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不思議なお話NO6
今生に蘇る能力
しおりを挟む何故あのようなことが起こったのか?学生時代に経験した特殊な出来事の原因をあれこれ考えてきました。ごく常識的に考えれば、答えは単なる偶然か、或いは一瞬にしてコツを掴んだかのどちらかということになります。でも、僕は、別の可能性を頭の片隅から排除することが出来ず、かといってそれに確信も持てませんでした。
その僕の特殊な体験を簡単に説明しましょう。学生時代、とあるアミューズメントパークで、友人に誘われアーチェリーをやることになりました。そうした場所によくある子供も大人も楽しめる常設のアーチェリー場です。そこで、僕は初体験だったにもかかわらず、矢を的のど真ん中に命中させ続けたのです。
会場の係員、友人、観客も驚きの声を上げておりました。真ん中に命中すると新たに矢を10本もらえるので、その矢を友人達に配りながら、飽きるほどにアーチェリーを堪能したのです。
次に、十数年後、家族旅行で立ち寄った公園でアーチェリー場を見つけると、子供に「お父さんは、アーチェリーが上手なんだ」と自慢し、その腕前を披露しようと思ったわけです。
家族が見守る中、自信満々、ゆっくりと弦を引きます。学生時代の記憶を頼りに「ここで胸を反らす」と心に念じて、おもむろに矢を放ちます。その時、あれー、っと声をあげそうになりました。矢は飛んでもない方向に飛んで行ってしまったのです。そして、次も、その次も。
僕にはその理由が分からず途方に暮れました。家族の軽蔑の視線など気にする余裕はありません。僕の頭の中は、何故だ?何故なんだという疑問が渦巻いていたからです。学生時代、百発百中だった時とやり方が違うのか? 僕は何度も矢を買い求め、胸の反らし方、タイミングと色々やってみましたが、とうとう学生時代のその感覚を思い出せなかったのです。
学生時代、矢を放つその一瞬の感覚は少し特殊なものでした。アーチェリーの場合、弦を引く右手は顎の当たりで止めて狙いを定めますが、その時の僕の右手はそれよりさらに下、ちょうど鳩尾の少し上あたりで止めていたと思います。そして一瞬ぐいと胸を反らすようにして矢を放つのです。その胸の反らし具合で矢の飛ぶ方向を調節している感覚が妙に印象に残っています。
それと、弓の大きさですが、その時に使用したのは少し短めのアーチェリーです。また当たるたびに矢10本をもらいに行ったり、係員が的の矢を抜きに行きますから、矢を放つのは連続というわけにはいかず中断を余儀なくされたわけですが、矢をつがえてから放つまでの時間はかなり短く、連続してやれば速射といった感じになったはずです。少なくともゆったりとした日本の長弓の手法とは大いに異なります。
その一瞬の感覚を取り戻そうとしたわけですが、胸を反らすたびに矢はとんでもない方向に飛んでゆき、仕舞いには矢尻を目の高さにもってきて、狙いを定めますがそれでも、大きな的に当てるのがやっとでした。
そして、的の中心の5センチ程度の円は遠く離れて見ればまるで点としか思えず、学生時代、その小さな点にあれほど連続的に当てるなど初心者には絶対不可能だと気づきました。
では、あの時、胸を反らした瞬間に感じた自信、矢が確実に中心に向かうという自信はどこからやってきたのかという問題に直面したというわけです。
最初に述べたとおり、常識的に考えれば、単なる偶然か、或いは一瞬にしてコツを掴んだかの、どちらかだとしましょう。偶然とするなら、30分程度の間に、回数にすれは20回以上偶然が続くとは思えませんし、一瞬でコツを掴んだというのも、僕が運動の天才でもなければそれは不可能だし、もし、天才だったとしたら、次にやった時にそのコツを思い出せないというのも頷けません。
僕が頭の片隅に抱き続けたアイディアというのが、僕の過去生において弓の上手であった可能性です。これまで書きませんでしたが、実を言うと、僕は輪廻転生論者です。何度も生まれ変わり、人としての修行の道を歩んでいると感じているのです。
ですから、かつてアジアの大草原で小振りの馬に跨り疾走していた、弓を得意とする遊牧民であった可能性も考えられます。ですが、これはあくまでも僕の個人的な想像であり、過去生の能力が一瞬だけ蘇ったという仮説にどうしても確信が持てなかったのです。
しかし、この問題とよく似た体験をすることになりました。従って、僕の仮説に真実みがでてきたことになります。次に、それについてお話ししましょう。
実は、剣道を始めてしばらく経ってからのことです。僕は初心者ですから、上級者にとって、僕をあちこち叩くのは容易なことです。でも叩かれる僕にとって、例えば若造がにたにたした顔をしていたりすると、むらむらと怒気がわき起こります。(ちなみに今生の僕のテーマは激情を抑制する術を身につけることのようです。カッとするたびに後悔するような現実が待ちかまえているのですから、そうとしか思えないのです)
そんな時、僕の体が勝手に動くのです。そして、気がつくと若造の面を真っ向から切り下げています。と、言うか、ぶったたいていると言った方がいいでしょう。相手にとって僕の竹刀は避けることは出来ず、相打ちにも至りません。
何故なら、僕が相手に向かって飛ぶ時、相手は僕の面を打たざるを得ず、しかし相手の竹刀は、刀で言えば鎬(しのぎ)の部分によって僕の面から逸らされているからです。最初のうち、この技をどうやっているのか、自分でもさっぱり分かりませんでした。
それでも何度かやっているうちに、おかしな恰好で相手に飛び込んでゆくことが判明しました。その姿を意識して実際にやってみると、相手を打つ時、どうしても竹刀の中程から鍔元でしか、相手を捉えられません。怒り心頭に発したときの打突は間違いなく、竹刀の先端で相手を打ちのめしているのです。
そして、昇段試験のため、剣道型をやり始めて、僕が飛び込んでゆく際の変な恰好の形が分かりました。小太刀の剣道型2本目、右手に持った小太刀の右の鎬(しのぎ)で、打ちかかる相手の刀を滑らせて面を取る型、そのものなのです。
ただ異なるのは、小太刀ではなく普通の竹刀を両手で持って行っていたのです。(興味のある方はインターネットで「小太刀の剣道型2本目」で検索してみてください。動画もあります)
恐らく、竹刀を右肩に担いで、かなり遠くから飛び、飛ぶと早いように思うのは間違いで、意外とゆっくり見えますから、面ががら空きに見え、相手は面を打ってきます。その瞬間に剣先を後ろにしたまま、柄を頭の上に持ってきます。すると、相手の竹刀は、僕の竹刀の鎬で右に流れますので、着地と同時に相手の面を剣先でひっぱたく、というのが僕の想像です。(剣道をやっている方、ちょっと研究してみてください。恐らく常識とは異なる足運びをしていると思います)
どうです、時として過去生の能力が蘇ることがあるという僕の仮説、面白いと思いませんか?でも、最近この技が出ないのです。とにかく、カッとした時しか出ない技ですから、もしかしたら、今生の僕のテーマである、激情を抑制する術を既に習得したのかもしれません。なんちゃって・・・。
実は、6社目の会社ですからかなり激情を抑制していたつもりなのですが、つい最近、またしても社内で大喧嘩してしまいました。僕の修行の道のりはまだまだ遠いようです。
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