男」として讃えられる有名人、石原莞爾だ。  ここはトラック、言うまでも無く日本の内南洋であり、停泊しているのは軍艦大和。その後部甲板でルーズベルトは憤死せんがばかりに震えていた。  (何故だ、どうしてこうなった……!!)  自問自答するも答えは出ず、一年以内には火刑に処される彼はその人生最期の一年を巧妙に憤死しないように体調を管理されながら過ごすことになる。  トラック講和条約と称される講和条約の内容は以下の通り。  ・アメリカ合衆国は満州国を承認  ・アメリカ合衆国は、ウェーキ島、グアム島、アリューシャン島、ハワイ諸島、ライン諸島を大日本帝国へ割譲  ・アメリカ合衆国はフィリピンの国際連盟委任独立準備政府設立の承認  ・アメリカ合衆国は大日本帝国に戦費賠償金300億ドルの支払い  ・アメリカ合衆国の軍備縮小  ・アメリカ合衆国の関税自主権の撤廃  ・アメリカ合衆国の移民法の撤廃  ・アメリカ合衆国首脳部及び戦争煽動者は国際裁判の判決に従うこと  確かに、多少は苛酷な内容であったが、「最も屈辱」とは少々大げさであろう。何せ、彼らの我々の世界に於ける悪行三昧に比べたら、この程度で済んだことに感謝するべきなのだから……。

処理中です...